表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
161/169

第25話・原因究明

 夏の日差しが照りつける頃、帝から呼ばれて宮廷へ出向いた。


「かぐや、今年は害虫の被害も少なく、久しぶりの豊作となりそうだ。」

「それは良かったです。道場へも読み書きを教えて欲しいと、子供達だけでなく大人達も来ておるようでございます。」

「これもそなたが私財を投げ打ち、下界の知恵を生かしてくれたおかげである。何か褒美を取らせよう。」


「褒美だなんて、恐れ多いです。これは薬を作ってくれた皆のおかげにございます。」

「だが、そなたの知恵と行動力が無ければ果たせぬ事であろう。何でも良い故、遠慮なく申せ。」

「…今すぐには思いつきませぬ故、暫く考えさせて頂いても宜しいでしょうか。」

「では、何かあればすぐに申すが良い。」

「ありがとうございます。」


深々と帝に頭を下げて宮廷を後にし、下界へ戻り、早速勤めから帰ってきた春樹どのに報告をした。


「それは良かったですね。」

「大人も子供も、今では道場へ通う者が絶えぬのだ。」

「かぐやさんの高校の時からの素敵な夢が、現実になりましたね。」

「私一人の力では無い。春樹どのにも薬の存在を教えて貰っておるし、感謝しておるぞ。」

「ふふ。私はスマホで検索しただけですよ。」


春樹どのは、微笑みながらそっと私の腰を抱き寄せた。


「本当に誇りに思います。こんな素敵な奥さんと一緒になれるなんて、私は果報者ですね。」


ま、また、春樹どのの色気がダダ漏れである…


「わ、私こそ果報者であるぞ…」

「ふふ、嬉しいですね。せっかくの金曜の夜ですし、赤く染まったかぐやさんを頂きたいところですが、先に夕食を頂きましょうか。」

「も、勿論だ!」


その時、ふと思い出した。確か次のチャンスは三日後の月曜日くらいであったよな…週末は何としてでも拒否せねば!


夕食を食べ終わり、メイドさんに片付けて貰ってソファーで寛いでおる時、春樹どのが微笑みながら軽く私を抱き寄せてきた。


「一緒にお風呂に入りませんか?」


ま、まずい!このダダ漏れの色気に流されぬようにしなければ!


「き、今日は疲れておる故、一人でゆっくりと入りたいのだが…」

「…そうですか。分かりました。」


ふう、何とかなったか…



 土日も用事が無いのに天界へ行き、疲れておるとアピールし続け、やっと月曜日となった。天界へは帰らず、朝から準備に勤しんでおった。


「よし!キャミソールの準備もOK!にごり湯の風呂もOK!」


と、突然スマホが鳴りだした。春樹どのからであった。


「あれ?まだ仕事中であるよな…」


不思議に思いながらも通話ボタンを押した。


「もしもし?」

『今日は天界へは帰らなかったのですか?』

「そ、そうだ。今日は道場も無い故、必要無くてな。」

『丁度、お話出来て良かったです。急な泊まりの出張が入ってしまいまして、今から着替えを取りに帰りますね。』


え~~?!ま、まぁ仕事であるならば仕方あるまい…まだチャンスは明日もある筈だ。


それから暫くして、春樹どのが帰宅した。


「明日はいつ頃帰って来るのだ?」

「4日間の出張なので、帰って来るのは木曜日になります。木曜は直帰なので早いと思いますよ。」


ガーン!ガッカリである…

そんな私を見て、春樹どのは苦笑いした。


「一人にしてしまって、すみません。そんなに寂しそうな顔をしないで下さい。出張に行けなくなってしまいます。」

「い、いや…大丈夫だ。その間は天界へ帰るようにしよう。その方がメイドさんも楽であろう。」

「ふふ。お気遣い頂いて嬉しいですが、メイドさん達も仕事ですから、遠慮されなくて大丈夫ですよ。」


玄関まで見送り、春樹どのは私の額にチュッ!と軽く口付けをした。


「では行ってきます。」

「行ってらっしゃい…」


何とか笑顔を取り繕い手を振ったものの、気持ちは沈んだままであった。

せっかく週末、春樹どのの色気の誘惑に打ち勝ったのに…


気持ちが沈んだまま天界へ帰ると、やよい姉様に心配されてしまった。


「かぐや、どうしたのですか?何か悩み事でも?」


ここはやよい姉様に相談してみるか…


「実は…」


掻い摘んで、避妊しておらぬのが一年を超えたこと、体温計でチャンスの日を確かめておるが、中々うまく行かぬことを話した。


「そうですか…天界でも中々お子ができぬという話を聞いたことはありますが、かぐやは考え過ぎではありませんか?余計に良くないそうですよ。」

「そうは言われましても、婚姻前にも春樹どのは早く子が欲しいと申しておりましたし…」


やよい姉様は少し考え込んだ。


「もしや…」

「何ですか?」

「かぐやの能力は、人を連れて来れぬと申しておりましたね。」

「はい。一度婆やを連れ帰ろうかと思いましたが、うまくいきませんでした。」

「それが原因かもしれませんよ。いくらかぐやの身体の中におる命だとしても、無理があるのかもしれませんね。」

「…なるほど。能力の影響かもしれませんね。」



 早速、翌日宮廷へ行き、帝にお目通りをお願いした。通された部屋で待っておると、暫くして御簾で仕切られた床に帝が座られた。


「かぐやよ。願いが決まったのか?」

「はい。実は、暫しのお休みを頂きとうございます。」


子ができぬ原因が能力かもしれぬ事を告げ、帝は快く了承してくれた。下界の所用のみ、満月の夜に屋敷へ降りてくる者に頼むということであった。


「誠に勝手を言い、大変申し訳ございません。」

「良い。そなたは充分に天界の為に働いておる。気にするでない。」

「有り難き幸せにございます。」


帝の許可を得てから、父上や母上の家の者、道場の関係者にも暫く天界へ来ぬ事を伝え、春樹どのが帰宅する日に下界へ降りた。


それからは退屈な日々を過ごした。


「はぁ…天界へ行かず、ただ家におるだけというのも退屈であるな…」


気分転換と称して、ランチは外へ食べに行った。何となく一人分だけを本邸から運んで貰うのも気が引けたのだ。

その後は図書館へ行って時間を潰した。天界でも役に立ちそうな技術を探してはノートに書き写してみた。それでも時間は余るものだ。


「いつまでこのような生活が続くのであろうか…」


そんな日々を送りながらも、再びチャンスの日が訪れた。

その日は満月の夜であった故、屋敷へ行き、婆やから天界の手紙を受け取って帰宅した。だが、何やら春樹どのの様子が変であった。


「…かぐや、話があります。」


な、何だ?神妙な顔をして…何やら機嫌が悪いというか、怒っておるような只事では無い雰囲気であった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