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第14話・ドラマの撮影をします

 体育祭が終わったら、すぐに学問の試験であった。

まずい!フォークダンスのステップで頭がいっぱいだった為、数学とやらの解読勉強を怠ってしまった!


<一位:浦和 春樹>

<二位:桃井 秋人>

<三位:金城 冬馬>

<四位:竹野塚 かぐや>

<五位:有栖川 小梅>


はぁ…やはり不細工三人組に負けてしまったか…


教室に戻り、皆で結果の話をした。


「今回はかぐやちゃんに勝っちゃった♪」

「うむ。また数学とやらが悪かった…」


「小梅さんも巻き返しましたね。」

「私と冬馬くんは特待生だから、最低でもトップ10には入っておかないとマズイんだよね。」


「特待生とは何だ?」

「授業料が免除される制度だよ。一般家庭だし普通ならこの学園には入れないんだ。」


「他の皆は違うのか?」

「私の家は華道の家元なんだ。」


松乃どののご実家は華道の家元か。


「将来は婿を取らないといけないけど、お花の才能があっても頭が悪い人だったら困るから、頑張って勉強してるよ♪」


最近はお花も活けてはおらぬな。一度手習いに行ってみるか。


「私の家は会社を経営しておりますが、父の力で学園に入ったと言われないよう家庭教師に来て頂き、勉強しています。」


そういえば春樹どのは以前にも言っておったな。


「秋人は天才肌だな。」

「そんなことないよ~♪いちおう撮影の合間に単語帳開いてるしね!実は親父が俳優なんだ。結構テレビにも出ている方だけど、かぐやちゃん知らない?」

「我が屋敷にテレビとやらは無い。」


「え~~~!!!」


皆で何だ?そんなに驚くことか?


「この雑誌見て!」


松乃どのが雑誌を広げてみせた。


「ほら!ここのチョイ悪親父の人気ナンバー1が秋人パパだよ♪」


ほうほう、見せて頂こう。

う~ん…確かに大人の渋さはあるが、秋人どのとよく似て目が大きく、ふくよかさは無い。このような中年親父が流行りなのか?


