第18話「逮捕」
「おい、しっかりしろ。」
小山から声をかけられ、ぼーっとしていた亜久津は我に返った。バスの一件で、亜久津は途方にくれたような気分になってしまっていたのだ。
それに対して小山は変わらない。見習いたいものだ。
車でまた葛西臨海公園に向かっている。運転したくないと少し駄々をこねて、小山に運転してもらっていた。できることならもう現場に出向きたくないと思っている。あんな目の前で救えなかったと思うと自分のせいだと思わずにはいられなかったからだ。
しばらくして、現場に到着。
色んな場所を確認する。怪しい人物がいないか。
お世辞にも真面目にやれているとは言えなかった。
時刻は4:40。
もうすぐ5:00になってしまう。また人が死ぬ。それを止められるのは自分たちだけ。
「なぁ、真面目にやってるか?」
「あぁ!?やってるって見て分からないのか?人を殺されて、犯人が悪いのに俺たちのせいにされるんだろ?俺はバスの横にいた、それが何を意味するのか分かって発言してんのかよ!?」
話しかけられた方を見ると小山だった。
自分の中にある煮えたぎるような不満を彼にぶつけてしまった。いや、というより、彼でよかったかもしれない。
小山は分かるよと言わんばかりの表情を見せた。
他の警察官に言っていたら、終わってたかも。
「落ち着けないとは思うが、今は理性を保たないとダメだ。犯人の思うツボ、俺だって目の前で人を救えなかったことを後悔してる。でも、まだチャンスがある。人が死ぬことをチャンスと呼ぶのは不謹慎だけど。救えるなら俺らで救わないと。」
「あぁ、悪い、えげつないこと言った。頭が冷やせるなら冷やしたいよ。」
「なら、ちょうどここに海があるぞ。」
「冗談はよせよ。」
少し笑いあった。心が前向きになったような音がする。
4:58。
何も無かった。
亜久津は小山と必死に色んな場所を探した。
周りはもう諦めムード。そんなんでも警察官かって言いたいが、亜久津が言えることではなかった。
その時、橋のようなところから、誰かが何かを落とした。
形は…人!?
「おい!待て!」
小山と一緒に亜久津はその人物目掛けて走り出す。
橋の上にいた人物も逃げるように走り出す。フードを被っていてよく顔が見えない。
走って走って走った。
壁を飛び越え、ようやく追いついた。
「捕まえた!」
小山がフードを取り、顔をこちらに向けるとその顔は、あの時、パチンコ屋のそばの木で死んでいた3人のうちの1人の顔だった。
亜久津はこいつの顔に見覚えがある。
パチンコ屋の木の奥にいたやつだ。
「なんでお前が…だって、お前は…」
「話はあとから聞けばいい、とりあえず連行するぞ。」
「待った!海になにか落としてたよな。」
「大丈夫だ、他に見てた警官が…」
その時、無線から声が聞こえてきた。
『こちら、海に落とされた物を拾ったが、ただの人形だった。それから、海の中に人が沈められていたのを発見した。』
時刻は5:05。




