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No.3

『この情勢を何とかしなければ、この国は終わってしまうだろう。』


朝刊にはいつもの酷評が並んでいる。


「お前たちに何が分かる」


と彼――ジョセフ・カレイトン大統領は舌打ちをした。


国を支える大統領という仕事は、彼にとって荷が重かった。

前任のリチャード・フランクの暗殺がなければ、彼はこの席に座ることはなかっただろう。

リチャードはエリートではなかったが、野心家で民衆を味方につける方法を知っていた。

一方、ジョセフは有名大学を首席で卒業し、それなりに官僚たちとの付き合いも悪くなかった。

しかし、民衆への意思表示が苦手だったのだ…

…はっきりしない、曖昧な言い方で疑問を煙に巻いていることが多かった。

もし、彼がリチャードの右腕のままその頭脳を生かせていたら、そこそこ名の知れた相棒として、歴史に名を残せたかもしれない。

彼はその頭脳で、この先の情勢が好転することはないと悟っていた。

他国との貿易問題、国内の暴動。


「まさに板挟みだな」


苦々しく笑う。


思えば、こんな時…リチャードはどうしただろうか?


ジョセフは居心地の悪い椅子に深く腰掛けながら、つい彼のことを思い出してしまう。


リチャードは仕事中にこの世を去った。

自室にこもり、明日の会議の原稿作りをしている間に。

この間、ジョセフは午後からの会議の打ち合わせ結果を隣国の秘書に連絡していた。

それは3分くらいの間。

ジョセフにとっては、短すぎる彼の死だった。


扉を開けた時には、リチャードは机に伏していて、こめかみと心臓に二発銃弾がその身を裂いていたそうだ。

犯人も銃弾の型も不明で、まるで銃がひとりでにリチャードを殺しに来たかのように、痕跡もなかった。


と、彼が物思いに耽っていると、背中に何か違和感を感じる。


「振り返れば殺す」


ジョセフははっとする。こいつだ、と。

背中に死神がいる、押し付けているのはおそらく銃口だろう。


声質からして、おそらくまだ子供だ。

彼は一瞬焦った。が、どうすることもできなかった。


「私が死んでも、この国は殺せないぞ」


負け惜しみのように、ジョセフは言葉を吐く。

背中の死神は、身じろぎもせず、銃口を一層強く押しつけた。


「…この国の奴は、死ぬ時にそう言わなければならないのか?」


死神は独り言のように問いかけてきた。

そして、彼はその問いに答えることはできなかった。


「大統領、あなたも、そうだったのですね…」


消えゆく意識の中で、ジョセフは心の中で確信した。


翌日、朝刊にはジョセフ・カレイトンの暗殺事件でその紙面を埋めていた。


「また大統領暗殺!

犯人は依然捕まらず…」



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