八話
次の日電車の中で私はウオークマンを聴きながら下を向いていた。
すると誰かに肩をトントンされ、びっくりして顔を上げるとあの人だった。
彼はしゃべらずに、「ごめんんなさい」のジェスチャーをして、私に手紙を渡してきた。
私は頷いて、「ありがとう」と言って彼と別れた。私たちの一連の行動が奇妙に見えたのか、周囲の視線を集めてた。私は手紙を読んだ。
「何度もお声がけしてくださっているのに、返事が遅れてしまいすみませんでした。私は喉のガンになってしまい、声帯を取ってしまった為しゃべれません。そのため声をかけられた時、しゃべれない自分を責めました。でもどうかわかって下さい。セーラー服姿素敵ですよ!」
空気の入ってない風船みたく、とぼとぼと学校に向かった。
きっと私は無意識に歩いていたと思う。
マリが
「様子変だけど、どーかーしーたーのー?」
と訊かれたから
「これ・・・」
と言って手紙をマリにだけ読ませた。
すると
「やっちゃったね・・・」
「どうするこれから」
マリが言った。
「そりゃ好きだけど」
「ど、何よ?」
「相手の気持ちもあるし」
「差別でもないけど、この彼が悩んだように、さちえも付き合ったら悩むんだよ?それでもいいの?」
「私には特殊な能力があるじゃん?
その能力使ってばっかの恋しかして来なかったから、普通にみんなみたいに恋したいな。
って。後付けになっかうけど」
私も手紙を書く。
15分休憩がアッという間に終わってしまった。
さちえは何か覚悟を決めたようだ。
彼の恋人になろうなんて、そんまおこがましい事思ってない。
ただ…彼の人生の中の一人にでもなれたら嬉しい。