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第44話・プレゼント選びは気合い!

 12月に入り、級友達は休み時間も惜しんで勉強に励んでおった。松乃どのまで必死だ。


「松乃どのも皆も、どうしたのだ?」

「内部推薦を貰うのに必死なんだよ~!私ってギリギリ50位だし、確実にしておきたいんだ!」

「そうか。頑張ってくれ。」


そういえば空手部の3年生も、私と冬馬どの以外は顔を出さなくなったな。

何気なく冬馬どのを見ると、ため息をついておった。


「冬馬どのまでどうした?」

「かぐやか。今、マネージャーが足りないだろ?新しい部長が頑張って勧誘しているんだが、集まらないらしいんだ。」

「皆、何故か辞めてしまったしな。」

「上位50位以内に入っていない奴らは、人気のある学部への内部推薦が難しいだろ?それでみんな必死なんだ。」

「それでか…」


それを聞いておった小梅どのがおずおずと切り出した。


「冬馬くん、私、先月でバイトも辞めたし、短い間で良かったらマネージャーしようか?」

「本当か?助かるよ!じゃぁ早速、今から部室を案内するよ!」

「よろしくね!」


教室を出た冬馬どのの後を、小梅どのが嬉しそうに付いて行った。

にこやかに二人を見送っていると、春樹どのに痛いところを指摘された。


「かぐやさん、人の心配より自分の心配ですよ。数学は大丈夫ですか?」

「うっ!それを言われると辛いものがあるな…」

「今回の期末試験で、推薦が決まりますからね。週末にでもウチへ来ますか?良ければ教えますよ。」

「そうだな。また補習に呼ばれぬよう、よろしく頼む。」



 週末、約束どおり春樹どのの邸宅へお邪魔し、数学を教えて貰った。


「春樹どのの教え方はうまいな。先生よりも分かりやすいぞ。」

「それは嬉しいですね。かぐやさんは飲み込みが早いので、教え甲斐がありますよ。」


勉強も一区切りついて、メイドさんが持って来てくれたケーキを頂いておる時のことであった。


「かぐやさん、クリスマスですが、何か予定はありますか?」

「いや、皆が勉強をしておるので、まだ何も話してはおらぬ。」

「それは良かった。実は、ジャーマニーランド傍の父が経営するホテルの一室が空いたのです。良かったら一緒に遊びに行きませんか?」

「それは良いな。では皆で行くとするか。」

「…みんなですね。」


春樹どのはちょっと苦笑いして、皆が推薦を無事にもらえたら一緒に行きましょうと言った。

空いた一室は、スイートルームというらしく、部屋数もベッド数も皆で泊まれるくらいあるそうだ。


「ジャーマニーランドとは、確かドイツの古城がシンボルの遊園地であったな。」

「そうです。ドイツはグリム童話が有名ですから、それがテーマになっています。」

「遊園地自体が初めてなので、楽しみだ。」

「みんなで楽しめるといいですね。」


週明け学校へ行き、早速皆にジャーマニーランドの話をした。


「行く行く!スイートなんて嬉しい!もちろん秋人も行くよね♪」

「当然!松乃ちゃんと一緒にお泊りなんて嬉しいな♪」


相変わらず仲良しな二人に、春樹どのが釘を差しておった。


「秋人、残念ながら部屋は男女別だからな。」

「分かってるって、春樹!そのくらいの分別は持ってるよ♪」


 そして迎えた推薦をもらえるかどうかの期末試験の終了日、やっと終わった!と安堵しておると、松乃どのに小梅どのと一緒に呼ばれた。


「小梅ちゃん!今度のクリスマスが勝負よ!」


ビシッ!と小梅どのを指さした。


「何の気合いを入れておるのだ?」


「だ・か・ら!今度のクリスマスは遊園地でしょ?」

「そうだね!頑張る!」


何やら小梅どのには、松乃どのの気合いが伝わったようだ。


「松乃どの、すまぬがさっぱり分からぬ。」

「遊園地は二人一組の乗り物が多いんだよ!小梅ちゃんと冬馬が一緒になるチャンスが多いってことよ!」

「そうなのか?」

「だから、かぐやちゃんはなるべく春樹と一緒にいるように!」


ビシッ!と今度は私が指をさされた。


「わ、分かった。」


「で、プレゼントなんだけど、私は秋人で、小梅ちゃんが冬馬、かぐやちゃんは春樹だよ♪」

「へ?春樹どの限定か?」

「他の誰にあげるの?数学見てもらってるんだから、お礼しなきゃ♪」

「しかし、冬馬どのや秋人どのにも世話になっておるぞ。」

「そこはいいの!私と小梅ちゃんで用意するからさ♪」

「では春樹どののプレゼントを用意をしよう。」


「じゃぁ、早速、今からショッピングモールに行くよ♪」

「了解!」


相変わらず行動が早いな。気付けばショッピングモールの中であった。


「松乃どのは何を買うのだ?」

「私は秋人の好きなブランドのキーケースにしようかなって思ってるんだ♪」


