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第41話・無自覚な優しさ

 体育祭の代休日、松乃どのとショッピングモールで待ち合わせをし、小梅どのの誕生日プレゼントを見繕った。


「かぐやちゃん、プレゼントする物決めたら私に言ってよ!値段チェックするからさ♪」

「大丈夫だ。かなり学んだ…筈だ。」

「筈なんだ♪」


松乃どのは秋冬物のワンピースを購入し、私はそれに合わせたマフラーとニット帽にして、一緒に包んでもらった。


「来週末だけど、一緒に渡す?」

「来週末は空手の試合があるのだ。すまぬが、渡しておいてくれないか。」

「分かった!頑張ってね♪」


秋は何かと忙しい。スポーツの秋、読書の秋、食欲の秋と色々あるようだ。

結局のところ、何でも良いのだな…



 空手の試合の日、私が出場するのは型試合で順調に勝ち進んでおったが、ベスト4に上がって負けてしまった。帰り道、落ち込む私を冬馬どのが慰めてくれた。


「まだ新しい型を教えたばかりだったしな。仕方ないよ。次は完璧に練習しておけば大丈夫だ。」

「しかし、まだまだ鍛錬が必要であるな…」

「もうちょっとで黒帯にも手が届きそうだし、頑張れよ。」


ここで、冬馬どのに寄り道の提案をした。


「ちょっと、ファミレスに寄らないか?」

「ファミレス?いいけど、かぐやでもそんな店に行くんだな。」

「まあな。」


小梅どのがバイトしておるというファミレスに冬馬どのを連れてきた。

私にはこれくらいしか小梅どのに協力できぬが、喜んでくれるであろうか。


「いらっしゃいませ!って、冬馬くんとかぐやちゃん!」

「よお!」

「空手の試合があってな。帰りに寄ってみたのだ。」

「そうなんだ!お疲れ様♪」


程なくして、注文したジュースを小梅どのが持ってきてくれた。


「ありがとう小梅どの。」

「どういたしまして!」


冬馬どのを見ると、一点を厳しい目で見ておった。


「小梅、今日は何時に終わるんだ?」

「あと二時間くらいだよ。」

「そうか。頑張れよ。」

「ありがとう…」


また小梅どのは顔を赤くしておるな。だが最近は冬馬どのに関係する時だけだと気付いてきた。大学で人間を研究するのが楽しみだ。


ジュースを飲み終わり、駐車場まで爺やに迎えに来て貰った。


「冬馬どのも一緒に乗るか?」

「いや、ちょっと用事があるから大丈夫だ。」

「そうか。ではまた学校でな。」


気のせいか、冬馬どのの顔が厳しかったな。何かあったのであろうか…


----------


 ファミレスの角に座っていた奴らは、恐らく以前、小梅に絡んできていた集団だろう。

嫌な予感がして、駐車場に停めてある車の陰の縁石に座り、小梅のバイトが終わるのを待っていた。


暫く時間を潰していると、声が聞こえてきた。


「庶民は大変ね~!働かなくては学校へ行けないの?」

「身分相応の学校へお移りになってはいかがかしら?」

「どうせ大学へも、奨学金っていう名の借金をされるのでしょ?無理しない方が宜しいのではなくて?」


やっぱり奴らか!

庶民なのに、常に成績上位にいるのが気に入らないのだろう。小梅が言い返さないのを良いことに、ターゲットにしているようだ。

急いで立ち上がり、小さく俯いている小梅の元へ行った。


「小梅、待ったか!」

「冬馬くん!」


「な、何故冬馬さまがこちらへ?」


動揺する奴らを尻目に、小梅の肩を抱き寄せた。


「俺達こういうことだからさ!」


「え?」

「しっ!話を合わせておけ。」


「だから、小梅に文句を言うなら、俺に言っているのと同じだと思え!」


奴らは何も言わず、すごすごと帰っていった。


「冬馬くん、ありがとう。」

「いや、丁度来た時で良かったよ。暗くなってきたし家まで送るよ。」


帰りは、色々な話をして帰った。生活苦ではなく、妹や弟がいるから親に負担をかけたくなくて、お小遣いをバイトで稼いでいるらしい。


「だけど、バイト先を変えた方がいいんじゃぁないか?」

「うん。シフトもあるし、すぐには辞めれないけど、考えてみるよ。」

「そうだ!バイトの日を教えろよ!辞めるまで俺が迎えに来てやるよ!」

「そ、そこまで冬馬くんに迷惑をかけれないよ!」

「いいって。どうせ辞めるまでの間だ。またあいつらが来ても困るだろ?」

「う、うん…じゃぁお願いしてもいい?」

「おう。」


どうせ部活の後に少し遠回りをするだけだし、仲間が嫌な思いをするよりかはマシだ。ただ、単にそれだけだった。


はぁ…せっかく春樹に勝ったのに、かぐやもデートに誘えないし、試合も優勝出来ないし、最近ついてないな…


----------


 次の日学校へ行くと、小梅どのが待ち構えており、手をガシッ!と握られた。


「かぐやちゃん、ありがとう♪」

「プレゼント受け取ったのか?」

「そっちもありがとうだけど、もっと凄いありがとうだよ!」


「これからバイトに行く日は、冬馬くんが送って帰ってくれることになったんだってさ♪」


傍におった松乃どのが説明してくれた。


「それは良かったな。冬馬どのを案内した甲斐があったぞ。」

「本当に感謝だよ!私、頑張るね!」


頬を赤らめてニコニコする小梅どのは、本当に可愛らしい。

小梅どのの思いも通じると良いな。



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