処刑台から死に戻った毒婦は、孤独な皇太子の呪いを愛で解く
※本作は、短編『茨の靴のシンデレラ~虚偽の告発で復讐した私は、処刑台に送られる~』の続編。
IFルートを描いた物語です。
前作はコレットが断頭台に送られる「バッドエンド」にて幕を閉じましたが、本作はその処刑台の最期に抱いた【たった一つの未練】から始まる、救済と地獄のやり直しストーリーとなっております。
前作をお読みいただいているとより一層楽しめますが、本作からでも「死に戻った悪女の贖罪劇」としてお楽しみいただけます。
かつて愛を蔑ろにした毒婦が、孤独な皇太子を救うために何度も死を繰り返す運命を、どうぞ最後まで見届けていただければ幸いです。
【泥濘の目覚めと金の弓】
鋭利な鉄の刃が私の細い首の骨を断ち割り、世界が永遠の闇に沈んだ、その次の瞬間のことだった。
「――っ!」
私は弾かれたように上半身を起こし、肺が張り裂けるほどの勢いで空気を吸い込んだ。酸素が喉を焼き、むせ返るような咳が止まらない。両手で必死に自分の首元をまさぐる。
血は出ていない。
首は繋がっている。
荒い呼吸を繰り返しながら、私は周囲を見渡した。
冷たい石造りの牢獄でも、血の匂いがこびりついた処刑台でもない。
そこは、カビと干し草の匂いが充満する、ひどく見覚えのある粗末な小屋だった。隙間風が吹き込む土壁。薄暗い部屋の隅に置かれた、使い古された農具。
ここは、私がまだ「ただの農民の娘」だった頃に暮らしていた実家の屋根裏だ。
私は震える手を目の前にかざした。宮廷の豪奢な生活で白く滑らかに磨き上げられていた私の手は、泥に汚れ、あかぎれだらけの小さな手に変わっていた。
夢ではない。
処刑台で刃が落ちる瞬間の、あの身の毛のよだつような冷たい感触と、群衆の歓声、そしてレイナルドの氷のような瞳の記憶は、私の脳裏に鮮明に焼き付いている。
私は、死に戻ったのだ。
あの断頭台から、すべての地獄が始まる前の、この農村へ。
窓の外を見ると、まだ夜明け前の薄暗闇だった。
階下からは、酔い潰れて眠る父親の大きないびきが聞こえてくる。
私は即座に布団を跳ね除け、身支度を始めた。
混乱して泣き叫ぶような子供っぽい感傷は一切なかった。私の中身は、数多の貴族を虚言で陥れ、国家を揺るがした十九歳のしたたかな女のままだ。
ここにとどまっていれば、数日後にギルバート伯爵がこの村を視察に訪れ、私を見初めるだろう。そしてあの息の詰まる暴力と支配の檻に閉じ込められ、私は生き延びるために「嘘」という毒を覚え、やがて処刑台へと逆戻りする。
同じ轍は絶対に踏まない。
平民が勝手に領地から逃げ出すのは重罪だが、断頭台の刃に比べれば大した問題ではなかった。
私はなけなしの保存食と水だけを布に包み、音を立てずに家を抜け出した。
村の境界を越える頃、ちょうど街道を通りかかった行商の荷馬車を見つけた。
私は御者の目を盗み、荷台の幌の奥に高く積まれた麻袋の隙間に身を潜めた。馬車はガタガタと揺れながら、私を故郷から遠くへと運んでいく。
数時間後、馬車が小高い丘を越えたとき、幌の隙間から遠くに大きな城塞都市の輪郭が見えた。これ以上乗っていれば、関所で荷物検査に引っかかる。私は馬車が速度を落とした隙を突き、荷台から地面へと転がり落ちた。
全身を打つ痛みに顔をしかめながらも、私はすぐに街道を外れ、身を隠すために鬱蒼とした森の中へと足を踏み入れた。ここからなら、自力で歩いてあの町へ辿り着けるはずだ。
しかし、それは旅慣れぬ者の浅はかな計算だった。
