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No.5

「ブラック、答えろ。

お前はこの任務に不満はないか?」


一瞬、理解が追い付かなかった。

目の前にいる整備担当の男は、真っ直ぐにこちらを向いて質問をしている。


何を言っている?


いつもの部屋の簡素なベッドで、点滴で栄養を補給している最中だった。


「質問の意図が理解できません」


サイレントブラックとして生まれ変わって、充実した毎日だった。

毎日毎日、サイレントブラックとして『使って』もらえるのだ。


これ以上の幸せがあるというのか?


「個人的な感情は必要と考えていません。

次の任務に必要でしょうか?」


「違う、そうじゃあない。

…こんな、

人生の半分も生きてないようなお前が、

他人の人生を奪うような、

こんな仕事に従事していることに…


満足なのか?」


「当然です」


今度は躊躇なく、答えた。


「まだ『僕』だった時には、こんな満足感はありませんでした。


なぜ、生まれたのか

なぜ、生きているのか

なぜ、ここにいるのか


誰も教えてくれるはずもないし、

自分でもたどり着けない。


あの焦燥感は、恐怖以外の何物でもなかった。」


「それは、みんなそうだ。

おまえだけじゃない。

でもそれを見つけていくんだよ、みんな」


整備の男は、優しく諭すように言ってくる。


「…あるんですか?」


拳を握る。

あの焦燥感という恐怖を、思い出す。


「そんなもの、ないですよ。

神様じゃあるまいし。

人間という生命は、銀河のちりみたいなものです。生きる理由も意義もない。

見つけたというなら、それは自分の中の理由です。

本当に課された理由やら意義やらは、ただ死ぬことだけです」


その時、整備の男のパソコンから、電子音が流れる。


任務だ。

ベッドの上のサイレントブラックを、さっと握る。


「そんなこと、間違ってる。

みんな、生きるために生まれてきたんだろう」


それでも気にせず、整備の男はこちらにまなざしを向けている。


「それを決めて生きるのが楽ならそうしてください。

『僕』は今、やっと満たされているんです。

早く、『僕』を使ってください」


何が言いたいのだろう、この男は。

うなだれて、男はゆっくりと通信をつなげて、誰かと話し始めた。


サイレントブラックの、冷たい感触が心地よかった。


ここが居場所だ。

ここがすべてだ。


早く、

サイレントブラックに、

硝煙の旋律を。



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