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第11話・かぐや救出!

 今回は俺の失態もあるな…春樹から目を離さないでくれと言われていたのだから、更衣室の前まで付いて行くべきだった。


春樹の家のボディガードと一緒にかぐやの屋敷へ行き、爺やさんからスマホを借りて、すぐに追跡してみた。


「ただいま、どの辺りでしょうか。」

「二十分前からここで止まってるな。電源を落とされたかもしれない。」

「この道なら、港街方面に行った可能性が高いですね。そこを重点的に調べましょう。」

「倉庫、タワーマンション、ホテル…何処から探せばいいのか…」

「人目に付き難い倉庫からでしょう。その後はホテルを探しましょう。」

「よし!行こう!」


再びバイクに跨り、走り出した。


倉庫街に着いて、二人一組になって探した。音を立てないように近づいて、倉庫の中の様子を探った。


「ここも居ないですね。」

「よし!次だ!」


しかし、倉庫ってこんなに多かったんだな。

一つ一つ慎重に近づいて音を確認するのは相当な時間が掛りそうだ。気がつけば、空が薄っすらと明るくなってきていた。


先に捜索を終えた組が、コンビニで食べ物を買ってきた。


「呑気に食べてる場合じゃぁ無いだろ!」

「食べれる時に食べておかないと、この先どんな事態が起こるか分かりません。瞬時の判断力や体力も落ちますので、今のうちに食べて下さい。」

「…分かった。」


急いでおにぎりを頬張って再び捜索を開始したけど、結局倉庫街にはいないという判断になった。


「タワーマンションよりも先にホテルを見た方がいいでしょう。まずは外観と裏口のチェック、フロントの聞き込みに入ります。冬馬様は外観、特に客室の窓をチェックして下さい。」

「了解!」


一軒目のホテルには特に怪しい感じは無かった。他の組も特に何も掴めなかったようだ。

だが、二軒目のホテルに行った時だ。


「あれ?右端の最上階だけカーテンが無いぞ。」

「本当ですね。目張りがしてあります。すぐにフロントに行った組に知らせましょう。」


間違いなくそこだ!

急いで向かおうと走り出したが、ボディガードに止められた。


「駄目です!」

「何でだ!すぐに助け出さないと!」

「ただの改装かもしれませんし、鍵が無い状態で相手に気付かれると、返ってかぐや様が危険な状態になるかもしれません!ホテルの者に確認して鍵を借りるまで我慢して下さい!」

「…分かった。」


くそっ!

すぐにでも飛び出して行きたい気持ちを抑えて、拳を握りしめた。


----------


 誘拐した者達からご自由にお過ごし下さいと言われたものの、特にする事もなくソファーに座って時間を潰した。

時計を見る限り、朝になったようだ。だが、窓から光が入らぬので、感覚が微妙である。そろそろ親族会議が始まる時間かと思うのだが…


顔を洗って眠気をさっぱりと洗い流した。

そういえば腹も減った。昨日の昼から何も食べてはおらぬな…

そう思い、テーブルにあるサンドイッチを摘みながら腹ごなししておった時、廊下が急に騒がしくなってきた。


「どけっ!」

「何者だ!」

「かぐやは何処だ!」

「鍵を開けます!」


ガチャガチャ!

バーン!


