第22話・チョコレート作りは難しい
二月に入ってすぐ松乃どのから、小梅どのと一緒に呼び出された。
「何があるのだ?」
「ふふ!二月の大イベントと言えば?」
「節分か?もう終わったぞ。」
ガクッ!
「二人とも何をしておるのだ?」
「そっか、かぐやちゃん知らないかもね。バレンタインデーだよ!」
「小梅どの、バレンタインデーとは何ぞや?」
「女の子にとってドキドキする日だよ!」
ドキドキする日?
よく分からぬので、早速スマホで検察してみた。
「恋する女の子の一大イベント?西洋では、男性から薔薇を送る?義理チョコでお世話になった人へも?ますます意味が分からぬな…」
「日本では一般的には、女の子が好きな男の子にチョコレートをあげる日かな。あとは日頃お世話になった人へも感謝の気持ちを込めてあげることも多いよ。」
小梅どのが更に説明してくれた。
「ほう。なら私は爺やと婆やだな。」
「好きな人はいないの?」
「誰とも婚約してはおらぬ。」
「まぁ、かぐやちゃんならそうなるか…」
「小梅どのはどうなのだ?」
また小梅どのの顔が赤くなり始めた。
「小梅どの、流行り病はまだ治っておらぬのか?」
「だ、大丈夫だよ!」
「それなら良いが、修学旅行も控えておる。早めに治した方が良いぞ。」
「そ、そうだね…」
ん?私と小梅どのの会話を聞いておった松乃どのが、笑いを堪えておる。何も可笑しい事は言っておらぬ筈だが…
「とにかく!修学旅行にバレンタインデーが重なってるの!別学年のライバルは減るけど、同学年のライバルは増えるんだよ!」
松乃どのはビシッ!と指さして熱く語った。
「そうは言われても、逆に爺やと婆やには渡せぬな。」
「かぐやちゃん、誰か忘れてない?」
「ん…思いつかぬ。」
「キング3だよ♪」
へ?あの不細工三人衆か?
「何故あの三人に渡さなければならぬのだ?」
「パーティーしてくれたり、空手教えてもらったり、この前も遭難しかけたところを一緒に励ましたりしたんでしょ?」
「そう言われてみれば…」
「だから、みんなで一緒に作ろ♪」
松乃どのに強引に押し切られた気がするが、何だかんだで、週末松乃どのの邸宅へお邪魔することになった。
小梅どのと一緒に松乃どのの邸宅を訪ねると、甘い匂いが漂っておった。
「チョコレートの良い匂いだな。」
「材料は用意しておいたよ♪」
早速、言われたとおりに作業をする事となった。
「このチョコレートはどうするんだ?」
慣れた手つきで、小梅どのが説明してくれた。私と松乃どのは差し詰め生徒というところであろうか。
「まずは削って細かくしてね!その後溶かして、型に入れてから再度固めるんだよ。」
「わざわざ一度溶かして固めるのならば、最初からそのチョコレートを渡せば良いであろう。」
「一度手を加えることに意義があるんだよ。」
「そんなものか…」
その意義とやらがよく分からぬが、とりあえず包丁を使って細かくしてみるとするか。
ダン!ダン!
「ちょ、ちょっと!かぐやちゃん何してるの?」
「細かく砕いておるのだ。」
「見てて!こうやって少しずつ削っていくんだよ。」
「ふむ。小梅どのは器用だな。」
「家で料理もするからね!」
「次は湯せんにして溶かします。」
ドボドボ!
「わっ!かぐやちゃん、チョコレートに直接お湯を入れたらダメだよ!」
「そ、そうなのか?」
「一滴入っただけでもダメになっちゃうんだよ!湯せんってのはこうやって大きいボールに入れて、ゆっくりと溶かすんだよ!熱すぎたら水を入れて冷ましてね。」
「やってみたが、何やら塊と油になったぞ。」
「温度が高過ぎ!分離しちゃったよ!」
せっかく小梅どのにご教授いただいたが、どう見ても美味しくなさそうな物体が出来上がった。
「かぐやちゃん…最初からやりなおす?やめておく?」
「チョコレート作りとは難しいものであるな。やめておく…」
ただ溶かして固めるだけなのに、私には無理なようだ。
早々にリタイアして、売っているものを用意することとした。
台所仕事とは大変なものなのだな…
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K.NET男三人のグループチャット
あきぴ~♪:「そろそろバレンタインデーだね♪」
ハル:「そういえば、修学旅行の時だったな。今年は身軽になりそうで助かるよ。」
TOMA:「そうだな。」
あきぴ~♪:「何言ってんの?かぐやちゃんと過ごせる貴重な時じゃん!」
TOMA:「おお!そうだ!」
ハル:「気づかれたか。」
あきぴ~♪:「何回も言ってるけど、抜け駆け禁止ね♪」
ハル:「分かっているよ。だが、バレンタインデーを知らない可能性があるな。」
TOMA:「確かに…」
あきぴ~♪:「大丈夫!それは依頼済みだよ♪」
ハル:「秋人の言う事だしな。期待しないで待つか。」
TOMA:「だな。」
あきぴ~♪:「ちょっと!本当に大丈夫だって!期待しててよ♪」
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