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第2話・元カノ登場!

 ゴールデンウィーク後の週末、私は緊張しながら着物を着ておった。今日は親族会議である。


「ふう…」


思わず大きなため息をついてしまったら、襖を挟んだ隣の部屋から声を掛けられた。


「かぐやさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ…」

「帯の締めすぎに注意して下さいね。」

「分かっておる。」

「何なら着付けを手伝いましょうか?」

「え?だ、大丈夫だ!」

「ふふ。それは残念です。」


春樹どのの冗談は相変わらず心臓に悪いな…だが緊張が少し解れ、何とか着付けを終わらせた。



 爺やが運転するリムジンにて、会場であるロイヤルインフィニティホテルの玄関へ着いた。


「かぐやさん、どうぞ。」

「ありがとう。」


先に降りた春樹どのが手を差し出してくれ、その手を取ろうとした。が、急に春樹どのが視界からいなくなった。


「ハル~♪」


いきなり姫君が春樹どのに飛びついてきたのだ!


「え?ジェニー?」

「“覚えていてくれたんだ!嬉しい~♪”」

「“何故、君がここへ?”」

「“そんなの当たり前じゃない!ハルの婚約者に選ばれたのよ♪”」

「“誰がそんな勝手なことを言ったのか知らないが、婚約者はもう決まっているんだ。”」


春樹どのはそう言って、私を見た。

飛びついてきた姫君は、栗色の髪の毛に同じ瞳の色、色は白く細身だが、胸のボリュームが凄く、谷間を強調した服を着ておった。


「“ふ~ん。何だ、東洋人なんだ。私が負ける訳無いじゃん!”」


姫君は大きな胸をゆさゆさと揺らしながら私に近寄り、手を差し出してきた。


「“私がジェニーよ。初めまして婚約者候補さん。残念だけどこのまま帰った方がいいんじゃぁない?”」

「“帰るつもりは毛頭ない。”」

「“何だ、英語話せるんだ。つまんないの。”」


ジェニーは私から離れて、春樹どのの腕に抱き付くよう腕をからめた。

って、大きな胸が腕に当たっておるではないか!


「“ジェニー、離れて下さい。”」

「“夫婦になるんだから、このくらい恥ずかしがらないでよ♪”」


そう言いながらも大きな胸を腕にわざとすり寄せておるではないか!

春樹どのは面倒くさそうにジェニーの腕を外して、私の肩を抱いた。


「“では、愛しの女性と一緒に行きますね。”」


春樹どのと一緒に、そのまま歩きだした。


「あの姫君は…」

「気にしないで下さい。ロスに住んでいた時の知り合いです。誰かが連れて来たみたいですが、私はかぐやさん以外と幸せになるつもりはありませんから。」


にこっと安心させるように微笑んでくれた。


----------


まさかジェニーが来るとは想定外だったな…実は昨日、父から電話を貰っていた。


『かぐやさんと結婚したければ、何があってもかぐやさんと一緒になりたいという意志を貫き通しなさい。』

「もちろんです。」


わざわざ電話で忠告してくる程だ。ジェニーの事も知っていたのだろう。

はぁ…かぐやさんには分からないよう、小さくため息をついた。


----------


親族会議の会場となる部屋は、半分くらいが埋まっておった。私は春樹どのの隣に座ろうとしたが、黒い服を着た者に止められた。


「かぐや様ですね。お席はこちらです。」

「彼女は私の隣です。」


春樹どのがそう言ってくれたが、他の親族の手前、決められた席に座る事となった。私の隣は、以前クリスマスパーティーでお見かけした姫君であった。


「こんにちは、かぐやさん。以前パーティーでお会いした事がありますが、覚えていらっしゃいますか?」

「はい。確かクロードどののクリスマスパーティーですね。」

「そうです。あの頃から春樹はあなたに夢中でしたから、この席でお会いできて嬉しいわ。」

「は、はい…」


ついつい顔を赤らめてしまった。


「ふふ。照れて可愛らしいわね。私は浦和美咲って言うの。二人の事は応援しているから頑張ってね。」

「ありがとうございます。美咲どの。」


お父様とお母様以外にも味方がおった事に、少しほっとした。

そんな話をしているうちに席が全部埋まり、親族会議が始まった。ジェニーも年配の殿方の傍に座り、後ろには通訳らしき人物も座っておった。


「では親族会議を始めます。まずは業績報告から…」


司会の殿方が、淡々と会議を進めていった。


「では、続いて、ホテル部門の後継者となりました春樹様より一言ご挨拶を賜ります。」


春樹どのが立ちあがり、会社を継ぐことの抱負と決意を語った。質問が飛んでも丁寧につつがなく答えており、堂々とした佇まいに、思わず見惚れてしまった。


「今回は春樹様の婚約者候補様にも来て頂いております。まずは、デパート部門の昭三様よりご推薦のジェニー様です。」


ジェニーが立ちあがり、軽く自己紹介をした。


「そして、テンカイという国から来られました、かぐや様です。」


立ち上がって、同じく自己紹介をした。


「テンカイなんて国は聞いたことないぞ。」


その声の主を見ると、先程ジェニーを紹介した昭三どのであった。


「ジェニーの家は、西海岸に手広くホテル事業を展開しています。これからのホテル事業を考えても、プラスに働くでしょう。」


「それはとても良縁ですわ。」

「候補はジェニーに絞って良さそうね。」


昭三どのの意見に、他の親族たちも賛同の声を挙げた。


「待ってください!私はかぐやさん以外と結婚するつもりはありません!」


春樹どのが立ちあがり、反論してくれたが、昭三どのが不敵に笑った。


「だが、ジェニーとも知らない仲では無いだろう。お付き合いしていたのは知っているぞ。」


え…?ジェニーとお付き合い?どいう事だ?

私の中で一気に不安が広がった。


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