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第79話・正式なプロポーズ

 街がハロウィンの飾り付けから一夜にしてクリスマスの飾り付けへと変わった頃、久しぶりに天界より手紙を貰った。


やよい姉様が無事に赤子をお産みになったそうだ。今回は(おのこ)で、義兄上の名を一文字入れて、史弥ふみやと名付けられたそうだ。父上と母上は跡取りが産まれたと、大層喜んでおると書いてあった。


 早速、春樹どのと一緒にお祝いを買いに出掛けた時、クリスマスにホテルを予約したと言われた。


「みんなで行った、ジャーマニーランド傍のホテルを覚えていますか?」

「覚えておるぞ。初めての遊園地であったからな。」

「あの時かぐやさんはかなりはしゃいでいましたね。」

「そ、そんな事は忘れてくれ!初めてであったし、仕方ないであろう!」

「ふふ、失礼しました。同じ部屋をキープしましたので、一緒に行きましょうね。」

「分かった。予定を空けておく。」


久しぶりの遊園地か。楽しみであるが、その前にプレゼントは何にしようか…

そんな事を考えながら、クリスマスまで指折り数えて過した。



 クリスマスイブの日、昼前にジャーマニーランドへ着いた。


「やはり、入口のゲートを潜っただけで、わくわくしてしまうな!」

「ふふ。まずはホテルにチェックインしてから、楽しみましょう。」


早速ホテルでチェックインし、前回と同じ部屋に通された。


「何だか懐かしい感じがするな。」

「前回はみんなと一緒でしたからね。今回はパレードと花火は部屋から見ませんか?ここからの眺めはとてもいいそうですよ。」

「分かった。前回とは違う楽しみ方であるな。」

「ふふ。部屋の照明を落としたら綺麗に見えるらしいのですが、楽しむ時間があるかどうかは微妙ですね。」


ま、また意味深な…


「そ、そうだ!」


バッグからプレゼントを取り出した。


「これ、クリスマスプレゼントだ。」

「ありがとうございます。開けてみても宜しいですか?」

「ああ。気に入って貰えると良いのだが。」


春樹どのは包装紙を丁寧に開けて、中身を取り出した。


「財布ですね!そういえば、人から頂いた財布は運が上がると聞いた事があります。早速使わせて頂きます!」

「ふふ。私もそれを聞いたので、財布にしたのだ。喜んで貰えて良かった。」


そして、春樹どのも持っておったショップバッグを私に渡してきた。


「私からのクリスマスプレゼントです。」

「ありがとう。ずいぶん大きいものだな。開けても良いか?」

「はい、どうぞ。」


袋から包みを開けると、以前、通りかかった時に私が見ておったバッグが入っておった。


「確か、これは後で行ったら売り切れだった筈…」

「そうですね。ちょっとフランスから取り寄せました。」

「え?わざわざ異国から取り寄せたのか?」

「かぐやさんが目に留める物ってほとんどありませんからね。あまり物欲がありませんし、珍しくて覚えていたのです。」

「ありがとう。覚えておってくれた事が嬉しいぞ。」



 そして早速、遊園地へ繰り出して、ジェットコースターなどの乗り物を楽しんだ。

中でも、動く椅子に座る3Dシアターというものは、私のお気に入りだ。きゃ~♪と、語尾に音符が付く楽しい叫び声を上げながら過ごした。



 夕方になり、早目の食事を頂いた後に外へ出ると、すでに暗くなっておった。


「流石にこの時期は暗くなるのが早いな。」

「そうですね。イルミネーションも綺麗に点灯し始めましたし、観覧車にでも乗って見ましょうか。」


無言で頷いて、観覧車へ向かった。やはりジンクスを実践してみるのであろうか…

別に口付けなんぞ今更とは思うが、それでもドキドキしてしまうな…


観覧車の籠へ乗り込んですぐ、春樹どのから目を閉じるように言われ、そっと瞼を閉じた。


…え?


左手をそっと持ち上げられ、何やら冷たいものを感じた。


「かぐやさん、目を開けて下さい。」


そう促されて目を開けると、左手の薬指に、見事な大粒の紅玉の周りに金剛石が散りばめられた美しい指輪が輝いておった。これをクリスマスプレゼントという程、私も鈍くは無い。


春樹どのが私の両手を取り、まっすぐ目を合わせた。




「かぐやさん。私の傍で、私と共に生きて下さい。」


「…」


「正式に申し込みます。私と結婚して下さい。」




…分かっておった。いずれは婚姻する関係と分かっておった。だが、改めて言われると、込み上げて来るものを抑えきれなかった。


「春樹どの、うれし…こちらこ…」


声が震え、視界も滲んできた。


「グスッ、すまぬ…こんなところで…」


急いで涙を拭くと、チュッ!と軽い口付けが下りてきて、思わず涙も止まってしまった。


「は、春樹どの!まだ頂上ではないぞ!」

「ふふ。今のは前回出来なかった分のキスです。」


前回って、皆で来た時ではないか…


「そしてこれが永遠の愛を誓うキスです。かぐやさん、愛しています…」


私を優しく抱き締め、愛しむような深い口付けが落とされた。



 観覧車から下りて歩き出した時、改めて返事を春樹どのに伝えようと、立ち止まって向き直った。


「かぐやさん、どうされました?」

「春樹どの…」

「何ですか?」

「はっきりと言えなかったので、もう一度言うぞ。」

「…?」

「私も春樹どのの傍で一緒に歳を重ねていきたい。これから先、ずっと…」


「…かぐやさん。」


春樹どのは、感極まったようにギュッ!と抱き締めてきた。


「は、春樹どの!」

「…」

「春樹どの?」

「もう、嬉しくてどうしたらいいか分からない…」


そっと、春樹どのの背中に手を回した。時々愛しむように私の頭を撫でる春樹どのの手から、愛していると伝わってくるようであった。


愛している。私の気持ちも伝わりますように…


打ち上がる花火を背に、腕の中に幸せを抱き込むよう、いつまでも気持ちを伝え合った。



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