第42話・ハロウィンパーティーのお誘い
秋も深まり、紅葉が美しい季節になった頃、春樹どのからパーティーのお誘いがあった。
「ハロウィーンの仮装パーティーなのですが、主催者から父の会社に人集めの依頼がありましたので、みんなで参加しませんか?」
その言葉にいち早く、松乃どのが反応した。
「楽しそう♪かぐやちゃんも行くよね!」
「その仮装パーティーとやらは楽しいものなのか?」
「普段と違う格好で色々変身できるしね♪」
「楽しいものなら参加してみるか。小梅どのはどうする?」
「う~ん…バイトも辞めるし、ちょっと予算的に難しいかな。」
「それは残念だな。」
それを聞いた春樹どのが、小梅どのににっこりと笑いかけた。
「小梅さん、衣装なら大丈夫ですよ。会場に全部用意してあります。」
「そうなの?」
「はい。そのかわり男女同じ数で参加しなければなりません。」
ん?そんなパーティーがあるのか?きょとんとしておったら、松乃どのが教えてくれた。
「基本的にパーティーはパートナー同伴だからね♪」
「松乃どのもよく参加するのか?」
「ウチは堅苦しいパーティーが多いからあまりパートナー同伴は無いかな。でも海外のお客様を招く時は、大体パートナーが必要だよ♪」
「今回は、事前にパートナーの衣装が分からないので、相手を見つけられたカップルから順に番号札を貰えるそうです。その番号でゲームに参加できるらしいですよ。」
「春樹くん、衣装借りれるなら、私も参加したい!」
「小梅さんも一緒に楽しみましょう。」
後から話に加わった秋人どのと冬馬どのも、参加することとなった。
「モチロン愛のレーダーで、すぐに松乃ちゃんを見つけるからね~♪」
「うん!私もすぐに見つけちゃうよ♪」
「このバカップルが!あっちへ行け!」
「そんな事言って、冬馬羨ましいんだろ♪」
「べ、別に!」
「赤くなった♪」
「煩い!」
いつもどおりの賑かさを眺めていると、春樹どのが私の隣に来て、耳元で話し掛けられた。
「私もすぐに美しいかぐやさんを見つけますね。」
「え?」
顔がかぁ~っと熱くなるのが自分でも分かった。
「春樹どの、頼むからそのような事を言うのは止めてくれ。心臓がもたぬ…」
「すみません。赤くなるかぐやさんが可愛らしくて、つい言ってしまいます。」
恐らく、春樹どのの口癖のようなものであろう。諦めた方が良さそうだ…
パーティー当日、殿方と姫君たちは別々の入り口から入るようになっておった。姫君専用の衣装部屋には、沢山の見たことも無い服が用意されておるようだ。
「凄い!中世ヨーロッパのお姫様みたいなドレスもあるよ!」
「こっちは、アニメのキャラクターだ♪コスプレもあるんだ!」
小梅どのと松乃どのは衣装を見てはしゃいでおるが、私は何を選んで良いのかさっぱり分からぬな…
「すまぬが、私の服も選んではくれぬか?」
「かぐやちゃんなら、やっぱりお姫様かな!」
「それは先程小梅どのが気に入っておったものであろう。」
「私はお姫様って柄じゃぁないから、魔女にするよ!だからかぐやちゃん良かったら着て!」
「小梅どの、ありがとう。それを着させてもらうとしよう。」
お姫様という柄では無いのは私も同じであるが、足がすっぽりと隠れるドレスは有り難い。小梅どのは、短めの黒いワンピースに尖った帽子を被っておった。
「松乃どのは何にするんだ?」
「私は黒猫ちゃん♪何となく、秋人も選びそうなんだよね!」
「流石だな。って、それを着るのか?」
「そうだよ♪可愛いのがあって良かった!」
「しかし、腹が見えておるぞ!」
「会場は暖かいし、大丈夫だよ♪」
まぁ、松乃どのがそう言うのであれば、反対する言葉も無いな。腕と足首に、短い服と同じ素材のふわふわの毛と猫の耳飾りまで付けて、本物の猫娘のようであった。
髪の毛は、小梅どのが何やら器用に結びまとめてくれた。
「小梅どのは器用だな。」
「妹の髪の毛も結んであげるからね。慣れてるだけだよ!」
「いや、素晴らしい事だと思うぞ。それに比べ貴族の嗜みなんぞ、生活には何の役にもたたぬ。」
「そんな事ないよ!一日では教養なんて身に付かないし、逆に羨ましいよ!」
「ふふ。無い物ねだりというところか。」
「そうだね!」
準備が整ったところで、控え室に入った。大きな扉があり、殿方も会場と反対側の扉に控えておるとのことだった。
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普段のモデルの衣装とは違って、面白い服がいっぱいだった。ドラキュラの他には中世ヨーロッパの貴族、海賊、怪盗、コスプレってところか。もっと変わったの無いかな~。
「お?黒猫いいじゃん♪」
パッと真っ黒な猫の着ぐるみが目に入ってきた。猫耳カチューシャも付いているし、かなり凝ってるな~♪
「秋人は黒猫か?」
「何となく、松乃ちゃんも選びそうなんだよね♪」
「正に以心伝心だな。」
「羨ましいなら、冬馬も早く彼女作れよ♪」
「すぐ作れるなら苦労は無い!」
「そう?気付けば案外すぐかもよ♪」
冬馬と春樹も衣装を決めたみたいだ。それぞれ自分の個性がよく分かってるな~♪
「春樹は怪盗か?」
「ああ。これで姫でも拐おうと思ってな。冬馬はドラキュラか?」
「奇遇だな。俺も姫を拐おうかと思っているところだ。」
バチバチ!
あ~、また無駄な火花散らしちゃってるよ♪
何処となく他人事を楽しむように眺めながら、控え室に移動した。