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第10話・お酒にはご用心!

 「夏だ!海だ!海水浴だ~♪」


小梅どのと松乃どのがはしゃいでおる。

私はというと、更衣室の出口で固まって動けなくなっておった。


「な、何だ!これは!下着同然ではないか!!」


小梅どのから借りた水着とやらは最低限しか身体を隠す面積がなく、ほとんど裸のような状態であった。

しかも、皆同じような格好である。


「ビキニなんだからこんなものだよ!」

「いやいや、ほとんど裸であろう!」

「そんなこと言ってたら泳げないよ!ささ!行こう♪」


二人に手を掴まれ、不細工三人衆の前に引っ張り出された。


「や、やはり私は…」


踵を返そうとすると、後ろからふわっと何かをかけられた。


「それを着ておけ。」


冬馬どのが私の肩に服を掛けてくれた。


「すまぬ…」

「いいって。そのまま泳いで濡らしても構わないから。」


「え~!かぐやちゃんの水着姿が見れないじゃん!」


思わずキッ!と睨むと、秋人どのは笑いながら舌を出しておった。

何とか裸同然の姿は免れたが、服の前側を閉めてもまだ落ち着かぬ。泳ぎに行こうよ!と誘われたが、荷物番をしておると言って断った。



 シートの上で一人座っておると、誰かが囲むように座ってきた。


「ねぇねぇ。お姉さん一人?寂しいね~♪」

「俺達と一緒に遊ばない?」

「何なら何処かへ行ってもいいよ♪」


何だ?この浅黒く日に焼けて、黒と茶色が混ざった髪の毛、軽薄さがにじみ出る者達は!

断ろうとすると、一人が肩に手をまわしてきた。


「何をする!無礼者!」

「無礼者だって~!」

「お姉さん面白いね♪」


こやつらは盗人かもしれぬし、ここで立ち上がると皆の荷物が守れぬではないか!多勢での攻撃とは卑怯な!


「お前ら、何をしている!」


声がした方を見ると、春樹どのが駆け寄ってきておる。


「何だ。男連れか…」


何故か蜘蛛の子を散らすようにいなくなった。


「かぐやさん、大丈夫でしたか?」

「問題はないが、何故か下品な奴らにからまれた。」

「それはナンパですね。」

「ナンパ?」

「気を付けて下さいね。かぐやさん目立ちますから。」


よく分からぬが、不細工すぎて目立つということであろう。


「すまぬ…」

「別にかぐやさんが悪い訳ではありませんよ。」


確かによく見ておると、通り過ぎる皆が私に視線を寄こしておるようだ。

はぁ…そこまで目立つのか…晴れた気持ちの良い海岸で一人ため息をついた。


暫くすると、秋人どのが帰ってきた。


「かぐやちゃん、飲み物ちょ~だい♪」

「ここにあるぞ。」

「さんきゅ~♪」

「もう泳がないのか?」

「かぐやちゃんが心配で切り上げて来ちゃった♪」


はぁ…秋人どのにも心配を掛けておるのか…


「すまないな…」

「え?かぐやちゃんが謝ることなんか何もないよ~♪まぁ、海に出た方がナンパされずに済むかもね。」


泳ぐ方が、ナンパという因縁は付けられずに済むのか…



 昼前になり、皆が戻ってきた。お昼御飯を頂いたら私も泳ぎに行くとするか。何だか今日は不細工三人衆に謝ってばかりであるな…


お昼御飯は海の家で焼きそばを購入し、皆でシートに座って頂いた。


「そういえば、かぐやちゃん。何でぶたおとデートに行ったの?」


秋人どのの言葉に、松乃どのが素早く反応した。


「え~~~?かぐやちゃん、ぶたおとデートしたの?」

「そんなに不思議なことか?」


「何でまたあのキモオタと?」

「キモオタとは何だ?」

「そんなことより何でデートしたの?」


小梅どのまでが驚いた顔をしておる。琢雄どのと会うのはそんなに不思議なものなのか?


「会ってどのような殿方かを見極めようとしたのだ。」

「いや、見極めなくても分かるでしょ!」

「松乃どのは凄いな。見極めなくても分かるのか。」


「で、どうだったの?」

「接吻を迫られた故、拒否したらボートから落ちたのだ。」

「それは大変だったね~。」


皆に心配をかけてしまったようだ。これは松乃どのにご教授願わねばなるまい。


「松乃どの、どうしたら見極めなくても分かるようになるのだ?」

「かぐやちゃんは箱入り娘だし、テンカイから来たばかりだから、ちょっと世間を知らないところがあるかもね。」


不細工三人衆からも呆れられてしまった。


「まったく、あぶなっかしくて見てられないな。」

「そうそう!もう簡単にデートしたらダメだよ♪」

「うむ。今回でかなり懲りた…」


「何処かへ行きたかったら、私達に言って下さいね。何処へでもお連れしますから。」

「かたじけない…」


春樹どのは慰めてくれておるが、無意識にため息が漏れた。

はぁ…今日は落ち込んでばかりであるな…



 飲み物が無くなったので海の家へジュースを買いに行き、皆のところへ戻って飲んでいると、なんだか頭がくらくらし始めた。

このジュース、少し苦いな…


「おい!かぐや!それ酎ハイだぞ!」

「え?ヒック!」


「かぐやちゃん大丈夫?」

「何だか目がすわってるよ!」


不細工三人衆の声が遠くに聞こえる。小梅どのと松乃どのが目の前で騒いでおるようだ。

ふふ♪皆が沢山見えるな~!楽しくなってきた♪


この時から私の記憶は途絶えた。


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