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第83話・秋人モデル引退フォト

 翌々日、秋人どのの撮影に同行した。カメラマンは以前、私と春樹どのを街で撮った鈴木どのであった。


「お?美男美女カップル久しぶりだね~♪」

「お久しぶりです。その節は素敵な特集をありがとうございました。」

「いやいや、っていうか、何だかあの時よりも二人の距離が自然じゃぁない?もしかして本当にカップルになったの?」

「はい、先日プロポーズを受けて貰いました。」

「そりゃおめでとう♪お幸せにね!」


これからは、このように色々な人達に祝福して貰えるようになるのだな。何となく、くすぐったい幸せを感じた。


「秋人くん、準備が出来ました~!」

「よろしくお願いします!」


スタッフさんの掛け声で、バスローブを着た秋人どのが挨拶をしながらスタジオへ入ってきた。

何やら話をしながらバスローブを脱ぐと、おお!という、どよめきが起こった。


「何があったのだ?」

「秋人の身体を見て下さい。かなり引き締めてきましたね。」

「…?」


う~ん…慣れて来たとはいえ、引き締められた身体に価値観を見い出せぬのは気のせいであろうか…


「秋人、本当に頑張ってたんだよ~♪無駄な筋肉を付けないよう、でも引き締めるって感じで!」


松乃どの、絶賛であるな。


「私も少し筋トレをしないといけませんね。」

「別に春樹どのはそのままで良いし、ふくよかであっても構わぬぞ。」

「ふふ。どんな私でも受け入れて頂けるのは嬉しいですが、鍛えておかないと、かぐやさんをお姫様抱っこ出来なくなりますからね。」


そ、そういう問題か…



 そして撮影が始まった。秋人どのは窓際でポーズを取ったり、素肌にジャケットを羽織ったり、ベッドで寝そべったり、カメラマンの鈴木どののリクエストどおりに動いておった。


「秋人、セクシ~♪」


松乃どの、大絶賛であるな。


「う~ん…何かもうちょっと色気出せないかな…」


カメラマンの鈴木どのが唸っておる。プロの目から見ると、まだ何かが足りぬようだ。ふと閃いたように、鈴木どのが松乃どのを指さした。


「ちょっとそこの女の子、顔は撮らないからモデルになってくれる?」

「え?私ですか?」

「そう!そこの黒髪の子は婚約者いるし、写るのは背中だけだから。よろしくね!」


「ちょ、ちょっと待って下さい!それって上半身裸って事ですか?」


秋人どのが焦って話の中に入ってきた。


「もちろんそうだよ。セクシーショットだしね。」

「それは駄目!絶対駄目!」

「何で秋人くんがそんなに反対するんだ?」

「僕の彼女だもん!他の人の目に晒すなんて絶対反対!」

「ふ~ん。なら丁度いいじゃん!いつもいちゃついてる感じでよろしくね!」

「だから!駄目!」

「仕方ない。だったら、今から女の子のモデルを手配するか…」


「わ、私、やります!」

「え?」


松乃どのの声に、皆が反応した。


「背中だけなら…他のモデルさんと仲良くしてる写真なんて撮られたくないし…」

「松乃ちゃん、本当にいいの?」

「うん…」

「分かった。」


秋人どのは、私達とカメラマンさん以外の殿方を、スタジオの外へ出す事を条件にした。


そして暫く経った後、バスローブを着込んだ松乃どのがスタジオへ入ってきた。


「じゃぁ、松乃ちゃんだっけ?秋人くんと向かい合わせで窓際に立って、秋人くんに手を添えてくれる?」


松乃どのがバスローブを脱ぐと、秋人どのの顔が真っ赤になり始めた。


「鈴木さん…ヤバいかも…」

「はは!やっぱポーズはいいや。いつもどおりに会話して!これはいい写真が撮れそうだ!」


秋人どのと松乃どのは何やら話しを始めたようだ。


「松乃ちゃん、前バリはしなかったの?」

「ちょっと恥ずかしいけど、秋人だけだし…」

「絶対に他の人に見せないようにしなきゃ!」


お!秋人どのがいきなり松乃どのをギュッ!と抱き締めた!


「松乃ちゃん、引退フォトが一緒で幸せかも♪」

「私も一緒に撮って貰えて嬉しいよ♪秋人の隣には私が居たいもん。他のモデルさんなんて嫌だよ。」

「やきもち焼いてくれるんだ♪」


うわっ!秋人どのが松乃どのにチュッ!と口付けした!


「何だか、見ておるこっちが恥ずかしくなるな…」

「知り合いの二人っていうのが何か…」


その間にも、シャッター音がカシャカシャ鳴っておる。


「いいね~!すごく自然だよ!次はベッドインしてみようか!」


何だか堪え切れなくなり、春樹どのと一緒にスタジオの外へ出た。


「ふう…何だか照れてしまったぞ。」

「そうですね。続きは写真で見せて頂きましょう。」


何となく黙って廊下のベンチに座り、撮影が終わるのを待った。


暫くして撮影が終了したらしく、バスローブを羽織った二人が出て来た。


「あ!いたいた♪鈴木さんが春樹たちも婚約記念に撮ってくれるってさ♪」

「え?無理だ!無理だ!」


「私も反対だな。」

「そう言うと思って、彼シャツで交渉しといたよ♪春樹は前をはだけるけどね!」

「それくらいならいいか…」


彼シャツ…って何だ?


あれよあれよという間に、殿方用の白いシャツを着せられ、スタジオに入らされた。中は見えぬようにぴったりとした短パンを履いておるので、何とか耐えきれそうだ。


続いてスタジオに入ってきた春樹どのは、デニムに白いシャツを羽織っただけで、ボタンを留めておらぬ格好であった。


秋人どのの時には何とも思わなかったが、春樹どのであるとシャツからチラッと見える素肌と引き締まった身体が、何とも言えぬ色気を出しておるように感じてしまう。


だ、駄目かも…


色気に当てられて倒れそうな程の眩暈を抑えながらも、何とか撮影に臨んだ。撮影中は春樹どのが色々と話し掛けてくれたが、そっけない返事ばかりしてしまった。


「結婚したら、寝間着用にお揃いの白シャツを買いましょうか。かぐやさん、とってもセクシーですよ。」

「い、いや…私の心臓がもたぬ故、それは遠慮しておく…」

「ふふ。それは残念です。」


やっとの思いで撮影を終えた。秋人どの達は残って写真のチェックをするそうなので、春樹どのと二人で一足先にスタジオを後にした。



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