第67話・結婚への険しい道
冬馬どのと小梅どのが何かの決断を出したらしい。皆で呼び出されたカフェにて待っておった。
「よう。みんな心配かけたな。」
「冬馬どの、小梅どの、待っておったぞ。」
二人は皆の向かい側へ並んで座った。お互いが少し顔を見合わせて、冬馬どのが口を開いた。
「俺達、結婚することにした。」
おお!
「おめでと~♪」
「良かったな!」
「やったじゃん♪」
「おめでとうなのだ!」
「だけど、まだ学生だし、金銭面で色々と苦しいこともある。結婚式も新婚旅行も後回しなんだけど、とりあえずこの後お互いの両親に挨拶をして、入籍だけでもと思ってるんだ。」
「一緒には住まないのか?」
「どっちかの家に住めればいいけど、厳しいだろう。就職するまでは通い婚って感じになるかもな。」
「しかし、冬馬が一番にゴールインとはな。」
「まぁな。俺は春樹が一番だと思ってたよ。」
「私もそう思ってたよ。先を越されてしまったな。」
「じゃ、呼び出しておいて悪いけど、まずは俺の親に話を付けてくるから、また大学でな!」
「分かった。頑張れよ!」
「じゃぁ行こうか。」
冬馬どのは小梅どのの椅子を引いて、今までにないくらいの気遣いを見せておった。
「ふふ。冬馬どの、人が変わったみたいであるな。」
「そうですね。急に親ってことで動揺していたみたいですが、収まるところに収まって良かったです。」
「で、お祝いどうする?」
「もちろんアレで決まりでしょ♪」
「ん?秋人どの、アレとは何だ?」
「もちろん、サプライズ結婚式♪」
「おお!そういえば、後回しにすると言っておったな!」
「新婚旅行は小梅ちゃんの身体を考えたら無理しない方がいいしね♪みんなで結婚式をプレゼントってどう?」
「もちろん異論は無いよ。会場の手配なら任せてくれ。」
「んじゃ、その辺は春樹に任せるね♪」
帰り、残りの4人で本屋に立ち寄り、結婚式の本を読み漁った。そして当面のごまかし用プレゼントとして、『初めてのパパの心得』と『ママになるための本』という二冊を買い、二人に渡すことになった。
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カフェを出て、両方の親に連絡をしたが、すぐには無理ということで、週末の土曜日は俺の家、日曜日は小梅の家へ行くことになった。
しかし…そこまで反対されるとは考えてもいなかった。
土曜日、親父の車を借りて、小梅を迎えに行った。
車中、小梅はかなり緊張していたみたいだ。
「大丈夫か?気分悪くないか?」
「…うん、大丈夫。ちょっと緊張しちゃって。」
「俺の家は、ちょっとがさつなだけだ。気にするな。」
そうは言っても、いきなり結婚だもんな。気にするよな…
俺の家の前に着き、車を停めて玄関に入った。両親が揃って出迎えだ。
「俺の彼女、小梅さん。同じ大学の教育学部なんだ。」
「は、初めまして。有栖川小梅といいます。」
「え?冬馬ってこんな彼女さんいたの?まったく気付かなかった!」
「まあ、入りなさい。」
ふう…とりあえず第一関門突破だ。
「で、話ってなぁに?いきなり結婚じゃぁないよね?」
リビングでお茶を出しながら、おふくろに牽制された。
「実は…子供が出来た。」
…
「えぇ~!!」
「お、お前!よそ様のお嬢さんに何てことを!」
やっぱそうなるよな…
「で、結婚したいんだけど…」
「結婚って、教育実習もあるでしょ?どうするの?」
小梅がおずおずと説明をした。
「春の教育実習は秋にも振り替える事が出来るので、何とかなりそうなんです。予定日も夏休みなので、休学もしなくて済みそうです。」
「で、就職するまでは一緒には住めないんだけど、入籍だけでも許して欲しいんだ。」
「許すも何も、小梅さんのご両親は何て?」
「小梅のところは明日、挨拶に行くことにしてるよ。」
「そう、分かったわ。はぁ、忙しくなるわね。」
「悪いな。」
「悪いと思ってるんなら、少しは自重しなさい!まだ学生のくせに!」
「…はい。」
俺の親は何とかなった。まぁ想定内の反応かな。
次の日、小梅の家へ行った。玄関へ出てきたお父さんとお母さんに挨拶をした。
「初めまして、金城冬馬といいます。この度は突然のことで申し訳ありませんでした。」
深々と頭を下げたが、怒鳴り声が聞こえた!
「出ていけ!お前の顔なんて見たくもない!」
ガン!
いきなり何かを投げられてしまった!
「お父さん!冬馬くんに何てことをするのよ!」
「煩い!学生のくせに子供なんか作ってどういうつもりだ!結婚なんて許せる訳ないだろ!明日にでも病院へ行って、子供は堕ろせ!」
「嫌よ!絶対に産むから!」
「小梅!お前もお前だ!いいかげんにしろ!」
咄嗟に土間で土下座をして頭を下げた。
「本当に申し訳ありませんでした!ですが、小梅さんとお腹の子は大事にしていきたいと思っています!どうか結婚を許して下さい!」
「働いていない癖に、どうやって養っていくんだ!親のすねをかじって好き放題に遊んで、挙句の果てにこのザマか!」
「本当に申し訳ありません!」
小梅も涙ながらに訴えた。
「お父さん、やめてよ!二人で決めたことなの!」
「二人で生きていけない癖に、えらそうな口を聞くな!結婚なんて絶対に許さないからな!今後一切、その顔を見せるな!明日には引っ張ってでも病院へ連れて行くからな!」
そう言い捨てて、お父さんは家の中へ入っていってしまった。続いてお母さんも家の中へ入って行き、俺と小梅が残された。
はぁ…ため息をついて、立ち上がった。反対される事があっても、取り付く島も無い程とは…
「ごめんね、冬馬くん。」
「…いいや、大丈夫だ。仕方ないと思うよ。」
「でも…」
ここで動揺を見せたら小梅が不安になるな…
にっこりと笑顔を作って、小梅の頭にポン!と手を乗せた。
「また出直してくるから。」
「私もお父さんを説得してみるから。」
「無理はするなよ。」
こうして、初めての顔合わせは最悪に終わった。
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