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第1話・同棲生活開始

「かぐやさん…逢いたかったです。」

「私もだ…」


スイートルームに入り、早々ベッドになだれ込んだ。約三週間ぶりの逢瀬である。


「余裕が無いかもしれません。優しくできなかったらすみません…」

「気にすることは何もない。そなたのすべてを受け入れるぞ。」


私が春樹どのの頬に手を添えると、嬉しそうに微笑んだ後、すぐに深い口付けを落としてきた。



二人でベッドに横たわり身体の火照りも覚めた頃、春樹どのにある提案をした。


「同棲の件だが、私が春樹どのの邸宅へ行く事は反対されたのだ。こちらで能力を使うのは、春樹どの以外の人の目に晒しては駄目だと言われておるからな。」

「そうでしたね。」

「それ故、婚姻するまで、我が屋敷に春樹どのをお迎えしては如何かと提案されたのだが、どうであろうか。」

「ご迷惑で無ければ、お願いします。」

「大丈夫だ。爺やと婆やからそのように提案されたのだからな。」

「ふふ。お二人にも可愛がって頂けて嬉しいです。」


春樹どのは微笑んで私に口付けた。


「すぐには荷物の支度が出来ませんので、ゴールデンウィーク頃に引っ越しをさせて頂いても宜しいでしょうか。」

「分かった。爺やと婆やには伝えておく。」


婚姻までは屋敷にて私の世話を買って出てくれた爺やと婆やに、心の中で感謝した。しかし、婚姻後に屋敷をどうするか一度天界で話し合いをする必要があるな…



 春樹どのが仕事の日は、天界へ帰る日が続いた。

道場の事もあるが、婚姻後の屋敷の事や、爺やと婆やの事などを話し合う為でもあった。


「かぐや、そなたも弥蔵どのと同じ、帝へ直に仕える最も高貴な身分となったのだ。屋敷の一つでも持っておいた方が良いであろう。」

「ですが父上、爺やと婆やはいかがいたしましょうか。恐らく婚姻後は春樹どのの邸宅に住むようになるかと思います。屋敷の手入れの為に下界へ残るのは、二人が不憫です。」


母上からも屋敷を残すよう勧められた。


「婚姻後でも能力を使う為に、屋敷は残しておいた方が良いであろう。掃除などの手入れは、こちらから女中を交代で遣わすとしよう。」

「ならば下界でハウスキーパーという者を雇うことも可能ですので、こちらで手配いたしましょう。」

「だが、下界人を雇うとなると信用できる者が…」


そういえば、婆やから通帳というものを渡されたな。下界で使うお金が入っておるとか。

下界へ降りて皆に相談するとするか。



 ゴールデンウィークになり、春樹どのが段ボール三箱だけを持って、引っ越しをしてきた。


「荷物はそれだけか?」

「はい。必要な物があれば取りに帰れますし、とりあえず夏服だけを持って来ました。」


春樹どのの部屋は、私の部屋の隣となった。とはいえ、襖を挟んだだけ故、簡単に行き来することが出来る。着替えや持ち帰った仕事をするなどのプライベートを考えて、気持ちだけ部屋を分けたのだ。


そして、今後の屋敷について春樹どのと爺やと婆やも交えて話し合いをした。


「婚姻後も能力を使うのは屋敷が良いであろうとのことで、残すことを勧められたのだ。だが、掃除などをどうするかという問題が残っておる。丁度品や通帳とやらもあるし、信用できる者でないと難しいとのことだ。」


婆やが下界に残ると言ったが、それでは下界で骨を埋める事となる為、断った。


「かぐやさん、通帳を見せて頂いても宜しいですか?大金のようでしたら、よほどか信用できる人でないと難しいでしょう。」


春樹どのに言われ、通帳というものを見せた。


「え?ゼロしか並んでいませんが…」

「帝から荘園を与えられたのだが、私は管理できぬ故、すべてを父上が買い取ってくれたのだ。」

「私もこの記入のされ方は初めて見ましたが、小国の国家予算は超えているでしょうね。みなさんの言うとおり、屋敷に出入り出来る人は限定した方がいいかもしれません。」

「そうか…」


結局、婚姻後の屋敷には、婆やが結界をかけて春樹どの以外の下界人を寄せ付けぬようにし、満月の夜に婆やか女中が数時間だけ滞在することで、話しがまとまった。


「私からも一つ報告があります。私の家の庭に、かぐやさんと私の別邸を建てる許可を両親から貰いました。」

「それは、婚姻後の邸宅ということか?」

「はい。外観だけ本邸と揃えて欲しいと母から要望がありましたが、中は自由です。何かお部屋の希望はありますか?」

「茶を立てたり、琴を弾いたり、花を活ける時に使用する和室が一つ欲しい。それ以外は構わぬ。」

「分かりました。設計士さんに、そう伝えておきますね。」


婚姻後に屋敷に戻る時の為に、私専用の運転手も雇うと言っておった。


部屋に戻り、春樹どのと二人になった。


「後は親族会議の承認を貰うばかりですね。」

「そうだな。頑張って乗り越えようではないか。」

「ふふ。かぐやさんさえ傍に居て頂ければ大丈夫です。」


春樹どのがそっと、私の肩を抱き寄せた。


「一歩ずつですが着実に結婚への道が開けてきましたね。」


そう言いながら深く口付けてきた。


「おおかみのつがいは一生を添い遂げるそうです。私もおおかみになっていいですか?」

「ふふ。いつもどおりの春樹どのではないか。」


そっと布団に横たえられ、春樹どのの温かい腕の中でこれからも一緒に生きていける喜びを噛みしめた。


親族会議が波乱の幕開けとなるとは思いもせずに…



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