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第73話・同棲?同居?

 休憩になり、春樹どのの傍へ行った。

ん?何やら表情が暗い気がするな…


「春樹どの、何かあったのか?」

「え?」

「何か心配事でもあるのか?」

「いえ…何もありませんよ。心配して下さってありがとうございます。」


にっこりといつもの笑顔に戻った。気にし過ぎであったかな。

そして稽古が終わり、屋敷へ戻った。


ところが、明日から夏休みという日、春樹どのが思いがけぬ事を言い出した。


「夏休みの間、かぐやさんのお屋敷に私も泊まらせて下さい。」

「え?いきなりどうしたのだ?部屋は余っておるので、構わぬが…」

「ありがとうございます。では今日、帰宅してから荷造りをしますね。」


春樹どのは早々にお昼御飯を食べて、足取り軽く去って行った。その姿を見た秋人どのが、不思議そうに私へ尋ねてきた。


「春樹、どうしたの?何かあった?」

「秋人どの、それが私にもさっぱり…」


すると、冬馬どのが私の代わりに答えた。


「今、かぐやの屋敷に二人が住んでるだろ?それでじゃぁないか?」

「え?かぐやちゃんの家に誰か住んでるの?」


秋人どのがびっくりして、再度私へ尋ねてきた。


「冬馬どのの言うとおり、今、義兄上と柳本どのという二人が空手の稽古の為、我が屋敷に住んでおるのだ。」


納得がいったように、松乃どのが頷いた。


「それでか。やきもち焼くなんて、春樹も可愛いところあるじゃん♪」

「松乃どの、今更やきもちなんて必要ないであろう。からかうでない。」

「そう思ってるのは、かぐやちゃんだけだと思うよ♪」


そ、そうなのか?


「あ~!でもせっかくの同棲でも、みんなが居たら夜が楽しめないね♪」

「秋人どの、何を言っておるのだ。もちろん寝所は別々だ。」


皆は、春樹が可哀想~!と言っておるが、皆がおる屋敷で秘め事なんて、冗談ではない!そこは春樹どのにも納得してもらおう。



 翌日になり、春樹どのはスーツケースを持って屋敷へやって来た。


「突然お世話になり申し訳ありませんが、夏休みの間、よろしくお願いいたします。」


菓子折りを取り出し、一緒に出迎えた爺やに頭を下げて挨拶をしておった。


「構わぬぞ。一人増えようが大差は無い。寝所はかぐや様のお部屋で良いか?」


へ?何故皆が当然のように言うのだ?


「いえ、毎晩抑えが効かなくなりますので、別のお部屋で構いません。」

「その気持ちも分かるな。では、違う部屋を用意しよう。」


爺やと春樹どのが意味深な笑みを浮かべながら、意志の疎通を図っておる…見なかったことにしよう。


春樹どのは、お父様から派遣された経営と管理職に関する家庭教師が来るとのことで、昼間は邸宅へ戻り、夕方には屋敷へ来るという生活を始めた。


----------


 かぐやさんのお屋敷でお世話になってから数日後、朝起きて縁側へ出ると、中庭で柳本さんが空手の自主稽古をしているのが見えた。


「おはようございます。」

「…あぁ。」


やっぱり、敵視されている気がする…そこへかぐやさんがやって来た。


「二人とも、おはよう。」

「かぐやさん、おはようございます。」


軽く挨拶をすると、柳本さんも稽古を中断して、駆け寄って来た。


「かぐや様、おはようございます。お時間が宜しければ稽古を見て頂けないでしょうか。」

「分かった。」


かぐやさんは中庭へ下りて、柳本さんへ空手の指導を始めた。


「ここの腕の高さはもう少し上だな。」

「はい!」


空手の指導だと分かってはいるけど、腕が触れてしまう光景に、もやもやとしてしまう…


「春樹どの、おはよう。」


いつの間にか、私の後ろに義兄さんが立っていた。


「義兄さん、おはようございます。」

「春樹どの、そなたは婚約の儀まで行っておるのだ。何も心配はいらぬぞ。」


義兄さんはふっと笑って居間へ行かれた。

見透かされていたか…


そうだ。私達は結婚の約束をしているんだ。もう少し気持ちに余裕を持たないと。

そう自分に言い聞かせて、朝食を頂く為、義兄さんに続いて居間へ行った。



 ある晩、お風呂を頂いた後に部屋へ戻ろうとすると、縁側で義兄さんと柳本さんが酒を酌み交わしながら話をしているのが聞こえてきた。


「雅、お前かぐやどののことを諦めてはおらぬのか?」

「…私はかぐや様の幸せを願っております。」

「そうか。」


黙ってお酒を酌み交わす音が聞こえる。


「そういえば、かぐやどのは天界では不細工で有名であっただろう。何故求婚したのだ?」

「足利様は不細工と思いますか?」

「いや、特には思わぬな。」

「私も思いません。かぐや様を不細工と罵る輩は、下界の事を知ろうとせぬ閉鎖的な者達です。帝の所用で下界に降りる機会がある私にとって、容姿はまったく関係ありません。」

「なるほどな。」


「足利様は、何故あのような下界人との婚姻に反対されなかったのですか?もやしのように線が細いヤサ男であり、かぐや様をお護り出来るとは到底思えませんが。」

「はは。確かに腕っぷしは強そうに見えぬな。だが、かぐやどのが選んだ者だ。何か良いところがあるのであろう。」


柳本さんは納得いっていないようだったけど、それ以上の事を言わなかったようだ。二人に見つからないように、黙ってお風呂場へ戻った。


お風呂場の入口の壁にもたれかかって、大きくため息をついた。


「はぁ…」


やっぱりというか、予想どおりというか…

複雑な気持ちで、夜空に輝く三日月を見上げた。


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