第八話 幕間です。守護騎士ルガルドⅠ
昨日の更新時に伝えられていれば良かったのですが、中々最新話を書く時間が取れていなかったので、前話の続きはもう少しお待ちいただけると助かります。明日、もしくは明後日までには更新しようと思っています。
本日は少し短いですが、ルガルド視点のお話を更新させていただきます。
-ルガルド視点-
自分は辺境の、特筆すべき点もない村の生まれだ。
村として大きくはなく、特産とも呼べるようなものもない。ありふれたものを育て、収穫していた。そんな村だ。
当時齢十五程だった自分は、大きな街への憧れはあったが、特に不満もなく、平和な日常を過ごしていた。
畑を耕し、村に近づいて来た魔獣を狩る。その繰り返し。
だが、何事も変わらないものは無い。
平穏は緩やかに終わりを告げていった。
業魔や魔獣に襲われたわけではない。
作物が実らなくなっていった。ただそれだけだ。
街の人間からすれば作物の値段が上がる程度の問題かもしれないが、俺達からすれば生死に関わる問題だ。
どんな方法を試しても光明は見えず、最終的に自分たちに出来たことは神に祈ることだけだった。
来る日も来る日もただ祈り続けた。未だ残っている蓄えによって凌げてはいるが、いつかは俺たちは飢え死んでしまう。
後から思えば、この時点で国、あるいは統に助けを求めていれば何とかなったかもしれない。
しかし、未だかつて無い事態に村の皆はそんな事を考えられる余裕があるはずもなく、その時には手を差し伸べてくれるかも分からない存在に縋る方法しか頭に残っていなかった。
無情にも自分たちの祈りが実ることはなく、日が経つにつれて祈りを捧げる者は少なくなっていった。
ただ終わりを待つ者。終わりを受け入れられず、しかし為す術もない状況に苛立つ者。様々な人間がいた。
その中でも自分は神に祈り続けた。頭も良くなく、大して要領がいいとも言えない俺にはこれぐらいのことぐらいしか出来なかったからだ。
ある日、俺はいつも通り祈りを捧げていた。「この村が前みたいに豊かになりますように」と。
だがこの日に限っては続けてこう祈っていた。
「俺の持っている全部を差し出します」と。
別にこの生活に嫌気が差した、とかそういう事ではない。ただ単純に村の皆や家族が助けられるのなら、自分の持っているもの、命を含めた全てのものが小さく思えたのだ。
それが切っ掛けだったのかは分からない。だが、そう祈った直後、声が聞こえてきた。
『他を守り、救いたいのならば、自らを犠牲にしなさい。自己から乖離したものを贄にしてはならない』
「え?」
それは聞いたことの無い声だった。
この村は広くないので、村の人間の声だったら誰だか分かる。こんな声のやつはいない。
さっきの言葉の意味を聞こうと周りを見渡しても、声の主と思しい人間はどこにもいなかった。
村の人間や、村の外の人間の姿すら。人間の影と呼べるものはなかった。
気のせいなのかもしれない。そう思った自分は日課の祈りを切りあげ、家へ戻ろうとした。
そして有り得ない光景を目の当たりにする。
畑一面に、見たことの無いぐらいの恵みが実っていた。
この日を境に、自分は豊穣と戦の女神様への信仰を深めていった。
誤字報告をしてくださったお二人、ありがとうございます。後ほど修正させていただきます。
感想を書いてくださったお二人もありがとうございます。大変励みになります。
また拙作を読んでくださっている方もありがとうございます。予想以上に多くの方に読んでいただき、ありがたいと共に、汗が止まりません。
これからも「ワケあり回復術士」をよろしくお願いします。