第30話・裏同盟結成!
文化祭の茶店で私を指名してきたのは、元婚約者の藤原道彦どのであった!
「かぐや様、ご機嫌麗しゅうございますか?」
「何をしに来た!」
「かぐや様、そなたも来月で十八になりますな?」
「そうだが、貴様には何も関係ないわ。」
「何をおっしゃいます。婚約の間柄ではないですか。」
「貴様とのことは破談にしたはずだ!」
『元婚約者?初耳だぞ!』
『聞いてはいたが、あんな男だとは…』
『下膨れで一筆書き出来そうな顔だよね♪』
「十八になれば家主の許可無しに婚姻出来る故、お迎えに上がりました。」
「私は貴様と婚姻するつもりは無い!」
「まあ、そのように強情をはらなくても良いではないですか。」
「何が強情だ!今すぐ天界へ帰れ!」
「残念ながら、次の満月までは下界で過さねばなりません。」
春樹どのが道彦どのに声をかけた。
「あの…かぐやさんはご結婚される意志は無いようですよ。」
「なんじゃ?この不細工は!」
『今、春樹のことを不細工と言ったか?』
『あの下膨れ野郎が言うことか?』
『何故かこの男に言われると凄く腹が立つのだが、気のせいか?』
「かぐや様、いつぞやのことは、この道彦も深く反省いたしました。ささ、このような不細工だらけの空気が悪いところなど、すぐにおいとま致しましょう。」
道彦どのが私の腕を掴んできた瞬間、パッと払いのけた!
「貴様、まだ制裁が足りぬようであるな!」
「まだお怒りのご様子、次に私に手をあげましたら永遠に天界へは戻れますまい。ここは大人しくされた方が宜しいかと思いますよ。」
「脅すつもりか!」
「めっそうもない。ご忠告申し上げた次第です。」
「忠告には聞こえぬわ!」
「やれやれ。本日はご機嫌が悪いようなので、また出なおすといたしましょう。」
道彦どのがニヤッと嫌な笑いをしながら茶店を出ていき、皆が集まってきた。
「かぐやさん、大丈夫ですか?」
「ああ、あのような顔だけの男には二度と騙されんぞ。」
「かぐやちゃん、顔色が悪いよ。ちょっと休む?」
「すまぬが気分が優れぬ。休ませていただこう。」
小梅どのに付き添われて、保健室へ行った。
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「空耳かなぁ。かぐやちゃん、あの下膨れの野郎のことを、顔だけの男って言ってなかった?」
「ああ、気のせいだろう。あの一筆書き野郎だぞ!」
「丁寧な話し方だが威圧的だったな。」
「絶対、かぐやは渡さない!」
「私も勿論渡すつもりなど毛頭ないよ。」
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かぐやのおった部屋から廊下へ出た。不細工な癖に相変わらずふてぶてしい奴だ。どうやって天界へ連れて帰るか思案しながら歩いておったら、後ろから呼び止められた。
「ちょっと宜しいかしら?」
「はい、何でしょうか?」
「私は桜小路と申します。竹野塚さんの学友ですわ。」
<何この顔!福笑いの男バージョンじゃない!有り得ないくらい不細工だわ!>
「私は藤原の道彦と申します。」
<うわっ!何だこのおなごは!化粧で更に目が大きくなり、まるで化け物ではないか!>
「それより先ほど耳に入ってきましたが、ご婚約されておられたのですね。」
「はい。次の満月の時にはかぐや様を連れて帰るつもりなのですが、意地を張っておられるのか、素直になって頂けないのです。」
「そうでしたか。それではわたくしが協力して差し上げますわよ。」
<この不細工にかぐやを片付けてもらえば、春樹様はわたくしのものだわ!>
「それは有り難い。こちらには不慣れ故、助かります。」
<化け物のようなおなご、顔も見たくないが仕方ない。利用させてもらうか。>
「よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ心強い味方が出来て何寄りです。」
「おほほ♪」
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屋敷へ戻ってすぐに、爺やと婆やを部屋へ呼んだ。
「どうされました?かぐや様。」
「今日、学校へ藤原道彦どのが来たのだ。」
「え?あの破談した藤原様ですか?」
「そうだ。私を婚約者扱いし、天界へ連れ帰ると言っておった。何とかして天界と連絡がとれぬか?」
婆やはいつになく難しい顔をして思案しておるが、名案は浮かばぬようだ。
「良く晴れた満月の一日前でしたら、やよい様と連絡が出来るかもしれません。」
「次の満月はいつだ?」
「確か、七月七日にございます。」
「他の手立ては無いか?あと一カ月近くもあるぞ!」
「大変申し訳ございません。他には思い付きませぬ。」
「爺やも何か無いか。」
「申し訳ございません。やよい様と連絡が取れるまで、学校へも連絡をし、藤原様がかぐや様に一歩も近づかぬよう取り計らいます。」
「頼んだぞ。」
「かしこまりました。」
あやつ、脅してくることを考えると、一つも反省しておらぬであろう。一体何が目的だ…