第39話・自分の顔を好きにさせるミッション!
「かぐやちゃん、何をしているの?ニキビでも出来た?」
朝からずっと手鏡を見ておった私に、不思議そうな顔をしながら小梅どのが尋ねてきた。
「まずは自分の顔を好きになれと、やよい姉様から言われたのだ。」
「え?まさかとは思うけど、自分の顔を好きじゃぁないの?」
「小梅どのは自分の顔が好きか?」
「う~ん。私はもう少し目が大きかったらなぁって思うかな。でも自分の顔だし、嫌いではないよ。」
「そんなものか…」
やはり、目が大きいというのが美人の基準らしい。目をいかに小さく見せるかという顔の研究はしたことがあるが、その目を好きにならなければなるまい。とはいえ、どうしたものか…
はぁ…盛大なため息をついた。
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「どうしよう。かぐやちゃん、すごく悩んでるみたいなんだけど…」
「美人を自覚していないのは想定外だったな。」
「じゃあ、褒め褒め作戦はどう?」
「褒め褒め作戦?」
「そそ!かぐやちゃんを美人だってみんなで褒めまくるの♪そうしたら少しは自覚するんじゃぁない?」
「それいいね~♪」
「松乃ちゃん、かぐやちゃんをめちゃめちゃ褒めるけど、僕の中の一番はいつでも松乃ちゃんだからね♪」
「もう、秋人ったら♪モチロン喜んで協力するよ!」
「さっすが理解あるね~!松乃ちゃん大好きだよ♪」
「いちゃつくなら外へ行け!バカップル!」
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お手洗いへ行き、個室から出ようとしたら、丁度入ってきた姫君達の声が聞こえてきた。
「かぐや様が載った雑誌見た?」
「見た見た♪本当にお綺麗だったわ~!」
ほ、褒められ慣れてないせいか、凄く戸惑うのだが…
「あれ?ここ開かないね!」
コンコン。
うわっ!どんな顔して出れば良いのだ?!
コンコン。
「人が入ってるみたいよ。」
早くそこから退散してくれ~!
出るに出られず、結局授業が始まるチャイムが鳴り終わって、脱出できた。
お昼休憩になり、いつもどおり松乃どのと小梅どのの三人でお弁当を頂いておった。
「ホント、かぐやちゃんって、箸の持ち方綺麗だよね♪」
ぶっ!
「ちょっとかぐやちゃん大丈夫?」
「急にどうしたの?」
「いや、ちょっとむせただけだ。」
綺麗という言葉に反応してしまった、なんて言える訳が無い。
「あっ!お弁当に綺麗な髪の毛が付きそう!」
ゲホゲホ!
「さっきから大丈夫?」
「喉の調子が悪いんじゃぁ無い?」
「き、気にしないでくれ…」
駄目だ。過剰に反応してしまう…
お弁当を頂いた後は、一人で冷静になろうと、中庭のベンチで座っておった。
ふう…中々慣れぬものであるな…
ため息を漏らした時、後ろから話し掛けられた。
「黄昏ているかぐやさんの横顔も、綺麗ですね。」
「は、春樹どの!」
「ふふ。赤く染まった頬も美しいですよ。」
「な、何を言い出すのだ!」
「あれ?動揺していますか?」
「動揺などしておらぬわ!」
昼からは、体育で珍しく男女合同であった。
「かぐやちゃんの体操服姿って可愛いよね♪」
「秋人どの!からかうな!」
「あれ?本当の事を言ったのに、怒っちゃった?」
「秋人どのは松乃どのだけ見ておれば良いのだ!」
放課後前、冬馬どのがクラブが休みになったと伝えに来た。
「みんな残念がってたぞ。」
「皆、稽古に熱心だからな。」
「いや、みんなかぐやに癒されてるからな。」
「冬馬どのまで何の冗談だ?」
「冗談って逆に何がだ?」
「いや、忘れてくれ…」
何だか気疲れした1日であるな…爺やのリムジンに乗り込み、はぁ…と何度目か分からぬため息をついた。
そういえば、不細工三人衆も美形ということなのか。とてもそうは思えぬが、似たような自分の顔を好きになれば、見方も変わるのであろうか…
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「かぐやちゃん帰った?みんな集合!報告会を始めます♪では小梅ちゃんから!」
「何だか綺麗って言葉に異常な反応してたよ。」
「確かにね~♪」
「綺麗だと言ったら凄く動揺していましたね。」
「え~!僕が褒めた時は怒ってたよ!」
「俺の時は何の冗談かと言われたぞ。」
「やっぱり褒め褒め作戦止めない?気疲れしてるみたいで、気の毒になってきたよ。」
「褒められ慣れてないのかなぁ。」
「とりあえず作戦は一旦中止しよっかね。」
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