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第71話・ファッションホテル初体験

「かぐやさん、ちょっとあそこで身体を温めましょう。」

「へ?どうしたのだ?」

「身体を冷やしたままでは風邪をひいてしまいます。ちょっとだけ休憩しましょう。」

「分かった。」


ちょっとだけ休憩って、このような山ばかりの所にそのようなところあるのか?

不思議に思いながらも返事をすると、車は道路沿いの一軒の建物へ入っていった。


「ん?駐車場の入口にカーテンなんぞあるのだな。」

「そうですね。私も初めて入ってみました。」


よく分からぬうちに建物へ入った。何やら部屋の写真が沢山並んでおる。


「これは一体何だ?」

「ここで休憩する部屋を選ぶみたいですね。」

「そのような珍しいところもあるのだな。」


感心しながら選んだ部屋へ入った。だが、部屋の中へ入って絶句であった!


な、何だ!この艶めかしい照明は!しかも、部屋の真ん中に大きな寝所がドンと構えておるではないか!


部屋の扉を開けたまま固まっておると、春樹どのが笑っておる。


「そんなにびっくりしないでください。」

「え?え?びっくりするであろう!しかも、風呂がガラス貼りになっておるぞ!丸見えではないか!」

「ふふ。そういうところなのです。私も話にしか聞いたことは無かったですけどね。」

「そ、そうなのか…」


「とりあえず濡れた服はエアコンの近くに干しておけば、すぐに乾くでしょう。その間にお風呂で温まりましょう。」

「い、いや…風呂は…」

「濡れたままでは身体が冷えますよ。それとも一緒に入りますか?」

「…は?」

「ふふ。なるべく見ないように頑張りますから、風邪をひく前に、温まってきて下さい。」

「わ、分かった!」


備え付けのバスローブを手に取り、ダッシュで脱衣所へ掛け込んだ。春樹どのは見ぬようにしてくれておるようであるが、どうにも落ち着かぬ。少し温まった程度でさっと風呂から出た。


交代で春樹どのがシャワーを浴びにいった。しかし、私は備え付けのバスローブらしき物を着て、固まっておった。


「な、何故こんなにも短いのだ…」


風呂場から出て来た春樹どのが不思議そうにこちらを見ておる。


「どうしましたか?」

「い、いや…何でもない!そ、そうだ!乾くまでの間、テレビでも見るか!」


さっとリモコンに手を伸ばし、電源を入れた。


『あ~ん♪』


え?!

急いで電源を切った。


「な、何だ?今のは…」

「ふふ。恐らくですが、そのようなビデオがずっと流れているのでしょうね。」


流石にここまで来ると理解できた。入口には休憩&宿泊と書いてあった。この建物は人目を忍んでそういう事をする建物なのだ。


き、気まずい…


「そ、そうだ!何か飲むか!」


冷蔵庫らしき所へ行った。簡単な自動販売機のようなものであった。


「ん?やけに変わったものが沢山入っておるな。メニュー表が…」

「あっ!かぐやさん!そこは恐らく大人の…」


春樹どのが言いかけた時には、すでにメニュー表を開いた後であった。


「こ、これは…」


そのまま固まってしまった。


「ふふ。だから止めようと思いましたのに。」


後ろからひょいと春樹どのがメニュー表を取り上げ、片付けてくれた。そして、後ろから軽く抱き締めてきた。


「は、春樹どの…あの…」

「大丈夫ですよ。ここでは何もしませんから。」

「そ、そうか…」

「ご希望があれば、いつでも叶えますが。」

「そ、そのような希望など無い!」

「ふふ。そんなに真っ赤になって否定されても、説得力ありませんよ。」


春樹どのの正面を向かされ、額にチュッ!と軽い口付けをされた。


「それに、休憩なんて短い時間では、私の愛情は伝えきれませんから。」


い、意味深だ…


その後、ドライヤーを使って服を乾かし、早目に建物を出た。


----------


 話には聞いていたが、色々と物珍しいものが沢山ある部屋だったな。


それにしても、かぐやさんの狼狽ぶりがたまらなく面白かった。真っ赤になったかぐやさんがあまりにも可愛くて抱きたい気分になったが、ちょっと古ぼけた部屋では可哀想だ。


秋人が最近は高級感重視の綺麗な部屋もあると言っていたし、今度、良さそうなファッションホテルでも探してみようかな。


ふふ。かぐやさんの反応が楽しみだ。


----------


 夕方には雨も止んでおった。建物を出て、再び車で走り出した時であった。


「思い出した!」


いきなり春樹どのが叫んだかと思ったら、車を道端に停めた。


「ん?どうしたのだ?」

「爺やさんと婆やさんに、今日は帰らないと連絡して頂けますか?」

「え?」


春樹どのはシートベルトを外し、助手席の私に覆いかぶさってきた。

か、顔の距離が近い!


「かぐやさんと一緒に朝を迎えたい…」


そう言いながら、深い口付けを落としてきた。


「ん…」


春樹どのはずるいのだ。まるで私を誘うかのような艶めかしい口付けは、拒む理由をいとも簡単に消し去ってしまう。

そっと唇が離され、掠れた声で囁いてきた。


「…返事は?」


顔に熱を感じながらも黙って頷くと、春樹どのは微笑みながら口付け、また車を走らせた。


秋人どのお勧めの場所を思い出したと言って連れてこられたホテルは、先程と似たような造りではあるが、春樹どのの邸宅に似たような洋風で、綺麗さがあった。


泡のお風呂というものを初体験させられ、ぬるめのお湯にて二人で長風呂となったのは、言うまでもない…


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