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第12話・二人三脚って何だ?

 夏休み明け、体育祭とやらの組み分けが行われた。

体育祭って何だ?スマホで調べてみるか…


休憩時間になると、皆が集まってきた。


「かぐやちゃん何組?」

「私は赤だ。」

「え~!離れちゃった!」


小梅どのと松乃どのは白組のようだ。


「俺も白だ。」

「僕もだよ~!かぐやちゃんと離れて寂しいな!」


冬馬どのと秋人どのも違う組らしい。


「ふふ。私とかぐやさんだけ赤組ですね。」

「春樹は赤か。」

「申し訳ありませんが、一歩リードです。」


不敵に笑う春樹どのに、冬馬どのと秋人どのが反応した。


「おまえ、抜け駆けは禁止だぞ!」

「そうだそうだ!重要任務を忘れるな!」


「重要任務って何かあるのか?」


小梅どのと松乃どのに聞いてみたが、さぁ?と首をかしげておった。この二人に分からぬのなら、私にも分からぬ話であろう。


この後は、色別に別れて出場する競技を決めた。


「では、次に二人三脚に出場する選手を決めたいと思います。」

「はい!私とかぐやさんが立候補します!」


春樹どのが手を挙げた。


「春樹どの、二人三脚って何だ?」

「私とかぐやさんにぴったりな種目ですよ。後で実践してみましょう。」

「分かった。よろしく頼む。」



 放課後になり、校庭で春樹どのと二人三脚の練習をすることとなったが、何故か紐を取り出し始めた。


「その紐は何をするのだ?」

「二人三脚とは、文字どおり二人で三本の脚ってことなんです。なので、こうやって足を結ぶのです。」

「それでは走り難いであろう。」

「走りにくい状態で、いかに早くゴール出来るかを競うものですよ。」

「そんなものか…」


春樹どのは器用に互いの足を結びつけた。と、思ったらいきなり私の肩に手を回してきたではないか!


「おい!この手は何だ!」

「肩を組んで一緒に走るのです。かぐやさんの腕は私の腰に回して下さいね。」


こんなに密着するのが運動なのか?下界の運動は不可解だ…

しかし、出場すると決まった限り、やむおえまい。おずおずと春樹どのの腰に手を回した。


「しっかり捕まえておかないと一心同体になれませんよ。」

「あ、あぁ…」


ふと横を見ると、春樹どのの顔が私の顔のすぐ横にあった!

うわっ!真近で見てしまったぞ!

思わず顔を背けたら、くすっと笑われてしまった。


「かぐやさん、私ではなくしっかりと前を向いて下さいね。」

「わ、分かった…」


そうだ。前だけを向いて走れば大丈夫だ。無心…無心…目を閉じて深く一呼吸した。


「じゃぁ、行きますよ。歩幅は私が合わせますので、かぐやさんはリズムに合わせて走ってください。」

「承知した。」

「せ~の!1、2、1、2…」

「お?中々走れるものだな。って、うわっ!」


ズトーン!!転んでしまった…


「かぐやさん、大丈夫ですか?何処も怪我をしていないですか?」

「大丈夫だ。」

「良かったです。走っている時はリズムだけを意識して下さいね。」

「すまぬ。巻き添えで春樹どのも転んでしまったな。」

「私のことは気にしないでください。かぐやさんに怪我がなければ問題ありませんよ。」


立ち上がったところで、冬馬どのが私を呼びにきた。


「かぐや、そろそろ部活の時間だぞ。」

「もうそんな時間か。では春樹どの、ここで失礼する。」

「部活頑張ってくださいね。」


クラブに行くまでの間、冬馬どのが気のせいか機嫌悪そうだ。

まぁ虫の居所が悪いことなんて、誰にでもあることであろう。


----------


K.NET男三人のグループチャット



TOMA:「はるき~!どういう事だ!」

あきぴ~♪:「どうした冬馬?何か怒ってるの?」

TOMA:「春樹がかぐやといちゃついてた!」

あきぴ~♪:「ガーン! 」

ハル:「誤解するな。転んだところを起き上がらせていただけだ。」

あきぴ~♪:「いやいや、一歩リードとか言ってたし、信用できないな~!」

ハル:「二人三脚なら合理的に男性恐怖症を克服出来るかと思ってな。」

TOMA:「手を出すなよ!」

ハル:「たしかかぐやさんの家はキスをしたら即結婚だったよな。手出し出来る訳ないだろう。」

TOMA:「…」

あきぴ~♪:「それもそっか♪」

ハル:「まぁしばらくの間は私に任せてくれないか。」

あきぴ~♪:「分かった♪」

TOMA:「くれぐれも手を出すなよ!」

ハル:「大丈夫だよ。私もまだ高校生だ。結婚なんて考えていないさ。」


----------


 次の日も昼休憩を利用して、二人三脚の練習をした。


「1、2、1、2…」

「かぐやさん、かなり早く走れるようになりましたね。」

「そうだな。やる限りは一番の称号が良いしな。」

「ふふ。この競技は二人の息がぴったりと合っていれば、大丈夫ですよ。」



 『見てみて、会長とかぐや様よ!美男美女の二人ね~♪』

 『ホントホント、かぐや様が相手なら仕方ないわね。』

 『うわっ!生徒会長にかぐや様をとられた!』

 『くやし~!』



気のせいか、通り過ぎる皆が指を差してこっちを見ておるようだ。

不細工が揃っておることくらい、分かっておるわ!


