第四話 怪力少女と話してみた
「.......全く、少し話したら俺はすぐに人間の国の方へ行くからな。」
俺としては、この世界について色々と知れる情報源になる場所に早く行きたいのだ。
こんなよく分からないやつに足止めされては困る。
それに怪異もいつまた出てくるか分からないしな。
ふと怪力少女の方へと顔を向けてみると、頬をぱんぱんに膨らまして怒ったような素振りをしていた。
「せっかちな人ですね!こんなにもかわいい女の子が目の前にいるのに無視して行こうとするなんて!」
....確かに顔は可愛いが、さっきバキバキの筋肉を見せつけられたせいで何とも思わなくなった。
「じゃあ取り敢えず怪しいやつじゃないか確認するために自己紹介してくれ」
「はーい!私ははらわたちゃん16さい☆みんなを元気バリバリにするために毎日すーぱーえくせれんとな薬を古今東西で売り回っています!」
ーーーまるでどこかの魔法少女アニメに出てきそうな自己紹介だ。嫌だな、こんな魔法少女。
しかし、なんだはらわたちゃんって。絶対本名じゃないだろ。
しかも内臓の名前だし。
あと物凄く頭が悪そうだ。
......考えれば考えるほどこの自己紹介に対する悪口が浮かんでくる。
「もっとちゃんとした自己紹介をしてくれ.....」
今のはあまりにも酷くて目も当てられないレベルだ。
「えっ!これでも私大真面目だったつもりなんですが......」
これが筋肉バカというやつか。
初めて見た。
「仕方ない人ですねー。take2です!」
いや仕方ないのはお前なんだがな。ほんとに。
すると紬はそうはいったものの少し恥ずかしかったのか、目をぎゅっとつむった状態で
「私は篠崎紬です!全国のみなさんを元気いっぱいにするために色んなところを練り歩いてる人です!」
と言った。
真面目にやればちゃんと出来るじゃないか。
なんか安心した。
「お前薬売る時はこっちの方の自己紹介を使え。正直に言うが前のお前ただのやばい人だったぞ。」
俺はびっ!と指を紬の方へと指す。
「うっ!!確かにずっと私宣伝頑張ってるのにみんな離れていくなーって言う自覚はありました。でもこうやって面と向かって言われてしまうとちょっと内臓にくるものが....」
紬が急に見せてはいけないものを吐き出した。
「お前健康だったんじゃないのか?」
「実は私、数ヶ月以上ずーっと道端に生えてる草とかキノコとか私が売ってる栄養剤と、そこら辺の川の水で生きてきたんです。その影響が今 来たんですかね......」
俺ははぁ、と大きくため息をつく。
もしかしたら、こいつはこいつなりに頑張ってきたのかも知れないな。
「まあいい、お前のことについて一ミリはわかったから今から一緒に人間の国の方に行くぞ。」
「......へっ?」
俺はきょとんとした顔をした紬の手を引く。
「何で一ミリしか理解していない人を連れて行こうとするんですか」
俺はガン無視で紬の手を引っ張り続ける。
草とキノコと栄養剤しか食べてなかっなかったやつが大丈夫な筈がない。
きっと人間の国に行けば美味しいものが食べられる場所が一つや二つくらいある筈だ。
さっさと向かうとしよう。
お金は持っている。
ショルダーバッグに財布が入ってたからな。
まあ、人間の国でこの通貨が使えなかったら意味はないが。
三途の河にいた時、何処となく昔の日本を連想させるものがあったのでここでもこの通貨が使えると信じたい。
紬は少し困ったような表情を浮かべて、気まずそうに言う。
さっきの威勢は一体どこにいったのやら。
「....あなたの名前、そういやまだ聞いてなかったです。」
そういえば言ってなかったな。
もしかしたら俺って名前の割にそこまで積極的な奴じゃないのかも知れない。
「俺の名前は秋津陽葵だ。適当に呼んでくれて構わないぞ。」
「じゃあ適当な人で!」
「全力で却下させてもらう。」
「さっき何でもいいって言ったじゃないですかぁ!!」
「いや、いくらなんでもそんな適当すぎる呼び方されたくないわ!」
嘘つき!と言わんばかりの顔をしている紬だったが、その表情はどこか嬉しそうにも見えた。




