第2話「ダークファンタジー」
葛西警察署、取調室。
部屋の椅子には工藤氏が座っている。今は1人だが、実際は見られている。工藤氏はと言うと、かなり冷静な態度をしているようだ。
工藤が通報してきた時の時間は午前0時十分。おそらく殺された時間は0時と見て間違いはないだろうと警察は考えている。
部屋に刑事が入ってくる。2人程入ってきた。
1人はいかにもベテランといったような貫禄があるにも関わらず、その若さが目立つ、そんな印象を受ける。整えられた髪、キチッとした服装。
だが、もう1人はどうだ?
片方のベテラン刑事に比べれば少し目劣りするような感じがする。パソコンの場所に着いたのを見たところ、話した内容を打ち込む役割をするための人材。いかにも似合いそうだと感じた。
男にしては少し長い髪、目の下には少しクマができていて、いかにも根暗だ。
「工藤さん、でしたね。私は常田と申します。今回の件に関して、あなたは『この事件は自分が始めた。』そう、仰られたそうですね。」
「はい、間違いないです。本当のことですから。」
「ですが、あなたはあのアパートから不審な影が逃げ出すのを見たんですよね?」
「見ましたよ。ハッキリと、顔は見えませんでしたけど。」
「では、どうして、自分がこの事件を始めたと?」
工藤が常田の目を見て、少し口角をあげた。
人間との対話をしているはずなのに、まるでそうではないかのような。
「ねぇ、常田さんでしたっけ?『ピノッキオの冒険』って知ってますか?」
「ピノキオのことですか?それなら知ってます。ゼペット爺さんが、人形を作り、妖精が…」
「違います。それは、ピノキオです。僕が話しているのは『ピノッキオの冒険』なんですよ。おそらく、常田さんが言う物語はかなりオブラートに包まれたストーリーです。ですが、本当はかなりのダークファンタジー。」
なぜ急にそんな話をするのか。常田は一瞬考えた。事件との関係性。この時点で、工藤が犯人であるとするのなら共犯がいることは確定している。あとは、どうやって口を割らせるかが重要となってくる。
「単刀直入に聞きます。あなたは犯人と共犯ですか?2人で殺しを計画しているのでしょうか?」
変に刺激してしまうのを恐れてはいたが、この後のことを考えるとすぐにでも事件を解決したいと思っていた。
だが、工藤は答えない。
「常田さん。話してもいいですか?聞いてくれますか?ピノッキオの冒険の話。」
「それがこの事件に繋がるとでも言うんですか?」
「それは、あなた方、警察次第ですよ。優秀で真実を大切にする警察の皆さん。」
皮肉めいたような言葉。そして表情。そのどれもが自分を挑発するものであることは、常田は分かっていた。
だが、1つだけ分からないことがあった。
「あなたは何が望みなんですか?」
「僕の話を聞いて欲しい。救いようのないストーリーを警察さんの手で救えるのかどうか、見てみたいんです。あ、この部屋から出たらそこで僕の話は終わりにしてしまうので、ご了承ください。」
常田は部屋から出ることができなくなった。出てしまえば、話が終わってしまい、犯人を捕まえることが難しくなる可能性があったからだ。




