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ピノッキオの鼻  作者: アズキ


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8/17

第8話「どうやって?」

時刻は1:30。

工藤の話が終わってから10分が経った。3ページ目が始まるのは2:00からだと常田は踏んでいたが、それまでの時間をどう潰そうかと悩んでいる。


工藤は机を見つめたままあまり動かない。時々、常田の後ろにいる人物を見ていた。


「常田さん。あの方は誰なんですか?」


「ん?あぁ、根本っていう刑事です。」


「彼は何をしているんですか?」


「彼はここの会話を随時、記録しているんですよ。あのパソコンに打ち込んでね。」


「ほぉ、僕はそういう系は苦手でしてね。ネットとかパソコンも現代人とは呼べないと思うんですよね。スマホにも慣れるまでに時間がかかりましたし。」


「ですが、ネットで仲間を集めたんじゃないんですか?」


工藤はこれ以上ないぐらいのポカンとした表情を見せてきた。

何を言っているのか分からない。確かにそう言っているような表情をしている。その表情から嘘か本当かを見抜きたかった。

しかし、それは難しい。憎たらしいぐらい純粋な顔だからだ。さっきの話から嘘だと思いたいが、頭の中は疑心暗鬼になりつつある。


「そっちの刑事さん、えっと、根本さんでしたね。ネットとかそういうのは得意なんですか?」


「えぇ…まぁ」


ずっと喋らなかった根本が返事をした。この部屋に来てからというものそういえば、根本の声を聞いていなかったと当たり前のことを思う。

話すのは自分も工藤。根本の方から聞こえるのはただ、タイピングの音だけ。


「いいですよね。ネットで上手くやれる人は。リアルで居場所を無くしても寄り添ってくれる人が沢山いるから。」


「リアルでも、寄り添ってくれる人はいますよ。」


工藤の表情が少し歪んだ。

なにかのチャンスかと思ったが、何も工藤は言わなかった。常田は自分の発言を思い返す。

そうだ、コイツは警察や周りの人間から見捨てられてしまった人間。それも、悪人でもないのにだ。

心をエグってでも、動揺を誘うべきかと思った。しかし、すぐに冷静な顔になったところを見るとそれも通じないのかもしれないと思った。


ただ時間が過ぎていく。

工藤に質問をしても抽象的な言葉しか返ってこない。本当なら外に出て、周りの人間にこの謎を直接話し合いたいとどれだけ思っていることか。

しかし、常田がここから出てしまえば、手がかりは失われてしまうことだろう。


「まだ、続けるんですか?常田さん。あなたは多くの人の命を奪いますよ。なんの罪もない人間の。」


「やめたら、それこそ命を救えなくなる。私は負けません。あなたの自分勝手な物語に巻き込まれた人たちを見捨てたりはしません。」


「そうですね。この物語を終わらせることのできる人は常田さん。《《あなただけ》》なんですから。」


もう少しで拳が飛び出てしまうのをギリギリで堪えることができた。

正義という抽象的なものを信じてここまで仕事をしてきた自分にとってはイラつかない方が難しい言葉を吐かれたのだ。自分のせいで命が失われる?そうかもしれない。解かなければ自分のせいで何人もの罪のない人の命が奪われる。既に2人も。


時間は過ぎ、時刻は1:53。

1つのメールが入ってくる。新井刑事からだ。

その内容はとあるアプリを入れて欲しいというもの。ネットで小説が読めるアプリ、その中にこの事件との関連性の強いもの、いや、関連性しか無いものを見つけたと言う。

メールの通りに、アプリを入れ、その小説を探した。

すぐにそれは見つかり、この事件の物だとすぐに分かった。そして、次の更新は2:00。

だが、現場には既に何台ものパトカーと警察官が待機しているはずなのだ。人が死ぬなんてことは。


2:00。

アプリの小説更新。

第3話「久野亮くのりょう

『久野亮さんは、父親が捕まりました。亮さんは悪くありませんでした。無関係です。ですが、世間は彼を見放し、彼は鬱になってしまいました。このまま生きていてもしょうがないので、楽にさせてあげることにしました。彼に与えられた役は《《劇場でコインをくれた人》》。死に場所は木場映画館の中の席。』


常田は驚愕した。

この時間まで怪しい人物を見かけはしなかったからだ。それはそうだ、死んでいる場所は映画館の中。

急いで新井に電話をした、向こうも分かっているようで、連絡は既に済んでいるらしい。

だが、どうやって?

映画館の中には入れないし、入っていった人もいなかったはず。それに、ピノッキオ役はどうやって殺した?

訳が分からなくなってしまった。

そんな常田を嘲笑うかのように工藤が言った。


「さぁ、3ページ目を始めましょうか。」

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