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第25話・天界へ帰る

 修学旅行から帰って暫くした日、やよい姉様の婚儀のお祝いに下界の反物を用意しようと思っておった。しかし、下界ではあまり見かけぬ故、皆に聞いてみる事にした。


「なぁ、教えて欲しいのだが、この辺りで反物を売っておる店を知っておるか?」


皆、思案顔だったが、松乃どのには心当たりがあるようだ。


「私の流派でも時々購入する店があるよ♪でも、反物ならかぐやちゃんの方が詳しいんじゃない?」

「それがまだここへ来て買ったことがないのだ。」

「そこの着物屋さんで良かったら、放課後でも見に行く?」

「よろしく頼む。」


「僕達も見に行きたい!」

「だったらみんなで行って、お茶でもしようよ♪」


試験も近くなりクラブも休みであったので、皆で息抜きがてら出掛けることとなった。



 着物屋に入り、店主から色々な反物を見せてもらった。


「どれかお気に召して頂けるものはございましたか?」

「どれも気に入らぬ。機械ではなく、手仕事のものはないか?」

「かなり値が張ってしまいますが、宜しいでしょうか。」

「構わぬ。姉上の婚儀の品だ。」

「かしこまりました。」


店主が店の奥へ入って行き、上等な反物を持ってきた。


「おお!これは良いものであるな!」

「はい。すべて職人の手で仕上げてあります。」

「他の色は無いか?薄桃色があれば最高なのだが。」

「ではお持ちいたします。」


これはまたかなり上等な反物であった。


「ではこれを頂こう。」

「本当にご購入されますか?お支払いは大丈夫ですか?」

「このカードで買い物が出来ると婆やから聞いておるが、使えるか?」

「こ、これは!すぐに手続きをいたします!」

「すまぬが、反物は屋敷に届けてくれ。」

「かしこまりました!」



 『かぐやちゃん、今、値段見てた?』

 『いや、見てないな。』

 『聞くのも恐ろしいよ~!』

 『カードが印籠にみえたぞ!』



春樹どのがこそっと話し掛けてきた。


「今のはかぐやさんのお召し物ですか?」

「いや、私のは今あるもので充分だ。最近は洋服を着ることが多いしな。今のは姉上の為だ。」

「そうでしたか。ご家族思いなのですね。」


屋敷へ届けてもらう手続きをし、店を出た。

何やら春樹どの以外が、一歩引いておる気がするが、気のせいであろうか…



 その夜、久しぶりによく晴れた満月であった。早速鏡に向かってやよい姉様に話し掛けた。


「やよい姉様。」

『かぐやですか?元気にしておりましたか?』

「はい。今日はやよい姉様のお祝いの品を用意いたしました。婚礼の儀よりも遅れてしまいますが、次の満月の時、使者を寄こしていただけませんか?」


『次の満月まで待てません。かぐや、帝から一時帰界の許可が下りましたよ。今夜にでも使者を使わすつもりでしたが、直接手渡してはくれませぬか?』

「本当ですか!すぐに支度をいたします!」

『ふふ。かぐやの顔をみるのを楽しみにしておりますね。』

「私も早くやよい姉様に会いたいです!」


鏡を片付けて、すぐに爺やと婆やを呼んだ。


「爺や!婆や!」

「どうしましたか?かぐや様。」

「帝の許可が下りた!使者がすぐに来るはずだ!天界へ参るぞ!」

「おお!今日は満月、すぐに支度いたしましょう!」


「そうだ。学校はいかがすれば良いであろうか。」

「爺がこちらに残ります故、連絡をしておきます。」

「よろしく頼む。」


そういえば皆にも伝えた方が良いであろうな。

スマホを取り出し、K.NETのグループチャットという画面を出した。


『てんかいへかえる。』

送信っと。

夜中なので、明日の朝には皆が見てくれるであろう。


迎えの使者を待ちきれず、庭でそわそわしながら時間を潰した。


----------


K.NETグループチャット


かぐや:「てんかいへかえる。」



梅っち:「ちょっと、かぐやちゃん!いきなりどうしたの?朝起きてびっくりしたよ!」


松っちゃん:「かぐやちゃん?まだ寝てるの?」

あきぴ~♪:「もう起きないと学校に遅れるよ♪後でゆっくり話そうね!」


----------


学校に着いたけど、かぐやちゃんの姿が見えなかった。


「あれ?かぐやちゃんまだ来てないの?」

「それが、さっき先生に聞いたけど、テンカイへ既に帰ったそうだ。」


「え~~~~!!!?」


「だって、昨日まで普通にしてたじゃん!」

「帰るって一時帰国?それともずっと?」

「それは先生にも分からないらしい。」

「じゃあ、今日屋敷に行ってみようよ!」


みんなでかぐやちゃんの屋敷に行ってみることにした。

いつもどおり門の前に立っても、誰も出て来ない。


「いつもならすぐに婆やさんが出てくるのにね。」

「みんなで帰っちゃったのかなぁ。」


「…」


「き、きっと一時帰国だよね!」

「そうだよな。テストもあるし。」

「海外だよね?一週間くらいかな?」

「そのうち、帰ったぞ。って言いながら学校に来るよ♪」

「そうだそうだ。」


みんな自分に言い聞かせるように帰宅の途についた。

だけど、テスト期間になってもかぐやちゃんは帰って来なかった。


春休みになっても…


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