広大な森は、どこまで歩いても同じような木々が続くばかりで、方向感覚はすぐに失われた。半日も歩き回るうちに体力は限界に達し、足は木の根にもつれ、私は落ち葉の上に倒れ込んだ。
その時だった。
ヒュッ、という鋭い風切り音が森の静寂を裂いた。
「あ……っ!」
遅れてやってきた凄まじい激痛に、私は絶叫した。
どこからともなく飛んできた一本の黒い矢が、私の右肩を深く貫いていたのだ。熱い血がボロボロの衣服を赤く染めていく。
痛みにうずくまり、痙攣する私の耳に、落ち葉を踏み砕く重い足音が近づいてきた。
「……獲物を仕留めたと思ったが、鹿ではない――ただの薄汚い女だったか」
地を這うような、冷酷で傲慢な声。
その声には聞き覚えがありすぎた。
私は肩の激痛に耐えながら、ゆっくりと顔を上げた。
そこには、眩い金髪に軍服をまとった、悪魔のように美しい男が立っていた。
次期国王、レイナルド皇太子。かつての私の主人であり、私を処刑台へと送った絶対権力者。
彼は右手に黒い長弓を握り、氷のように冷たい青い瞳で、地面を這いずる私を虫けらのように見下ろしていた。
「不愉快だ。目障りな雌犬め、このまま私の手で息の根を止めてやる」
レイナルドが腰の剣の柄に手をかけ、冷たい刃を鞘から引き抜こうとした。
死の恐怖が私の全身を硬直させる。
しかし、私は目を逸らさなかった。
ここで泣き叫んで命乞いをしても、この冷酷な男の心は微塵も動かないことを、私は前世の記憶で痛いほど知っていたからだ。私はただ、彼の孤独な青い瞳の奥を、射抜くように真っ直ぐに見つめ返した。
その瞬間、剣を引き抜こうとしたレイナルドの手が、ピタリと止まった。
彼は不審そうに眉をひそめ、私の緑色の瞳を覗き込むように顔を近づけた。
ただの怯える農民の娘ではない、何か底知れない暗いものを私の目の中に見出したかのように。
「……ふん。その目、底辺の塵芥の分際で、私を恐れていないと見える」
レイナルドは剣から手を離し、傲慢な薄笑いを浮かべた。
「悪くない。せっかく私が自ら射抜いて仕留めた獲物だ。連れて帰って、私の慰み者として飼ってやろう」
こうして、逃げ出したはずの私の運命は皮肉にも引き戻され、私は再びレイナルドに所有されることとなったのだ。
【繰り返される凶刃、狂い出す歯車】
レイナルドの居城に連れ帰られた私の生活は、前世で経験したものと酷似していた。
傷の手当てを受け、湯浴みをさせられ、最高級の絹のドレスを着せられる。
私は再び、彼の権力を誇示するための「陶器の人形」として、美しく飾り立てられた。
彼が私を抱く手つきは相変わらず冷酷で、そこに温かな愛情など微塵も存在しない。
しかし、前回の私とは違い、今の私に不満はなかった。
彼が私の身体しか見ていないのなら、それでいい。
私はただ、この豪華な檻の中で息を潜め、彼の力を悪用せずに生き延びるつもりだった。
しかし、運命の歯車は無慈悲に狂い始める。
ある夜、レイナルドに伴われて出席した宮廷の夜会でのことだ。
壁際で静かにグラスを持っていた私の腕を、唐突に背後から強い力で掴まれた。
「おい、下賤の泥人形。少し顔を貸せ」
鼓膜を舐めるような、神経質でねっとりとした声。
心臓が嫌な音を立てて跳ね上がった。振り返ると、そこにはきっちりと撫で付けられた黒髪と、冷酷な薄笑いを浮かべたギルバート伯爵が立っていた。
私は前世のトラウマで全身が凍りつき、声を出すこともできなかった。
ギルバートは私の沈黙を好都合とばかりに、強い力で私の腕を引き、夜会の喧騒から離れた人気のないバルコニーへと強引に連れ出した。