「チョイ悪って言っても、家ではただの不良親父だけどね!でも服はスタイリストも付けずに全部自分でコーディネートするんだ。センスもいいし、そこは尊敬するよ♪」

「秋人どのも夏頃に私の服を選んでおったではないか。皆に好評であったぞ。」

「僕なんて、ほんのお遊びみたいなものだよ♪」


秋人どのが、珍しく照れておった。


「そうそう!今度、親父が出ているドラマで高校生のエキストラを募集するんだって!良かったらみんな出てみない?」


「ホント~?生でドラマの現場見れるなんて嬉しい♪」

「DVDに焼き付けて家宝にしておこうかな。」


何だか皆が盛り上がっておるな。意味が分からぬが、松乃どのが楽しそうに尋ねてきた。


「かぐやちゃんも出るよね♪」

「ああ。皆が楽しいものなら出てみよう。」

「それじゃ、決定!早速親父に連絡しておくよ♪」



 連休の初日、テレビ局とやらに行った。

テレビの仕組みは何となく分かった。秋人どのにスマホでもテレビが見れると教えてもらったのだ。


テレビ局に入ってすぐに楽屋という部屋へ案内され、中には秋人どのの父上が待っておった。


「よく来たな~!いつも秋人が世話になっているそうで。」

「冬馬と春樹はもう知ってるよな。女性陣が右から小梅ちゃん、かぐやちゃん、松乃ちゃんだよ♪」

「ほう、これはまた綺麗どころが揃って目移りしてしまうな♪」

「親父~!友達には手を出さないでよ!」


何だか、ノリも秋人どのとそっくりだ。似たもの親子であるな。



 ドラマの撮影は、すぐに始まった。監督という人が来て指示を出しておる。台詞があるのは秋人どのだけのようだ。

主役は秋人どののお父様で、毎回違うゲスト出演者がおるそうだ。今回はそのゲスト出演者の友人役で呼ばれたらしい。


小梅どのと松乃どのが何やら騒ぎ始めた。


「今回のゲスト出演者って星坂夢斗だったんだ♪」

「生で見れてラッキ~!」

「松乃どの、その夢斗とやらは誰なのだ?」

「そっか。かぐやちゃんテレビ見ないんだよね。今をときめくアイドルだよ!スターだよ♪」


そこへ、キャー!という黄色い声と同時に誰かが入ってきた。あれが夢斗どのらしい。

何だか海で声を掛けてきた軽薄そうな男どもに似ておるな。まぁ関わる場面もあまり無さそうだし、気にしなくても良いか。


そうして撮影が始まった。


「では本番行きます!5、4、3、2、1、…」


『何故俺では駄目なんだ!』

『君には何かが足りない。うまく言えないが…』


「カット!夢斗くんも秋人くんも良かったよ~!」

「ありがとうございます♪」

「ふん。モデル上がりの大根が相手では難しくて仕方ないよ。」


私達のところへ戻ってきた秋人どのに、松乃どのが心配そうに声を掛けた。


「夢斗って結構性格悪いの?」

「みんなあんなもんだよ♪仕事の時には親父の名前は伏せてるから、知らない人も多いしね!」

「何でお父さんの名前を伏せてるの?」

「自分だけで何処まで出来るか試したかったのもあるかな~。僕ってかっこいい♪」

「自分で言うな!」


ほう。秋人どのも家柄に左右されぬよう頑張っておるのか。意外な一面だ。



 休憩の間にお手洗いへ行き、出たところの廊下で夢斗どのが壁に寄り掛かってこちらを見ておった。 


「かぐやちゃんだっけ?」

「そうだが。」

「ちょっと演技のことで話があるから、こっちへ来てくれない?」

「何か失敗したか?」

「ん~。そんなのじゃあないよ。ここではちょっと話し難いかな。」

「分かった。」


連れて来られたのは、私達とは違う楽屋だった。


「僕のこと知ってるでしょ?」

「知らぬ。」

「え~?またまた!はぐらかすのが上手いね♪」


そうは言われても、本当に知らぬが…


「俳優に興味があるの?それともモデル志望?」

「よく分からぬが、今日は秋人どのに連れて来られただけだ。」

「え~!秋人の彼女?」

「彼女とは?」

「違うの?」

「恐らく違うのではないであろうか。」


夢斗どのはドアに行き、鍵を閉めた。


「ねぇ、もし芸能界に興味あるんなら、僕が口を利いてもいいよ♪」

「特に口を利いてもらうことなど何も無い。帰らせて貰おう。」

「そんなこと言って、芸能界事務所に入れるかどうかは僕の機嫌次第だよ♪」


すると、夢斗どのが私の肩に手を掛けてきた!


「何をする!無礼者!」

「何を怒ってるの?僕だよ!夢斗だよ♪」

「だから知らぬと言っておるであろう!」

「そんな事言って誤魔化すなんて、面白い人だね!大人しくしていた方が将来の為だよ♪僕の出番まで時間空くし、誰も来ないからさ♪」

「ふざけるな!」


近づけてくる顔に鉄拳を振るおうとした手を掴まれた!


「暴力は反対~!顔が商売道具だしね♪君も傷を付けられたくないでしょ?」


ドンドンドン!!


『かぐやちゃんここだよね!大丈夫?』


ドアを叩く音と、秋人どのの声が聞こえた。


「ここにおる!」


秋人どのの呼びかけを無視し、夢斗どのが顔を近づけてきた。


「だから近づくな!無礼者!」


『かぐやちゃん、すぐに助けるからね!』


「鍵がかかっているのに、秋人は何を言ってるんだか。んじゃ、続きをしようか♪」

「貴様、口で言っても分からぬようだな!これ以上近づくと本気で制裁を加えるぞ!」

「か弱い女の子からの制裁なんて楽しみだな♪」


仕方あるまい。ここは遠慮無く蹴りを入れるか。

そう思った時、バーン!と、ドアが開き、部屋へ飛び込んできた秋人どのが夢斗どのを突き飛ばした!


「夢斗!てめえ何してんだ!」

「そっちこそ何をするんだ!」

「煩い!かぐやちゃんを怖がらせた責任は取ってもらうからな!」


秋人どのが手を広げ、私を背中に隠した。


「モデルの分際で偉そうに指図するな!鍵はどうやって開けた!」


「私が借りて来たが、何か文句でも?」


声が聞こえた方を見ると、開いたドアに秋人どのの父上が寄り掛かっておった。


「も、桃井さん!いえ、かぐやさんとお話をしていたら、秋人が勝手に勘違いして…」

「ほう、私の息子が嘘をついているとでも?」

「…へ?息子?」


夢斗どのはサーっと顔色を青くし、二人を交互に見つめ始めた。


「じゃあ親父、後は頼むよ♪」

「友人が無事で良かったよ♪」


青ざめた夢斗どのと秋人どのの父上を残し、私と秋人どのは楽屋を後にした。


廊下を歩いていたところで、秋人どのが私に向き直り、いきなり抱き締めてきた!


「お、おい!何をする!」

「…」

「秋人どの?」


呼びかけても、肩に顔を埋めたまま動かぬ。


「本当に心配したよ。無事で良かった…」


何だか心配を掛けたようだ。いつもなら鉄拳で制裁を加えるところであるが、今日はそのままにしておこう。



 連休明け、クラスで松乃どのと小梅どのが、不思議そうな顔をしながら話をしておった。


「最近、夢斗テレビに出ないね~!この前の撮影の時、急にいなくなって撮影中止になったし、どうしたんだろう?」


そこへ秋人どのがやってきた。


「ん~、何か救急車で運ばれたらしいよ。無事だって聞いてるけど、芸能界は精神的にキツいところだからね~!」

「そうなんだ。どの世界も大変だね…」


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 僕が廊下を出たところで、冬馬と春樹に呼び止められた。


「秋人、何かあっただろう?」

「ん?何が?」

「撮影でかぐやさんと夢斗が帰って来なかった時、秋人が飛び出していったよな?」

「そういうこともあったね♪」


「絶対何かあったな。」

「ああ、芸能界から追い出したな。」

「人聞きの悪いこと言わないでよ~!春樹ほど権力握ってないしさ♪ちょっと親父の名前を借りただけだよ♪」


「俺はお前ら二人を敵にまわしたくないよ…」

「大丈夫!僕も冬馬に蹴りを入れられたくないしね♪」


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