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魔族の女王が転生したら聖女になっていた  作者: 白神 エル
第一章:静かな日々  ― そして、力は目を覚ます ―

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裏切りと再誕

人との平和を望んでいた魔界の女王が記憶をそのままに聖女と生まれ変わって世界を変えていくお話

私は、弱くはなかった。


魔界において、私に剣で勝てる者など数えるほどしかいない。

それでも——私は、殺された。


「……なぜだ、宰相」


胸を貫く刃の冷たさよりも、その問いに答えようとしない男の沈黙の方が、ずっと痛かった。


「人間と共存するなど、夢物語に過ぎません」

ようやく口を開いた彼の声は、驚くほど穏やかだった。

「あなたは優しすぎた。だから、魔界の王には向いていなかった」


——違う。

優しさでしか、終わらせられない争いがあると信じていただけだ。


反撃しようと思えば、できた。

目の前の男を消し飛ばすことなど、造作もない。


けれど私は、最後まで剣を取らなかった。


彼を、信じていたからだ。


視界が闇に沈む。

魔界の玉座も、血に濡れた床も、すべてが遠ざかっていく。


——これで、よかったのだろうか。


そう思った、次の瞬間。


『いいえ、それでは終われません』


聞いたことのない、けれどどこか懐かしい女性の声が、私の魂に触れた。


『あなたの願いは、まだ果たされていない』


光が、満ちる。


目を開けると、私は真っ白な空間にいた。

目の前には白い服を着た優しい顔の女性が立っていた。

そして、その女性は優しく微笑みながら私に向かって語りかけた。


『私は女神です。魔界の女王として生きながら、あなたは人間との平和を望んでいた事も知っています』


信じられない言葉が頭の中に入って来た。

いきなり女神と言われても信じられない

ただ、私の素性や考えを知っている。

そのため、その女性の言葉を信じるには十分と思った。


『あなたは、間違っていなかった』


『けれど、あなたの優しさは——世界に届く前に折られてしまった』


『だからもう一度、機会を与えます』


『あなたは人として生まれ変わります』


『魔王としての力は封じられ、聖女としての力へと変換されるでしょう』


『ただし——』


『強い感情に触れたとき、その封印は揺らぎます』


『怒り、悲しみ、守りたいという願い』

『それらは、かつての力を呼び起こす引き金となる』


『ですが忘れないでください』


『その力は、世界を救うことも——再び壊すこともできる』


その言葉を聞き遂げると同時に、また光に包まれていった。


——そして私は、泣き声とともにこの世に生まれ落ちた。


人間の国で、“聖女”として。



≪場面は変わってとある教会でのこと≫

——光が、あふれていた。


夜だったはずの空が、まるで昼のように白く染まっている。


「な、なんだ……この光は……」


神殿にいた神官たちは、誰もが言葉を失っていた。


それは祝福の光に似ていた。

だが、あまりにも強すぎた。


まるで世界そのものが、何かを“迎え入れている”かのような——


異様な光。


次の瞬間。

産声が、響いた。


「おぎゃあ……っ」


その小さな声と同時に、光は一点へと収束する。


——生まれたばかりの、ひとりの赤子へ。


「……聖女、だ……」


誰かが、震える声で呟いた。


だが、それだけでは終わらなかった。


赤子の周囲の空気が、わずかに歪む。

床に落ちていた割れた器が、音もなく元に戻り——

そのすぐ隣にあった枯れた花が、逆に“崩れ落ちて消えた”。


「……今のは……癒やし、ではない……?」


神官の一人が、青ざめる。


癒やしと破壊。

相反する現象が、同時に起きていた。

まるで、その赤子の存在そのものが——

世界の理から、わずかに外れているかのように。


赤子は、ただ静かに目を閉じていた。

その小さな手が、無意識に空を掴む。


産声が、静まり返った神殿に響いた。


だが——そこに母親の姿はなかった。


「……そんな、馬鹿な……」


神官の一人が、震える声で呟く。


祭壇の中央。

本来ならば神に祈りを捧げるはずの場所に、ひとりの赤子が横たわっていた。


まるで、最初からそこに“置かれていた”かのように。


「誰かが……捨てたのか?」

「違う、こんな光……人の仕業じゃない……」


囁き合う声は、誰も確信を持てないまま揺れている。


そのとき。


「……私が抱き上げる」


一人の神官が、静かに前へ出た。


年若くはないが、落ち着いた目をした男だった。


「危険です!」

「先ほどの現象を見たでしょう!」


制止の声が飛ぶ。


——それでも、彼は足を止めなかった。


ゆっくりと、赤子へ手を伸ばす。


触れた瞬間。


ほんの一瞬だけ、空気が張り詰めた。


——だが。


「……大丈夫だ」


何事もなかったかのように、赤子は彼の腕の中で小さく息をしている。


その寝顔は、あまりにも穏やかで。


先ほどの異常が、まるで嘘のようだった。


「この子は……」


神官は、わずかに目を細める。


「神に選ばれたのかもしれない」


誰にともなく、そう呟いた。

反論は、出なかった。

出せなかった。


誰もが、この状況を説明できないからだ。


「……名を」


誰かが言った。


「この子に、名を与えねば」


神官は、しばし考える。

腕の中の小さな命を見つめながら。


——その瞬間。


微かに、光が揺れた気がした。

それが導きだったのか、ただの偶然だったのか。

彼には分からなかった。


それでも——口を開く。


「……エリス」


その名を、静かに告げた。


「この子の名は、エリスとしよう」


不思議と、その言葉に誰も異を唱えなかった。

まるで最初から決まっていたかのように。


神官は赤子——エリスを抱き直す。


「この子は、私が預かる」


「正気ですか!? 相手は——」


「分かっている」


言葉を遮り、静かに答える。


「だからこそだ」


その声には、揺るぎがなかった。


神の奇跡か。

それとも、理解してはならない何かか。


どちらにせよ——


このまま放置するわけにはいかない。


「私の家に連れていく」


「少なくとも、この子が何者か分かるまでは」


誰も、止めなかった。

止められなかった。


神官は踵を返し、神殿を後にする。

腕の中で、エリスは静かに眠っていた。


——その小さな存在が、やがて世界を揺るがすとも知らずに。



≪場面は変わって、魔界のとある場所で≫

——どこか遠い場所で、玉座に座る影が、わずかに顔を上げた。


「……来たか」


誰にも聞こえない声が、闇の中で落ちた。

初めて描いた小説です

自分では書いたつもりでしたがちょっと短かったかもです

感想を頂けると嬉しいです

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