「皇太子の愛妾だと聞いて様子を見に来てやれば、ただの怯えた小鳥ではないか。殿下も悪趣味なことだ」
ギルバートは私を石造りの壁に乱暴に押し付け、その顔を醜く歪めて私のドレスの胸元へと手を伸ばしてきた。
「やめ、やめて……!」
私が必死に抵抗した、その時だった。
「私の玩具に手を出して、無事で済むと思っているのか?」
バルコニーの入り口に、冷気を纏ったレイナルドが立っていた。
その手には抜き身の剣が握られている。
助かった、と思ったのは一瞬だった。
レイナルドの氷のような瞳は、ギルバートだけでなく、押し倒されている私にも向けられていた。
「私の目を盗んで、こんな男と裏で逢引きとはな。雌犬はどこまでいっても雌犬か」
「違います、殿下! 私は無理やり――」
弁明の言葉は、最後まで紡げなかった。
ギルバートの護身用の短剣が、私の胸を深く貫いていたのだ。
「この下賤の女は、殿下の命を狙う暗殺者だったのです。それに気づいた私はこうして取り押さえようと――」
私の口から大量の血が溢れる。
そして――
彼の冷たい瞳を見上げたまま、二度目の死を迎えた。
* * *
「――っ!」
気がつくと、私は再び息を吹き返していた。
首を切り落とされた一度目の死。
そして、ギルバートの剣で胸を貫かれた二度目の死。
一度目の死の後は、農民時代に――
そして今度は夜会の数日前の時点へと巻き戻っていた。
現状のままでは、あの夜会で必ずギルバートに襲われて殺される。
レイナルドに浮気を疑われながら……。
私は感情を冷たく殺し、生き残るための冷酷な計算を始めた。
再び数日を過ごした後、運命の夜会の日が訪れた。
私は事前に厨房から鋭利な肉切りナイフを盗み出し、バルコニーの暗がりの茂みの中に隠しておいた。
そして夜会の中盤、わざと一人きりになってギルバートの目に留まるように立ち振る舞い、彼が私をバルコニーへ連れ出すよう誘導した。
「怯えた小鳥め。私の胸で――」
壁に押し付けられ、ギルバートが卑しい笑みを浮かべた瞬間。
私は茂みに隠しておいたナイフを素早く手に取り、一切の躊躇なく、その刃をギルバートの首筋へと深く突き立てた。
「ガ、あ……っ!?」
ギルバートは目をひん剥き、血だるまになって崩れ落ちた。
一度目の人生であれほど私を苦しめた巨悪は、あっけないほど簡単に私の足元で息絶えた。
「何をしている」
背後から、レイナルドの声がした。
彼がバルコニーへ足を踏み入れ、血まみれのナイフを持つ私と、倒れたギルバートを見下ろす。
今回は「密会」ではない。
状況は一目瞭然だった。
「この男が、殿下の所有物である私を汚そうとしたので……私の手で処分いたしました」
私は冷たく言い放ち、ナイフを床に捨てた。
レイナルドは驚いたように目を細め、やがてフッと低く笑う。
「狂犬のように噛みつくか。……面白い女だ」
ギルバートは死んだ。
私の行いは正当防衛として処理され、私は無事に生き延びることができた。
——だが、運命は私を許さなかった。
それから数日後。
王都で、公爵家が他国と結託し、大規模な謀反を起こした。
宮廷は火の海となり、大混乱の中、私はレイナルドを庇って反乱軍の凶刃に倒れ、彼もまた私の目の前で胸を貫かれて死んだ。
燃え盛る炎の中で、私はまたしても永遠の闇へと落ちていった。
【不滅の盾と、暴君の孤独】
* * *
三度目の死に戻り。
私は目を覚ますと、すぐに行動を開始した。
すぐさま彼の執務室へと赴き、前世と前々世の記憶を頼りに「公爵家の謀反」に関する詳細な情報を彼に告げた。
