第43話・パートナーは誰?
男の参加者全員が控室に集まったところで、司会者がマイクを持った。
「それでは皆様、用意は宜しいですか?素敵に変身したパートナーを素早く見つけて下さいね!それではいきます!5.4.3.2.1.スタート!」
カウントダウンの合図で、大きな扉が開いた。すぐに駆け出すと、走ってくる松乃ちゃんを発見♪
「松乃ちゃんみっけ♪」
「やっぱり秋人も黒猫なんだ~♪」
すぐに主催者のところへ行き、番号札を貰ったところで、小梅ちゃんが来た。
「秋人くん、冬馬くん見なかった?」
「冬馬ならすぐそこのドラキュラだよ♪」
「ありがとう!」
すぐに冬馬に駆け寄っていった。小梅ちゃん、走っちゃって健気だな~♪
「冬馬くん!」
「おお、小梅か。かぐや見なかったか?」
「…え?」
「俺、探してくるよ。」
小梅ちゃんがポツンと取り残された。松乃ちゃんはすっかり呆れている。
「あっちゃ~!ちょっと小梅ちゃんのところへ行ってくるよ!」
「松乃ちゃん、頼んだよ。」
松乃ちゃんが恐る恐る声を掛けた。
「…小梅ちゃん。」
「松乃ちゃん…私、一人で浮かれてバカみたいだね…」
「そんな事無いよ!」
「ごめん。気分転換に外の空気でも吸ってくる!」
小梅ちゃんは中庭へ走って行っちゃった。松乃ちゃんは気遣うように目線を送っていたが、僕のところに戻ってくるなりお怒りのご様子だ。
「もう!馬鹿冬馬!何やってんのよ!」
「仕方ないよ。こればっかりは誰が悪い訳でもないしね。」
「分かってるけどさぁ…」
肩をすくめて、複雑な関係の行方を見守った。
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カウントダウンの合図が聞こえてきた。
「5.4.3.2.1.スタート!」
扉が開くと同時に、松乃どのと小梅どのが走って行ってしまった。
え?私はどうすればいいのだ?
考えあぐねていると、後ろから声を掛けられた。
「やはりかぐやさんのお姫様姿は美しいですね。」
ふふ。振り向かなくても誰だか分かるな。
笑いながら振り向くと、予想どおりの人物がにこやかに立っておった。
「春樹どの、髪形を変えておったのに、よく分かったな。」
「かぐやさんがどんな姿でも、すぐに見つけられる自信がありますよ。」
その時、視界に中庭へ走り去る小梅どのが見えた。
「ん?小梅どのの様子がおかしい。ちょっと行ってくる!」
「私も一緒に行きます。」
二人で追いかけると、小梅どのは中庭のベンチに座って泣いておった。
「小梅どの、どうかしたのか?」
「あっ!かぐやちゃん!そ、その、コンタクトがずれて痛くなっちゃって…」
「待っておれ!更衣室のロッカーに手鏡がある故、すぐに持ってくる!」
そう言い残し、更衣室へ走って戻った。
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かぐやさんが走って更衣室へ向かってから、小梅さんに問いただしてみた。
「小梅さん、コンタクトは嘘ですよね。」
「やっぱり分かっちゃったか…」
「はい。すぐに分かりましたよ。」
「かぐやちゃんに悪いことしちゃったな。」
「大丈夫です。かぐやさんはそんなこと気にしませんよ。」
はぁ…小梅さんは大きくため息をついた。
「私もかぐやちゃんみたいな美人になりたかったな…」
「やはり原因は冬馬ですか?」
小梅さんは黙って頷いた。
「私には、冬馬が小梅さんをかなり気に掛けているように見えますよ。」
「そうだといいんだけど…」
「冬馬とかぐやさんは部活も一緒ですし、身近過ぎて自分の気持ちに気付いていないだけです。」
「…」
「気付くまで時間が掛かるかもしれませんが、冬馬の小梅さんに対する優しさだけを信じてくださいね。」
暫くして、かぐやさんが息を切りながら走って戻ってきた。後ろには冬馬もいた。
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更衣室から手鏡を持ち出し、中庭へと走っていると、冬馬どのに引きとめられた。
「かぐや!ここにいたのか。探したぞ!」
「冬馬どの、急ぐので失礼する!」
「何かあったのか?」
「小梅どのが目を痛めておるのだ!」
「お、俺も行くよ!」
再び走り出って中庭へと戻り、小梅どのに手鏡を渡した。
「はぁ、はぁ…これを見ながら治せるか?」
「ありがとう、かぐやちゃん。もう大丈夫みたい。ごめんね、走らせちゃって。」
「治ったのなら良かった。パーティーには戻れそうか?」
「…ううん。それは止めておくよ。今日はもう帰るね。」
「そうか。残念であったな…」
春樹どのが冬馬どのに向き直った。
「冬馬、小梅さんが目を痛めたみたいなんだ。送ってやってくれないか?」
「分かった!すぐに着替えてくるから、入り口で待っておけよ!」
冬馬どのは走ってパーティー会場の中へ戻っていった。
「ほらね。充分気に掛けていますよ。」
「うん。ありがとう、春樹くん!」
「ん?何の話だ?」
「気にしないでください。私達はパーティー会場へ戻りましょう。」
にっこり笑った春樹どのに促され、パーティー会場へ戻った。
「小梅どの、着替えは大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ!ありがとう!じゃぁまた学校でね!」
小梅どのは笑顔で手を振りながら、更衣室へ戻っていった。
会場に戻ったが、番号札を貰い損ねておったので、ゲームには参加出来なかった。
まぁ、これも一つの思い出だな。