第19話「真相」
時刻は5:30。
常田はまだ、 取り調べ室にいた。
既に、葛西警察署には伊藤祥太は連行されている。
「工藤さん、満足ですか。これだけの人間を殺しておいて…」
葛西臨海公園の海の中に沈んでいたのは井口賢斗。
小説のページも公開がされている。
第7話「井口賢斗」
『井口賢斗さん、彼も冤罪です。彼に与えられた役は《《ロバ》》です。死に場所は海の中。』
あまりにもあっさりしている内容だった。
今までよりも少し短い。そして、話の中だとロバの中身はピノッキオのはず。
「満足したか?そうですね、これに満足もクソもあるんでしょうか。それに、誰も人を殺していませんよ。」
「何を言ってるんですか?あなたが話したストーリー通りに人が死んで行ったんですよ。ですが、最後のピノッキオ役の伊藤祥太さんは捕まえましたよ。彼が人形を海に落としたのも警察の目を欺くため、本当はそれよりも前に人を沈めていたんでしょう。」
工藤は呆れたような顔を常田に向けた。
「その人、誰も殺していませんよ。何回も言っているでしょ。そろそろ理解してください。その伊藤さんだって、人殺しじゃない。」
「なら、どうやって…」
「自殺です。」
後ろにいた根本がそう言った。
常田は驚きを隠せずにいた。どのくらいかと言うと、後ろを振り向くのに、とてつもない時間がかかるほどだ。
「そろそろ話してやったらどうですか。この事件の真相を。」
続けて根本がそう発言をした。すると、工藤の表情はニヤリと形を変える。
「この事件で死んだ人は、全員自殺なんですよ。頭の硬い警察はそのことに気が付かない。世の中と一緒ですよね。誰かを悪人にしなければ気が済まない世の中と。」
そう考えると全て辻褄が合う。
1人目は自殺をしたあと、伊藤はその場にはいなかった。工藤はその場で第1目撃者を演じた。周りに住んでいる住民が音が《《全くしなかった》》と言ったのも納得がいく。
映画の中で死んだのも、自作自演。 警備員として中にずっといて時間になったら自殺をする。
その他の人物も全員が自作自演をした。
「全員、警察の助けを待っていたんですよ。彼らは罪なき人です。なら、死ぬ必要はない。けれども、社会に絶望し生きる気力を失った。彼らには時間が残っていなかったんです。何時になった時に死ぬようにと、警察が止めてくれるなら自殺を辞めるように、そう伝えていました。」
「なんで時間が分かった?お前は完璧に時間を把握してページを進めていた。」
「あなたの後ろの人間が協力者だからです。ぼくは言いましたよね。『ネット関係は苦手』だと。こうやって本気で死ぬ人間を集めてくれたのも根本さんです。僕らは友達でしたから。」
常田は挟まれたような感覚になった。こちら側だと思っていた人間が敵だったなんて。
そうか、時間になった時、後ろの根本が合図を出せば正確な時間でページを進めることができる。後ろにいれば前を向いている自分に気づかれることもない。
「常田さん。あなたの配役、なんだか分かりましたか?」
「…」
「『読者』ですよ。そして、僕の配役は『本』。本を開いた時、終わらせられるのは誰ですか?」
床に叩きつけられたかのような衝撃が体全体に走った。
自分自身がこの物語を閉じれる可能性があった張本人だったのだ。その方法はこの部屋から出ること。
「私が途中で外に出れば、物語は終わったんですか?」
「そうです。そうなれば、根本が全員にメールを送り、自殺は止まりました。常田さん、僕は捕まりますか?」
「罪なき人の命を弄んだんだ…」
「弄んだ?弄んだのはどっちだ!?いいよなお前たちは!お前たちが悪だといえば全てが悪になる。だから冤罪が生まれるんだ!冤罪になった人間のあとのことも知らないで、のうのうと生きているお前たちに腹が立って仕方ないんだよ。悪くないのに悪い人間にさせられる気分が分かるか?だから、警察を悪にしようと計画を練ったんです。あなたの心には自分が終わらせられたストーリーを続けたんですから。これで僕のストーリーも終わりです。」
カチャという音が後ろから聞こえ、振り向くと根本が工藤目掛けて銃を構えていた。
バンッ!