最初は不審に思っていた彼も、私の情報があまりにも正確であったため隠密に調査を命じ、未然に反乱を防ぐことに成功した。
しかし、それでも死の連鎖は終わらなかった。
謀反を防いだ数週間後、地方視察の移動中に大規模な盗賊団に襲撃され、私たちは馬車ごと崖から転落して死んだ。
* * *
四度目の死に戻り。
私は事前に盗賊団の待ち伏せルートをレイナルドに告げ、迂回させることで危機を回避した。
だがその数日後、最も信頼していたはずの近衛警備隊長が突如として裏切り、私たちは寝室で暗殺者に囲まれて命を落とした。
* * *
五度目。六度目。七度目。
警備隊長の裏切りを事前に告発して防いだ後は、夕食のワインに盛られた無味無臭の猛毒によって、レイナルドと共に血を吐いて死んだ。
毒を盛られると分かって死に戻った八度目の人生では、私は事前に厨房に罠を張り、毒薬を仕込もうとした犯人を現行犯で捕らえ、その背後にいた黒幕の貴族を突き止めてレイナルドに差し出した。
幾度もの死。
燃えるような痛み、引き裂かれる肉体の感触、毒で内臓が溶けるような苦しみ。
私の精神は死の恐怖に対して完全に麻痺していた。
ただ一つ、私の心を支配していたのは「彼を死なせたくない」という、異常なまでの執着だった。
私が何度死んでもやり直せるのは、あるいは、この繰り返される凄惨な死の運命こそが、かつて権力に溺れて彼を利用し尽くした私への、神が与えた罰なのかもしれない。
ならば、私は喜んで彼のための「盾」になろう。
暗殺者の黒幕を捕らえた夜。
静まり返った寝室で、レイナルドは窓辺に立ち、月明かりを浴びながら私を見つめていた。
その氷のような青い瞳には、以前のような傲慢な冷酷さだけではない、奇妙な熱が帯びているように見えた。
「お前は、まるで未来が見えているかのように私の危機を救う。……お前は、一流の護衛だな」
レイナルドが、皮肉めいた、だがどこか自嘲的な笑みを浮かべて言った。
私は彼に歩み寄り、静かに首を横に振った。
「殿下こそ、こんなに命を狙われるなんて、異常です。この国はこれほどまでに豊かだというのに、なぜ殿下ばかりが……」
私が本音を漏らすと、レイナルドは窓枠に寄りかかり、遠くの夜空を見つめながら重い口を開いた。
「もう慣れた。昔からだ。……どうやらこれは、北の森の魔女の『呪い』らしい」
「呪い……?」
「そうだ。私の父である現国王が、かつて他国との戦争に勝つため、軍資金を魔女にねだった。山のような黄金と引き換えに、魔女は対価を要求した。それが、国王の血を引く息子である私の命だ」
レイナルドの声は、あまりにも平坦だった。
「私は生まれながらにして、命を狙われ続ける呪いを受けている。戦争に勝ってこの国は繁栄を極めているが、その代償として、私の命はそう長くはないだろうな」
その言葉を聞いた瞬間、私の胸を鋭い刃で抉られたような衝撃が走った。
私は、何も知らなかった。
最初の人生で、私は彼が持つ巨大な国家権力だけを愛し、その権力を使って私を虐げた者たちへ復讐することしか考えていなかった。
この豊かな国が、レイナルドという一人の青年の「不幸」と「命の危険」の上に成り立っていることなど、想像すらしていなかったのだ。
彼は孤独だった。
誰もが彼を殺そうとする世界で、誰も信じられず、ただ冷酷な暴君として振る舞うことでしか、自分を保つことができなかったのだ。
だというのに、私は最初の人生で、彼の心に寄り添おうともせず、ただ彼の力を貪り食う寄生虫のような生き方をしていた。
深い後悔と自己嫌悪が、濁流となって私を飲み込んだ。
