第4話「ワルガキ」
取調室には緊張が走っていた。
常田は工藤を見つめながら頭の中で情報を整理し始める。
「工藤さん。知っていることがあるなら教えてください。救いようのないストーリーを救う。それは一体どういう意味なんですか?」
「あなたは今、進みたがっていますよね。まるで、物語の先や結末が気になって手を止められなくなる。そうでしょ?」
常田の言っていることは1ミリも伝わっていないと、そう感じた。これ以上、声をかけても無駄、自分の話を聞く気は一切ないのだと悟る。
「では、あなたの話を聞きましょうか。どんなものなんですか?」
「ただの本の物語ですよ。『ピノッキオの冒険』。その話を聞いてくれればいいんです。しっかりと自分の役割を果たしながらね。あ、カンニングしても構いませんけど、物語を先走ることは許しませんよ?僕は1ページ、1ページずつ進んでいきますから。」
常田はピノキオの話は知っていた。絵本で読んだこともある。子どもがピノキオのビデオを見ているのを一緒に見たことすらあるが、本当の物語、つまり原作は知らなかったのだ。
ここで疑問になるのは、それが事件となんの関係があるというのかという点。
「では、《《始めましょう》》。
小さな街で、ゼペット爺さんという人がいました。その人はとある日、不思議な丸太を貰うんです。触ればくすぐったいと喋ったりする不思議な丸太です。そして、ゼペットはその木で人形を作るんです。その人形に『ピノッキオ』と名付けるんです。」
常田は感じた、何かが始まる、いや、《《始まった》》という予感を。
「ピノッキオは作ってもらったというのに、家から逃げ出すんです、ゼペットが追いかければ、大人の人にゼペットを悪く言い、周りはそれを信じてしまい、ゼペットは捕まってしまう。どうですか?こんな子ども。とてもワルガキだと思いませんか?」
「そうですね。昔の童話にありがちな設定です。その分、こちらに伝えたいという思いは強烈に伝わるものなんですよ。童話というのは。」
「そうですね。そして、ピノッキオは空き家をみつけ、そこに住むことにするんですが、コオロギがいたんです。大人の言うことを無視すれば痛い目を見るぞと忠告されますが、ピノッキオは物を投げてコオロギを殺してしまうんです。最低最悪のワルガキですよね。これが1ページ目です。」
「待ってください。どういうことですか?事件となんの関係が?」
「自分の役割に従ってください。物語を終わらせることのできるのは、常田さん、あなただけです。」
時刻は0:45




