第16話「毒殺」
パトカーの音が葛西の街に鳴り響いた。
目的は高速バスの進行を全て停止させるため。亜久津もその現場にいた。助っ席には小山を乗せている。
時刻は3:41。4:00までもう時間が無い。
自分たちは高速バスを見つけ次第、運転手に声をかけ、止めるという任務が言い渡されている。
「さっきまで、臨海公園を探せって指示だったのに、今度はバスジャックでもしろってんですかね。」
思っている不満のようなものが思わず口から溢れ出てしまった。
「おそらくは上のものが何かに気づいたということだろうな。バスの中の人が死ぬ、とかな。」
この状況下においても小山は冷静だった。自分と同期ぐらいなのに先輩と後輩ぐらいの精神の差を感じてしまい悔しい思いをした。
今までの指示では、殺されそうな人物、怪しい人物を探せとの命令だった。しかし、今回はバス。
もしも、爆発でもしたらこれまでとは比にならないぐらい人が死ぬぞ。
それを許してしまえば、警察の信用はガタ落ち。取り調べ室にいるやつの狙いはこれなのかもしれない。少ない人数を殺してから、大勢を葬る。
無線から1つの高速バスを止めたとの報告が上がる。
その後も次々と高速バスの停止と乗客と運転手の避難が報告されていく。
3:55。
亜久津は1つの高速バスを発見した。
すぐにパトカーを横につけ、運転手に合図を送る。しかし、運転手からの反応がない。
そして、少し高くて分かりずらいが、バスの中には誰も乗っていないようだ。
亜久津や小山がどれだけ声をかけたりクラクションを鳴らしても全く反応がない。
バスを止めようにもパトカー1台では止めることはできない。
「俺が飛び乗る!もう少し横につけろ!」
小山の提案に驚いた。そんなアクション映画のような展開になれるものなのか?
「ダメです!危険すぎます!」
「そうでもしないと止められない!」
渋々、提案を飲み、パトカーをギリギリまでバスの横につけた。扉を開け、小山はバスのバックミラー目掛けて飛び、掴むことができた。
ドアのガラスを銃で割ろうとしたが、車体が揺れ、小山は銃を地面に落としてしまった。
何とかドアのガラスを割ろうとするが全く割れない。そして、バスは急に停止し、ドアが開いた。
バックミラーに掴まっていた小山は地面に降り、バスの中に突入する。
パトカーから降りた亜久津もバスの方へ駆け寄る。
「亜久津!救急車を呼べ!」
言われた通りに救急車を呼んだ後、被害者の様子を見に行くと、目は限界まで開き、口から泡を吹いてしまっていた。
小山が脈を取っていたが、首を振った仕草を見て察してしまった。乗客は0人。
「これは、毒殺かもな。」
「毒殺?この時間を見計らって毒を仕込んでいたってことですか?」
「全て計算されているのかもしれない。もう少し早く見つけられていれば止められたかもしれない…」
小山の顔は暗く、悔しさが隠しきれない表情であった。
確かに症状は毒殺と似ている。おそらくはそうなのだろう。この後、解析をしてもらうが、また自分たちは人を救うことができなかった。
時刻は4:00。