「小梅どのはどうするのだ?」

「私は毛糸を買って、マフラーを作ろうかなって考えてるよ。」


そこで、松乃どのの痛烈なダメ出しが入った。


「小梅ちゃん!まだ付きあってないんだよ!手編みはダメ!手作りのプレゼントは重いって!」

「そうなの?」

「そうだよ!手作りっていうのは、彼女だから嬉しいものなの!」

「わ、分かった。じゃぁ、マフラーを買うことにするね!」


松乃どのは色々と物知りだなぁと感心しておったら、私にまで指摘が入った。


「かぐやちゃん!春樹は大抵の物は持ってるの!だからこそ温かみのあるものを選ばなきゃ!」

「わ、分かった…」


肩まで両手をあげて、降参のポーズを取った。


しかし、温かみのあるものと言っても、防寒グッズしか思いつかぬ。

“あたたかい”の意味が違う!と指摘されたが、結局手袋を買った。


一番気合いが入っておるのは、松乃どのだと密かに思った買い物であった。



 期末試験が終了して、数日後に結果発表があった。


<一位:浦和 春樹>

<二位:桃井 秋人>

<三位:竹野塚 かぐや>

<四位:金城 冬馬>

<五位:有栖川 小梅>


「お?今回は二番だ♪」

「うむ。秋人どのに負けたな。」

「最近、松乃ちゃんの勉強見てるでしょ?丁度いい復習になったんだよね~♪」


そういえば、松乃どのはどうだったのであろうか。

教室に戻り松乃どのの傍へ行った。


「松乃どの、どうであったか?」

「…私…」


ゴクッと息を飲みこんで次の言葉を待った。

が、立ち上がったと思ったらすぐ、秋人どのに抱きついた!


「秋人~!私36番に上がった~♪」

「やったじゃん♪松乃ちゃん頑張ったもんね~!」


それは良かった。しかし、私の存在が完全に消されておるな…

無事に皆で遊園地に行けることになったようであるし、そのままにしておこう。



 冬休み前の終業式の後、急いで屋敷へ帰り、遊園地へ行く準備をした。春樹どのが迎えに来ると言っておったからだ。


何とか荷物を詰め込んだ時、春樹どのが迎えに来たようだ。


「待たせてすまない。」

「大丈夫ですよ。来たばかりですから。」


車の中を見ると、他の皆は乗っていないようだ。


「他の皆は、別の場所で待ち合わせか?」

「いいえ、みんなは現地集合です。秋人と松乃さんは夕方から合流ですよ。」

「冬馬どのと小梅どのは?」

「あの二人には時間が必要ですから、電車で来るように言いました。」

「成る程な。」


車に乗り込み、バッグの中から包みを一つ取りだした。


「いつも数学を教えて貰っているお礼だ。」

「これは、もしかしてクリスマスプレゼントですか?」

「そうとも言うな。」

「嬉しいです。ありがとうございます。開けてもいいですか?」

「構わぬ。」


春樹どのはすぐに包みを開けて、手袋を取り出した。


「暖かそうですね。ありがとうございます。早速今夜使いますね。」

「松乃どのには意味が違うと言われたのだが、喜んでもらえて良かった。」

「意味が違うとは?」

「温かみのあるものが良いとアドバイスされて手袋にしたのだが、“あたたかい”の意味が違うと指摘されたのだ。」


それを聞いた春樹どのは、大笑いし始めた。


「やはり手袋は変だったか?」

「いいえ、違います。かぐやさんが一所懸命選んでくれたそのお気持ちが温かいのですよ。だから気にしなくて大丈夫です。」

「そうか。安心したぞ。」


春樹どのは、鞄の中から包みを取り出し、私に渡してきた。


「私からもメリークリスマスです。」

「え?私は何も世話などしておらぬぞ。」


「白状すると、それは誕生日の時に購入していたものなのです。誘拐事件で渡しそびれてしまいましたので、今日になってしまいました。」

「そうか。気を遣わせてすまないな。」

「どうぞ開けてみて下さい。」


そう促されて開けてみた。去年のネックレスに劣らない程の紅玉の耳飾りであった。


「おお!これは見事だ!」

「かぐやさんの黒髪に映えると思いまして、ルビーにしてみました。気に入って頂けましたか?」

「しかし、貰ってばかりでは気が引けるぞ。何か返せるものはないか?」

「ふふ。かぐやさんのそういうところが好きですね。」

「な、な、何を言い出すのだ!春樹どのは時々心臓に悪いことを言い出すな!」


「失礼しました。どうしてもと言って頂けるのであれば、今日と明日は私とずっと一緒に居て下さい。それが私の望みです。」

「それはすでに計画済みだ。」

「計画?」

「松乃どのの計画だ。」


松乃どのの計画を話すと、春樹どのはクスッ!と笑って、その計画で充分です、と言った。

そんな話をしているうちに、ジャーマニーランドへ着いた。

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