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第26話・姉君の婚約者

 久しぶりの天界だ!空気が美味しい!浮かれながら久しぶりに天界の屋敷の門をくぐった。

まずは父上と母上に帰宅の挨拶だ。


「父上、母上、本日戻ってまいりました。」


手をついて深々と挨拶をした。


「かぐやよ、久しぶりだな。元気にしておったか?」

「母上、おかげさまで下界でも元気に過ごしております。」

「次の満月までゆっくりしなさい。」

「ありがとうございます。」


「時にかぐやよ。」

「はい、父上。」

「そなたに藤原家から再度、求婚の話が来ておるがどうするか?」


藤原?あ、あの顔だけ男の元婚約者か!再度懲りずに求婚とは、制裁が足りなかったか!


「すぐにお断りください。」

「それで良いのか?」

「はい。あの者と婚姻するくらいなら、一生独り身を通します。」

「そこまで言うなら断っておこう。」


「やよいも支度を整えておる。会ってきなさい。」

「はい、行ってまいります。」


やよい姉様に会うのも嬉しいが、義兄上となる殿方と会うのも楽しみであった。

どれだけの美男子なのか、久しぶりに目の保養をさせていただこう。


やよい姉様の部屋の前で座り、声を掛けた。


「やよい姉様。かぐやにございます。」


すぐに障子が開き、やよい姉様が私の手を取り、部屋の中へと促した。


「かぐやよ!久しぶりですね。」

「やよい姉様も相変わらずお綺麗で!」

「ふふ。そのような杓子定規は必要ありませんよ。私の婚約者を紹介しますね。」


部屋の奥に一人の殿方が座っておった。


「そなたがかぐやどのですか?お初にお目にかかります、足利の弥蔵と申します。以後お見知りおきを。」

「は、はい…」


驚いた!目は細く美男子の部類であるが、顎はとがっており、ふくよかさがまったく無い。まるで目だけを細くした不細工三人衆のようだ。


「やよい姉様、馴れ初めをお聞かせ頂けませんか?今後の参考にしたいのですが。」

「まぁ、かぐやったら。」

「いいではないか。」


義兄上と照れたように目を合わせ、やよい姉様は話し始めた。


「かぐやが下界に追放された後、帝に呼ばれたのです。上流貴族であるにもかかわらず婚約者である殿方に手をあげたとのことで、あなたの将来を心配されておりましたよ。」

「それは訳あってのこと。」

「訳はどうであれ、手をあげたということが問題なのです。」

「…やよい姉様にまでご足労をお掛けし、申し訳ありません。」


「ふふ。ただ一人だけ、あなたの行動を褒める殿方がおりました。それが弥蔵どのなのです。」

「へ?そうなのですか?」


ちらっと義兄上を見ると、義兄上がにこやかに話し始めた。


「藤原道彦どのの行動には以前より目をつけておったのです。特に貧困層への仕打ちは目に余るものがありました。だが、貧困層の声を聞く者もおらず、無意味に手をあげる訳にはいかなかったのです。」

「そうだったのですね。」


やよい姉様はクスッと笑って、私に向き直った。


「立派な妹君をお持ちだと褒めてくださり、幾度となく会ううちに求婚されましたが、弥蔵どのは帝に直接仕える最も高貴な身分。とても私には荷が重いとお断りいたしました。」


「それが何故婚姻に至ったのですか?」

「今の身分を捨ててでも一緒になりたいとおっしゃって頂き、父上と直接お話しをされ、我が家に婿に来て頂けるようになったのです。」

「それは素敵な話ですね!」

「結局、帝のご配慮により、婿に入っても帝にお仕えする事となりましたので、身分は変わらぬままですけどね。」


「私にもそのようにお慕いして頂ける殿方が、いつかは現れるのでしょうか。憧れてしまいます。」

「かぐやにも素敵な殿方が周りに居るではありませんか。」

「え?あの三人衆ですか?あの者達は確かに信頼はおけますが…」

「容姿が気になりますか?」

「はい…」


「そうか…まだかぐやは下界では美人だと気が付かぬか…」

「え?何とおっしゃいましたか?」

「いえ、何でもありません。婚姻の儀はあと一週間後です。それまでゆっくりお話しましょう。」

「はい。では今宵は失礼いたします。」


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「かぐやの夢は叶いますかな。」

「大丈夫。私も協力を惜しまない。とても素敵な夢をお持ちの妹君だ。」

「ありがとう、弥蔵どの。」


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