第参話 怪異に出会った
はぁ、はぁ........
久しぶりにかなり走ったせいで、ものすごく疲れた。
部活は卓球部で特別運動が得意というわけではなかったが、数ヶ月走ってなかっただけでこんなにも体力が低下しているとは思わなかった。
水が欲しくなったが、あいにく水筒はリュックに入っていなかった。(入ってたとしても数ヶ月前の水は腐ってるだろうな)
辺りには草原が広がっていて、木も生えている。それに、奥には人間の国と思われる建物もある。
ここまでくれば流石にあいつら妖怪もいないだろう。
「少しだけ休憩したら、あそこまで向かうか。」
そうして地面に手をついた時、目の前に突然地面からぐにゃぐにゃとした黒いものが出てきたと思ったら、俺の方に向かってきた。
「うわぁ!」
あのぐにゃぐにゃしたのが座敷童子のいっていた怪異か?
確かに妖怪には似ても似つかないな。
あれに触れるとよく無いことが起こる。
嫌でもそれは直感で分かったので、俺はすぐに立ち上がり、全力で人間の国の方へと走った。
しかし、怪異側も追いかけてくるだけではなく、攻撃を仕掛けてきた。
俺の足はそいつの攻撃で動かなくなり、うまく歩けなくなってしまった。
必死に手を使って前に進もうとするものの、すぐに怪異に追いつかれてしまう。
「あ.........」
俺は初めてその時、とてつもない恐怖を感じた。
自分がこれからどうなってしまうのかわからない、という恐怖だ。
その時突然、少しボロくなったお守りがかっ!と光った。
すると怪異はぐちゃくちゃという奇妙な音と立てながら消滅していった。
目の前でよく分からないことが起こり、頭の理解が追いつかない。
どうやら俺の知らないことはまだまだ沢山あるみたいだ。
「だいじょーぶですか?」
「........へ?」
へたり込んだ状態の俺の顔を、魔法少女のような格好をした少女が俺の顔を伺うような様子で覗き込んできた。
「君、めっちゃ怖いものでも見たみたいな顔してましたよ?」
「いやさっき怪異に捕まってもうだめだと思ったらこのお守りが急に光出して、怪異が消滅していったんだ。」
「........何ですかこのぼろぼろのお守りは!縫われている糸が全部切れちゃってるじゃ無いですか!」
さっき自分でわざわざその糸を切った、なんて言えるはずがない。
しかし、うまく誤魔化せそうな言い訳も見つからない。
「このお守り、こんなにぼろぼろになっても効果があるなんて。よっぽど思い入れがあるんですね!」
少女が満面の笑みを浮かべて俺の方を向いてきた。
いや、さっき貰ったばっかりの物なんだが。
「愛の力って凄い......!」
勝手によく分からない誤解をされているが、都合が良いので黙っておこう。
「お前、魔法が使えるのか?」
「使えません!!!」
きっぱりと否定されてしまった。
じゃあその身につけてる杖とアクセサリーと本は何だ。
魔法が使えなかったらただのコスプレイヤーじゃないか。
「ですが安心してください!握力82キログラムボディビルダーヒーラーのこの私が魔法のようにあなたを腹筋バキバキのマッスルにして差し上げます!!!!」
「.......結構です。」
いや、いきなりそんなこと言われても困るだけだわ。
「お前本当にヒーラーか?この傷は治せるのか?」
俺はさっき怪異に掴まれた時の跡を見せる。
出血とかはないのだが、くるぶしの部分が黒くえぐれて動きにくくなってしまったのだ。
「はい!治せますよ!」
あまりにも怪しい。
すると魔法少女?は荷物からサプリメントを取り出してきた。
「これを飲んで毎日腹筋千回すればそんな傷負わなくなりますよ!」
こんなリアルヒーラーは嫌だ。
俺は踵を返した。
こんな碌でもないのに関わりたくない。
「待ってください!今ならこのサプリメント一瓶無料で差し上げますからぁ!!」
ショッピングテレビみたいなことを言いながら、少女ががしっっっ!!!と俺の腕を掴んできた。
今日一日で俺は何回体を掴まれなきゃいけないんだ。
しかも彼女の握力が強いせいで俺の腕の骨が粉砕しそうなんだが。
「待つから俺の骨を折るのはやめてくれ!」
仕方なく俺は少女に付き合ってあげることにした。