「かぐやさん、まわりの目は気にしないで、私たちは楽しんで競技しましょう。」

「そうだな。」


放課後もクラブの前に練習することになり、春樹どのと一緒に教室を出ると、桜小路どのが廊下で待っておった。


「春樹さま♪私も二人三脚に出るのですわ!練習に付き合って頂けませんか?」


おお!また声と顔が変わっておる!なかなか興味深い現象だ。


「桜小路さん、練習ならパートナーとした方がいいですよ。」

「だってあの男、全然タイミングが合わないのですわ。まったく練習にならなくて困ってしまいますの。」

「なら、余計にその方とされた方が宜しいではないですか。私はかぐやさんと練習がありますので。」


桜小路どのは、キッ!と私を睨み、何かの視線を送り始めた。相手によって声や顔を変えるだけでなく、目でも会話が出来るのか?大したものだ。


「竹野塚さんは、今日は練習をされないそうよ♪」

「いや、一言も言ってないが…」


またしても、キッ!と睨まれた。桜小路どのと私では目での会話が出来ぬようだ…


「私達は練習がありますので、これで失礼しますね。」


春樹どのがさっさと歩きだした。


桜小路どのの興味深い現象は、何故か春樹どのが一緒にいる時のみなのだ。続けて去ろうとしたら、桜小路どのに腕を掴まれた。


「ちょっと!何故私に譲らないのよ!」


おお!またしても声が変わっておる。大したものだ。しかし、言っておる意味がさっぱり理解できぬ。


「何の事だ?」

「二人三脚の練習よ!私と春樹さまの仲を邪魔するつもり?」

「仲と言っても、桜小路どのとは違う組であろう。」

「そんなもの私達には関係ないわ!」

「いや、大いに関係ある気がするが…」

「私のお祖父様は学園の理事長よ!」

「ん?それは何か関係あるのか?」

「もう!イラつく人ね!春樹さまは諦めなさい!あなたに渡さないわ!」

「そなたの言っている意味がさっぱり分からぬ。それに渡すとか渡さないとか、春樹どのは物ではないぞ。」

「そんなこと分かっているわよ!」

「そうか。理解できなくてすまないな。」


桜小路どのと別れ、春樹どのを追いかけた。下駄箱側の廊下から春樹どのが引き返してきたようで、すぐに合流できた。


「先に行ってしまってすみません。桜小路さんが何か言って来ましたか?」

「何か言っておったが意味が分からぬので、理解できなくてすまないと返答しておいたぞ。」


すると春樹どのが笑い始めた。


「ふふ!やっぱりかぐやさんは最高ですね!」

「何が最高なんだ?」

「桜小路さんはこの学園の理事長の孫なので、大抵の人は何があっても逆らわないのです。ですが、かぐやさんは逆らうどころか意味が分からないと言ってのける、最高の返しです!」


何故か褒めてもらっておるようだ。素直に受け取っておこう。


この日も冬馬どのがクラブの迎えに来るまで練習をした。



 体育祭の競技は他に、徒競争なるただ走るだけの競技と、フォークダンスという男女が踊る種目があった。

体育の時間に徒競争の練習をした。走るだけなのに何故練習が必要なのだ?

普通に走ったが、余裕で一位であった。


走り終わったところで、道端先生に何やら頼まれた。


「竹野塚さん、足が速いのね!リレー選手もお願いできるかしら?」

「リレーとは、走るだけなのですか?」

「六人でバトンを渡しながら順番に走るのよ。」

「ならば受けましょう。」

「じゃぁ赤組の二年生女子代表でよろしくね!」


出場する競技が増えた。まぁ、走るだけなら構わぬであろう。他には白組の代表で冬馬どの、赤組の代表で春樹どのが頼まれておった。

続けてフォークダンスの練習であるが、これが私にとっては鬼門であった。舞とは違い、中々修得出来ずにおった。


「かぐやちゃんフォークダンスって初めて?テンカイでは無かったの?」

「天界では踊りといえば、舞くらいなものだ。このように男女が一緒に踊るものはない。」

「へぇ~。かぐやちゃんも舞をするの?」

「天界の貴族のおなごは皆が舞える。」


だが、これは舞ではなくフォークダンスだ。特にスキップとやらが全く出来ぬ。まさかこんなもので手こずるとは…


スキップも習得できないまま、体育祭当日となった。



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