第24話・三人衆の寛ぐ場所
次の日も、一人で部屋で過ごすこととなった。
はぁ…北海道まで何しに来たのだか…
退屈な時間を過ごしておると、冬馬どのが部屋へやってきた。
「昨日も滑らなかったであろう。今日は監視しなくとも大丈夫だと思うぞ。」
「いいんだよ。何かあった時に後悔したくないからさ。」
手土産にジュースを持ってきてくれたので、ソファーに座って頂くことにした。
「そういえば、まだテンカイには身分制度が残っているのか?」
「その通りだ。」
「かぐや、凄いな。」
「何がだ?」
「夢って、貧困層の子供に空手を教えることだったろ?」
「そうだが何が凄いのだ?」
「身分に関係なく人の助けになることをしたいってところがさ。そんな社会にいれば見下して相手にしないのが普通だろ?」
「そうか?」
何だかそう褒められると、照れくさいものであるな…
「だが、身分制度は私の一存では変えられぬ。元々裕福なものと特殊能力を持ったものが重宝され、上位に上がっておる。」
「ふ~ん。かぐやの家は台所に入れないくらいだし、上位なんだろうな。」
「だが、貧困層の子供達は意味もなくいじめられておる。何かあったら守ってやりたいのだが、それも中々難しいのだ。」
「まぁ本当は黙って守られていて欲しいんだけどな。」
「ん?何故私が守られる必要があるのだ?」
「そこだよな…」
冬馬どのは苦笑いしておった。
お昼時になり、小梅どのが昼食を部屋まで運んできてくれた。
「かぐやちゃん、具合どう?」
「大丈夫だ。世話を掛けたな。」
「あっ!冬馬くん、来てたんだ…」
部屋の中におった冬馬どのに気付いたようだ。
「もう習う必要も無いしな。かぐやの暇つぶしに付き合ってたんだ。」
「そ、そうだよね。じゃあ私もう行くね!」
焦ったように去っていったな…
「小梅どのは何かあったのか?」
「さあ?」
夕食後は、また不細工三人衆が部屋へ来た。秋人どのはソファーで寛ぎ、ホッとした声を出しておる。
「やっぱここは落ち着くね~♪」
「そうなのか?」
不思議そうにしておったら、春樹どのが説明してくれた。
「昨日はかぐやさんが脳震盪をおこしたばかりなので、自分達の部屋で過ごしましたが、凄まじいものがありました。さすがに疲れましたね。」
「貼り紙の効果無かったな。寝不足だよ。」
冬馬どのまでもが寛ぎ始めた。
「それは御苦労であったな。」
思わず苦笑いしてしまった。
ふと、思い出したように、松乃どのが不細工三人衆に尋ねた。
「でもあんな大量のチョコレート、どうするの?」
「まず、手作りは捨てるな。何が入っているかわからないからな。」
「そうなの?」
「僕の事務所でも手作りを食べるのは禁止されてるよ。で、市販品で日持ちするものだけ施設の子供達に送って、日持ちしないものは事務所のみんなで食べるかな♪」
「施設に送る時に、俺と春樹のも寄付してるって訳なんだ。」
松乃どのが目で秋人どのと会話した後、わざとらしく声をあげた。
「え~?私と小梅ちゃん手作りなんだけど!もしかしてダメ?固めただけだけどね♪」
「なら今食べようかな♪後になって他とまぎれちゃうと困るもんね!」
「いいの?二人の愛情がたっぷり詰まってるよ~♪」
春樹どのも笑って答えた。
「ふふ。二人は信用していますので大丈夫ですよ。ありがとうございます。」
松乃どのと小梅どのが不細工三人衆にそれぞれチョコレートを手渡した。
あれ?小梅どのがまた顔を赤くしておる。流行り病は大丈夫か?
だが、皆が見てみぬ振りをしておるので、黙ってそれに従った。
チョコレートを食べ終えて、不細工三人衆は部屋に帰っていった。
----------
「と・う・ま~!今日もコーチのレッスンさぼっただろ?」
「ああ、かぐやが心配だったからな。」
「元気だったじゃん!」
「脳震盪を甘くみるなよ!」
「そう言いながら、かぐやさんの傍にいたかっただけなのでは?」
「は、春樹までそんなこと言うなよ!」
部屋に戻る途中、二人に散々からかわれてしまった。
「冬馬、言っておくけど…」
「抜け駆けはしてないぞ。」
「そうじゃない。自分の理想をかぐやちゃんに押し付けるなよ。」
「理想?」
「女の子を守ってあげたいタイプだろ?」
「まぁ、そうなんだが…」
「かぐやさんは黙って守られるタイプでは無いからな。」
「そこなんだよな。かぐやの夢は応援したいけど、どんどん逞しくなるのも問題というか…」
「そういえば秋人こそ、最近松乃と仲いいよな。」
「ちょっと秘密作戦中なもんでね♪」
「元々ノリが同じような二人だからな。特に違和感は感じなかったよ。」
「そうだった…」
ふう…と、ため息をつきながら部屋の鍵を開けた。
今日も念のためインターホンに貼り紙をしておこう…
----------