第16話・クリスマスとは?
今年もあと残り1ヶ月、クラスで松乃どのと小梅どのの三人で試験勉強をしておった時のことだ。
松乃どのがいきなり叫び出した。
「あ~!世間はクリスマス一色だというのに、何で試験勉強?」
「ホントだよね。」
何やら小梅どのも同意しておる。
「クリスマスとは何だ?」
「え~~~!!!」
「かぐやちゃん知らないの?」
二人揃って驚くほどのことなのか?
「クリスマスといえば、恋人達の大イベントだよ♪」
いつの間にか後ろにおった不細工三人衆も話に加わってきた。
「しかし、今スマホで調べたら、イエス・キリストという人物の誕生日と書いてあるぞ。」
「それも間違いないですが、日本はクリスチャンが少ないし、どちらかと言えばパーティーを楽しむ日でもありますね。」
春樹どのが説明を付け加えた。
「そういえば誕生日で思い出した!かぐやちゃん、聞くのをすっかり忘れててごめんね。」
「何だ?小梅どの。」
「かぐやちゃんの誕生日っていつ?」
「七月七日だ。」
「もう過ぎてたんだ!」
「それがどうかしたか?」
「どうかしたじゃあないよ!来年はみんなで賑やかにお祝いパーティーしようね♪」
「秋人どの、誕生日とはパーティーとやらをする日なのか?」
「テンカイでは違ったの?」
「父上と母上に、年をとった報告とお礼をする日であったぞ。」
「そうなんだ。お祝いはしないんだね。」
「それにしても織姫と彦星、年に一回しか会えない日が誕生日なんて、なんだかロマンチックだよね~♪」
何故か松乃どのがうっとりしておる。
「いやいや、あやつらは、仕事を怠けておったから引き離されただけであろう。同情の余地も無いぞ。」
「もう!かぐやちゃんって意外と現実派なんだから!」
「ふふ。夢を壊してしまってすまないな。」
「その前に皆、試験だ。」
「は~い。」
今度こそ不細工三人組に勝ってやる!密かな闘志を燃やして試験に臨むことにした。
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K.NET男三人のグループチャット
あきぴ~♪:「はろ~!」
ハル:「試験前に余裕だな、秋人。」
あきぴ~♪:「クリスマス抜け駆け禁止ね♪」
TOMA:「するわけ無いだろ。」
ハル:「重要任務中だ。」
あきぴ~♪:「でも最近、かなり警戒心が溶けて来たよね♪」
TOMA:「確かにな。握手くらいなら出来るしな。」
あきぴ~♪:「ふ~ん。握手ね♪」
TOMA:「秋人、お前まさかそれ以上の事してないだろうな。」
あきぴ~♪:「それはどうかな♪」
ハル:「抜け駆け禁止は秋人の方だな。」
TOMA:「そうだそうだ!」
あきぴ~♪:「まぁその話は置いといて、クリスマスどうする?」
ハル:「経験無いらしいからみんなでパーティーが無難だろう。」
TOMA:「置いておけるか!」
あきぴ~♪:「じゃ、明日みんなで話そうね♪」
ハル:「分かった。」
TOMA:「おい!」
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今回の試験結果上位者が発表が出た。
<一位:浦和 春樹>
<二位:竹野塚 かぐや>
<三位:桃井 秋人>
<四位:桜小路 乙葉>
<五位:金城 冬馬>
「くっそ~!秋人のせいだ!」
何やら冬馬どのが叫んでおる。
「何故秋人どのなのだ?」
「か、かぐや!いや、ちょっと動揺して身に入らなかっただけだ。」
「そうか?」
「そうそう、僕のせいにしないでよね!と・う・ま・くん♪」
「煩い秋人!お前がはっきりしなかったせいだ!」
冬馬どのは怒っているようだが。秋人どのは笑っておるな。
「冬馬、まだまだ修行が足りないのではないか?」
春樹どのが秋人どのを援護した。
「くっ!次こそは春樹も抜いてやるからな!」
「私にも桜小路さんにも優秀な家庭教師がついている。諦めた方がいいぞ。」
「世の中やっぱり金か!」
ふむ…言い合いを楽しんでおるように見えるのは気のせいか?不細工三人衆の行動は時々不可解だ。
秋人どのが私達に向き直った。
「それより、クリパどうする?」
「クリパ?」
「クリスマスパーティーの事だよ♪」
「もちろんプレゼント交換もするよね?」
「する!する!」
何やらよく分からぬが、皆がはしゃいでおるので楽しい事なのであろう。しかし、相変わらず皆は即決であるな…
「男は女の子に、女の子は男にプレゼントを買うってどう?」
「秋人、それいいね♪決定!」
秋人どのと松乃どのの会話を聞いた小梅どのが買い物に誘ってくれた。
「かぐやちゃん、松乃ちゃん、週末一緒にプレゼントを買いに行かない?」
「行く♪行く♪」
「ならば私も行くとするか。」
「一緒にランチもしようね♪」
おなご三人で買い物に行くこととなった。不細工三人衆も一緒に行きたいと言っておったが、プレゼントの中身がバレるとの理由で断った。
放課後、廊下を出たところで久しぶりに桜小路どのが姿を現した。
「春樹さま~♪」
「こんにちは。桜小路さん。」
「お待ち申し上げておりましたわ!クリスマスは今年も我が家主催でパーティーを開くことになりましたの♪是非春樹さまにもお越し頂きたいわ!」
金色に光る用紙を春樹どのに渡しておる。
「ご両親からの招待状ですね。でしたら、私の両親に渡しておきます。」
「春樹さまも是非いらしてくださいね♪」
「私は別件でパーティーが入っておりますので、無理ですね。」
「別件ですか?社交界でそのような予定は伺っておりませんわ。」
「かぐやさん達とパーティーをするのです。」
またしてもキッ!と睨まれた。
おお!久しぶりに見る桜小路どのだ!久しぶりに百面相についての研究ができるな。
だが、すぐに春樹どのに向き直ってしまった。
「去年は我が家のパーティーに、いらしてたではありませんか。」
「私は両親のお飾りに過ぎませんので、行かなくても問題ありませんよ。」
「そんな…」
「では桜小路さん、失礼しますね。」
皆で歩きだした時、春樹どのが私の隣を歩き、心配そうに覗きこんできた。
「かぐやさん、最近は桜小路さんにからまれることはありませんか?」
「まったく無いな。つまらぬ。」
「え?嬉しかったのですか?」
「いや、人により顔や声を変えることが出来るなど、大したものだ。感心しながら百面相の研究を密かに行っておったが、最近はそれも叶わぬ。」
「え…?」
皆が振り返り、私を凝視しておる。
「何かまた可笑しなことを言ってしまったか?」
すると、皆が腹をかかえて大爆笑し始めた。
「な、何が可笑しいのだ!」
「ごめんごめん。怒らないで!」
「まさか研究していたとは知らなかったもので!」
「かぐやちゃん、視点の定め方がホントいいところ突いてるよ♪」
「ホント、かぐやちゃんって最高だね♪」
皆に褒められておるのが、何故なのかがよく分からぬ…