第18話・プレゼントの行方
「すまぬ!」
パーティー当日、門まで出て来た春樹どのに勢いよく頭を下げた。
「赤い服を用意できなかった故、帽子のみとなってしまった!」
顔を上げると笑いをこらえる春樹どのがおった。しかも、普段着だ。
「大丈夫ですよ、かぐやさん。秋人と松乃さんは何やらカチューシャを付けてきておりましたが、小梅さんもリボンを付ける程度ですよ。」
「そうか。ほっとしたぞ。一人だけ浮くかと思っておった。」
「何か分からない事があったら、私に聞いてくださいね。そのサンタ帽も似合っていますよ。」
あのふくよかな白髭のじいさんに似ているということか。異国の美男子に似てるとは、お世辞でも嬉しいものだ。
にっこり笑ってありがとう、と返した。
「みんな待っていますよ。」
微笑む春樹どのに促されて、門を潜った。
メイドとやらの世話係に案内され、部屋に入った途端、パンパン!と音がはじけた!
これは火薬のにおい!爆竹か?
「メリークリスマス!」
皆が手に何かを持ってこちらへ向けておった。よく見ると細い紙が手元から飛び出しておるようだ。
「ほう。こんなものがあるのか。」
「クラッカーね!パーティー始まりの合図だよ♪」
秋人どのが席に案内してくれた。
「わぁ!かぐやちゃんのサンタ帽かわいい!」
「ありがとう。小梅どのもリボンが可愛いな。」
「ありがとうかぐやちゃん!」
ケーキを頂き、プレゼント交換の時間となった。音楽に合わせて、不細工三人衆が用意した包みを、おなご三人だけで回していく。不細工三人衆は、おなご三人が用意した包みを回しておった。
「はい!ストップ!」
音楽が止まり、皆が手に持っておる包みを順番に開けた。
「わぁ!綺麗!」
小梅どのが声を上げた。一粒の宝石がついた首飾りだ。
「それは綺麗だな!見事な紅玉だ。」
「かぐやさん、よく分かりましたね。それはルビーです。」
ほう、これは春樹どのが用意したものか。なかなか見る目があるようだ。
続いて松乃どのが開けた。
「かわいい~♪限定のテディベアじゃん!」
「いいでしょ~!ちょっとしたツテでゲットしちゃった♪」
秋人どのが用意したものか。中々おなご心を掴むのがうまいな。
では私のが冬馬どのが用意したものであるな。小さな箱を開けると、キラキラと輝いておる物体が入っておった。
「これも綺麗だ。だが、これは何だ?」
「バレッタっていう髪留めだよ。空手の練習の時に髪の毛結ぶだろ?その時にでも使ってくれ。」
「分かった。ありがとう。」
続いて不細工三人衆がプレゼントを開ける事となった。春樹どのには私のプレゼントが当たったようだ。
「それ、鳴らしてみて♪」
松乃どのに促されて春樹どのがタイマーを鳴らすと、『朝だ!起きる時間になったぞ!』と私の声が響いた。何とも言い難い恥ずかしさがあるな…
「す、すまぬ。それくらいしか思いつかなかった…」
「いいえ。毎朝かぐやさんに起こされるなんて幸せです。」
にこっと笑ってお礼を言われた。このようなもので喜ぶかどうか不安であったが、気に入ってもらえたようで、ひと安心だ。
続いて冬馬どのが開けた。
「おお!これは今流行りのシルバーネックレスだな!センスいいじゃん!」
秋人どのが続けて開けようとした時、何やら松乃どのが無言で合図を送っておる。
納得したように、秋人どのがうなずいた。この二人は目で会話が出来るのか。大したものだ。
「冬馬!そのネックレス、僕欲しかったんだ♪交換してよ!」
「まぁいいけど、秋人のは何だ?」
冬馬どのが替わりに受け取った大きな包みを開けた。
「おお!こっちもいいな!スポーツタオルとスポーツバッグだ!部活で使えるな!」
小梅どのがまた顔を赤くしておる。松乃どのはほっといて良いと言っておったが、流行り病が心配だ。
パーティーも終わり、帰宅時間となった。
門で爺やを待っておる時、小梅どのが何か言いたげに私を見ておった。
「小梅どの、どうかしたか?」
「あ、あの、かぐやちゃん。もし良かったらプレゼント交換してくれないかな。髪留めが良かったら私が用意するし。」
「いや、それは大丈夫だ。しかし小梅どのが貰っておった紅玉の方が価値があると思うぞ。」
「あ、うん。あのバレッタが気に入っちゃって。私にはルビーは勿体無いし。」
「勿体無いとは思わぬが、髪留めが気に行ったというのなら交換しよう。」
「ありがとう!」
その光景を見ておった松乃どのが何やらスマホで検索しておる。
「ふむふむ。これで春樹会長も報われたな♪」
「何がだ?」
「いや、こっちの話♪」
その後、爺やのリムジンが着き、三人で帰宅の途に着いた。
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「いいな~!春樹、俺のと交換してよ!」
「何言ってるんだ、秋人。お前シルバーアクセが欲しかったんだろ?」
「はぁ、冬馬は何もわかってないな。」
「何がだよ!」
「まぁまぁ、みんなの希望どおりで良かったんじゃあないのか。」
「かぐやちゃんが髪留め使うのを見てニヤニヤする冬馬の顔が浮かぶよ♪」
「べ、別に!そんなことしないよ!」
「どうだかね~♪」
はぁ…春樹が一人ため息をついた。
「せっかく誕生石選んだのにな…」
「ん?何か言ったか?」
「いや、何も。それよりお正月はどうするんだ?」
「俺はじいさんのところに帰省かな。」
「僕は親父に付き合ってハワイだよ。わざわざテレビに追いかけまわされに行くなんて信じられないけどね。」
「そっか。なら、よい年を。」
「よい年を。」
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