第7話「小説」
何人かの人間が部屋から居なくなった。それなのに自分はまだデスクで作業を余儀なくされていた。
新井も外に出て仕事をしたかったが、任されている仕事をほっぽり出す訳にもいかない。
取調室からの情報を元に、既に木場と船堀には何人かの警察官が向かったようだ。警察がいる前で殺しを行えるかと言ったら無理だろう。
犯人も簡単に捕まえられるだろう。この時、新井はそう思っていた。
爬虫類店の前で遺体として発見されたのは、皆川悠太。無職で、周りの人間関係はほぼ皆無。
死因は刃物による刺し傷。出血多量だ。
たまたま通り掛かった通行人に見つかり通報された。
だが、周りには怪しい人物はおらず、誰ともすれ違っていないと通報人は証言したそうだ。
ただ、最初の被害者と同じように、冤罪での逮捕歴があった。その後、人間関係が上手くいかなかったようで、今の状態に落ち着いていたという状態。
工藤はこういう人間をネットで集めていたのかもしれない。
そう思って、色んなサイトを新井は漁り始めた。
簡単に見つかるとも思っておらず、時間との勝負だと確信している。ネットの数は数え切れない。そこからピンポイントにサークルのような物を探すなんて骨が折れるどころの話ではないからだ。
どのようなコミュニティで出会ったのかも分からない。
Xのようなものなのか、それとも掲示板なのか。
探しても探しても見つからない。
少し疲れてスマホを見る。
新井はネットで小説を読むことにハマっていた。勤務中に読むバカなんて居ない。
だが、興味本位でまさかこんな場所にあってりして、と思い、何か無いかと探し始める。
そして1つ。気になる物を見つけた。
タイトルは「冤罪と童話」
まさに今の状況にピッタリのタイトル。そして、説明の部分には「私が思う、可哀想な人たちを救うための配役と死に場所を書く場所。」と書かれている。童話の要素はなかった。
説明にはまだ続きがあり、今日の0:00から公開。1時間ごとに更新と書かれている。
すぐに新井はページを開く。1話目、「山本弧次郎」
『山本弧次郎さんは冤罪の罪で捕まり、地獄のような日々を送っていました。その姿はなんとも言えないぐらい辛いものでした。なので、楽にさせてあげることにしました。しかし、ただで死んではつまらない、この世に何かを残さないといけない。だから、彼には《《ゼペット》》という配役を与えました。彼の死に場所は自分の家。』
新井はゾッとした。
ここまで事件の内容と被っている、いや、被っているわけではない、わざとだ。工藤はこの場所で答え合わせをしているんだ。配役と死ぬ場所を。
新井は恐る恐る2話目を押した。
「皆川悠太」
『皆川悠太さんは山本さんと同じように冤罪で捕まりました。彼はその後、人間不信になり、直接の人間関係を避けるようになってしまい、リアルでの生活が苦しくなってしまいました。なので、楽にさせてあげることにしました。彼に与えられた配役は《《コオロギ》》。死に場所はゼペットの家から1番近い爬虫類店です。』
工藤はネットで弱みに漬け込み、心を病んだ人間に目星をつけて殺しを行った。新井はそう確信する。
すぐにこのことを報告。自体は大きく動いた。
工藤から押収したスマホを調べたがそんなアプリは入っていなかった。彼がどこかに仕掛けたもう1つのスマホがある可能性がある。
それを見つけることが出来れば、こっちの勝ちだ。
既に彼の家には捜査に向かっている警察官がいるが、スマホかパソコンを探すという項目が追加された。
もちろん、取調室にもこの情報が行った。
時刻は1:55。
木場と船堀から怪しい人物の情報は入ってこない。