私は足から崩れ落ちそうになるのを必死に堪え、彼を見上げた。
「……その呪いを、解く方法はないのでしょうか?」
【断頭台の毒婦は、愛の口づけで呪いを解く】
私の震える問いかけに対し、レイナルドは酷薄な笑みを浮かべたまま、短く吐き捨てた。
「無理だな」
「なぜですか……!」
「解呪の条件は、心から私を愛した女性とのキスだそうだ。くだらないおとぎ話だ。そんな女が、この狂った世界に現れるはずがない。どいつもこいつも、権力に群がるか、私を殺すことしか考えてはいないのだから」
彼はそう言って、自嘲するように目を伏せた。
その横顔は、死という絶望を完全に受け入れ、世界中のすべてを諦めきった人間の顔だった。
最初の人生で断頭台から見上げた、あの底冷えするような氷の瞳の奥にあった「孤独」の正体。
私は、胸が張り裂けそうだった。
(私は……なんて愚かだったのだろう)
彼が冷酷だったのではない。
世界が彼に対して冷酷すぎたのだ。
私は静かに歩み寄り、レイナルドの前に立った。
「どうした、怯えたか?」
彼が見下ろす中、私は両腕を伸ばし、彼の広い背中に腕を回した。
私の顔が彼の胸に押し当てられ、規則正しい彼の心音が耳に伝わってくる。
「……お前、」
「私は、殿下の盾です。何度命を狙われようと、何度この身が引き裂かれようと、私が必ず貴方をお守りします」
それは、私の魂の底からの誓いだった。
死に戻りの副作用などどうでもいい。
私の命が続く限り、彼をこの孤独な地獄から救い出したい。純粋で、狂おしいほどの愛おしさが、私の心を完全に満たしていた。
私は顔を上げ、レイナルドの首に手を回した。
彼が驚いて目を見開く中、私は背伸びをして、その冷たい唇に、私の唇を重ね合わせた。
ほんのわずかな触れ合い。
しかし次の瞬間――
レイナルドの胸の奥から、目も眩むような黄金の光が溢れ出した。
「なっ……!?」
レイナルドが身を引き剥がそうとするが、光は彼を包み込み、やがてパチンとガラスが弾けるような高く澄んだ音を立てて、空中に霧散していった。
部屋の中に、静寂が戻る。
「今のは……」
レイナルドが自身の胸に手を当て、信じられないというように私を見た。
常に彼を覆っていた重苦しい死の気配が、嘘のように消え去っていた。
彼の氷のような青い瞳から、長年まとわりついていた暗い影が晴れ、透き通るような美しい青空の色に変わっている。
「……呪いが、解けたのか? お前の、キスで……?」
レイナルドの声が、初めて年相応の青年のように震えていた。
私はポロポロと涙をこぼしながら、彼に向かって微笑んだ。
「おとぎ話は、本当だったのですね」
レイナルドはしばらくの間、呆然と私を見つめていたが、やがて何かを堪えるように顔を歪め、力強く私を抱きしめた。
骨が軋むほどの強い抱擁だったが、そこにはかつてのような冷酷な支配欲は欠片もなかった。
ただ、一人の人間としての体温と、生への渇望が溢れていた。
「お前は……私を、愛しているのか」
「――ええ。どうやら、そうみたいです」
私は彼の腕の中で、静かに目を閉じた。
それ以降、レイナルドの命が狙われることは二度となかった。
暗殺者も、謀反も、毒殺も、呪いが解けたことによって運命の歯車が正常に戻ったかのように、一切姿を消したのだ。
私たちがその後どのような人生を歩んだか。
かつて茨の靴を履かされ、嘘という毒を振りまいて断頭台へと消えた毒婦は、死刑台から始まった長い長い死に戻りの果てに、孤独な皇太子の唯一の妃として、彼と共に末永く、穏やかな光の中を生きていくこととなった。
―END―