勢いよく開いたドアから、冬馬どのが飛び込んできた。


「かぐや!無事か!…ってお前、何やってんだ?」

「い、いや…腹が減っては戦が出来ぬであろう。」


食べかけのサンドイッチを手に持ったまま、固まってしまった。


「それより、会議が始まってるぞ!」

「そ、そうであった!」

「かぐや!急げ!」


冬馬どののはやし立てる声で、急いで部屋から飛び出してエレベーターに駆け込んだ。


「着替えはどうする?」

「時間が無い故、このままで良い。」

「黒帯を締めて親族会議か。中々シュールだな。」

「…仕方あるまい。」

「はは!その方が、かぐやらしくていいぞ!」


冬馬どのは私の頭にポン!と手を乗せてエレベーターを降りた後、バイクが停めてある場所まで走った。

ヘルメットとやらを受け取り頭にすっぽりと被ると、冬馬どのの身体に手を回すように言われた。


「え?抱き付くようになるでは無いか!」

「しっかりと掴まっておかないと振り落とされるぞ!」

「わ、分かった!」

「じゃぁ、いくぞ!」

「うわっ!早っ!」


バイクとは、まるで遊園地のジェットコースターのようである。

交差点で信号にかかると、冬馬どのは裏路地を抜けて、すいすいと走り、あっという間にロイヤルインフィニティホテルの前に着いた。


急いでバイクから降りてヘルメットを渡し、礼を言った。


「冬馬どの!ありがとう!」

「いいから、急げ!」

「分かった!」


入り口でドアマンに止められそうになったが、私の顔を覚えておったのであろうか、そのまま通してくれた。


----------


 はぁ…盛大なため息を付きながら会議の席につくと、隣にいた父さんから声を掛けられた。


「春樹…大丈夫か?」

「はい。万全の態勢で臨みます。」

「それでいい。」


今日は絶対に負けられない。穏便に解決するつもりだった録音機を握りしめた。

かぐやさんの席以外が埋まり、会議が始まった。


「では、臨時親族会議を始めます。春樹様、紅葉坂ホテルの立て直しの件についてご説明をお願いします。」


「その前に、かぐやさんはどうした?姿が見えないようだが。」


昭三さんがわざとらしく言った。


「本当ね。大事な会議に遅刻するなんて、どういうつもりかしら。」

「恐らくしっぽを巻いて逃げだしたんだろう。やはり素性が分からない者はこんなものだ。」


他の親族も同調し始め、思わず声を荒げてしまった。


「かぐやさんはそんな事す…」

「春樹。」


横にいた父さんから、黙って顔を横に振りながら止められた。これ以上何も言うなということだろう。仕方なく言葉をぐっと堪えた。


「まだまだ若いな。ちゃんとした後見人が必要だろう。」


昭三さんは不敵に笑っている。ジェニーを押しつけて自分が後見人になろうと思っているのだろうけど、そうは行かない。絶対に阻止してやる!


会場が静まったのを見計らって、司会者が再び進行を始めた。


「では春樹様、紅葉坂ホテルの件につきまして、ご説明をお願いいたします。」

「はい。では、お手元のモニターをご覧下さい。」


立ち上がり、ロビーのラウンジをオープンカフェにした事、散歩コースを推奨して地元の方からご愛好頂いている事、テラス席のみペット可にして犬の散歩コースにもご利用頂いている事などを説明した。

親族達は頷きながら、聞いていてくれた。


「中々考えたな。これなら継続的に来客数が伸びそうだ。」

「九月から十一月までの三ヶ月間のデータしかありませんが、かなり改善されているようですね。」


「かぐやさんから、オープンカフェとペット可のアイディアを出して頂きまして、それをプロジェクトメンバーで肉付けして行きました。後は美咲さんからも健康と美容にいいドリンクを提供して頂きました。」

「あら、レストラン部門も協力しているのね。」

「はい。今後はホテル内のレストランでも、健康と美容を意識した特別メニューを検討して頂いており、遠方から来られるお客様にも足を運んで頂けるよう考えております。」


「しかし、来客数は伸びても、宿泊が増えなければあまり収益は上がらないな。」


やはり反対意見を言うのは昭三さんか…


「それに関しては、もう少し予算を付けて頂きたいと思います。」

「何か考えがあるのですか?」

「スイートルームの稼働率が極端に悪いので、そこを改装して、ペットも一緒に泊まれる部屋に変更したいと思います。元々、スイート専用エレベーターがありますので、ペットアレルギーをお持ちの他のお客様への配慮も、現状のままで可能です。」

「それなら改装にも多額の費用が掛らずに済みそうですね。」


「すぐ下はレストランになっていますし、元々防音効果が他の部屋よりも高いので、夜中にペットが吠えても、他のお客様に迷惑が掛ることはありません。」

「我が家にも大型犬が二頭いますが、泊まれる場所が少なく旅行へ行くのも大変なので、そういったホテルがあれば助かりますね。」


他の親族からは高評価を貰えた。これでプロジェクトの方は何とかなりそうだ。

後はかぐやさんの事だけだ。無事で居てくれればいいけど…




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