食後のティータイム《サミュエル side》
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兄さん達の居なくなった食堂で、僕は一人物思いに耽る。
フツフツと湧き上がる激情を抑えながら。
依然として、兄さんに隙はなしか……完璧すぎて、嫌になるなぁ。
まあ、今日は珍しく父さんに叱られていたけど。
私語を慎むよう言われていたことを思い出し、僕は小さく笑う。
でも、直ぐに真顔となった。
こんなことで喜んでしまう自分が、嫌になって。
『皇太子の座から引きずり下ろすネタを見つけたなら、ともかく……』と思いつつ、一つ息を吐く。
やっぱり、社会的にどうこうして兄さんを廃太子させるのは難しいね。
今のところ大きな失態はないし、仮にあったとしてもソレを糾弾出来る場面があるとは限らない。
揉み消されて終わりという展開も、充分有り得る。
何より、余程のことがない限り父さんは皇太子の選出を覆さないだろう。
国の舵取り役である皇帝が、意見をコロコロ変えるなど論外だから。
『国民に不信感を与えかねない』と考え、僕はスッと目を細めた。
タイムリミットを考えても、物理的に兄さんを消すのが一番。
それなら、自然と僕が皇位を継げるから。
とはいえ、暗殺も簡単じゃない。
なんせ、兄さんの傍には第一級魔術師のディラン・エド・ミッチェルが居るのだから。
先日正式に護衛へ加わったみたいだし、より殺しにくくなるのは確実。
力押しで勝てる相手じゃないのは分かっているため、僕は頭を悩ませる。
『現に昨日の襲撃は上手くいかなかったし……』と思案しつつ、一旦自室へ戻った。
そこで食後のティータイムを挟み、途方に暮れる。
やはり、これと言っていい案は思い浮かばなくて。
『もう既に詰んでいるんじゃないか』とさえ思う中、ふと窓越しにピンク色の花を見た。
と同時に、とある人物のことを思い出す。
「そういえば────兄さんの護衛の中に見ない顔が居たな」
ディラン・エド・ミッチェルと小声で会話していた桃髪の女性を思い浮かべ、僕は少しばかり興味が湧いた。
だって、あの引きこもり魔術師が他人に関心を持つなんてなかなか無いことだから。
『場合によっては、利用出来るかも』と思い立ち、僕は席を立つ。
「一先ず、調べてみるか」
────ということで、早速部下に指示を出してあの女の身元を洗った。
最近、エテル騎士団に入ったばかりの新人。名はグレイス。平民のため、苗字はなし。
帝都へ来る前の経歴や足取りは、未だ調査中。
『田舎から来たのか、あまり痕跡が残っていないんだよな』と考えつつ、僕は自室のソファに座る。
「それにしても、第一騎士か。凄いね」
女性がエテル騎士団に所属出来ただけでも珍しいのに、入団して速攻昇格など他に類を見ない出世ぶりだろう。
恐らく、史上最速で第一騎士になったのではないか。
「そんな実力者が、兄さんの護衛とは……ますます、やりづらいな」
魔術師の苦手とする接近戦を補える人材ということもあり、僕は危機感を抱く。
第一級魔術師と第一騎士のコンビなんて、厄介なことこの上ないため。
「でも────逆にあの女をこちら側へ引き込めれば、かなり有利となる。上手く行けば、ディラン・エド・ミッチェルも寝返るだろうから」
二人が恋人関係であることを掴んでいる僕は、ニヤリと口元を歪めた。
一発逆転の鍵となるのは間違いなく第一騎士グレイスだ、と確信しながら。
相手は所詮、平民。『褒美をやる』と言えば、あっさりこちら側につく筈。
『兄さんにそこまで肩入れする理由もないだろうし』と思案し、僕はスッと目を細める。
「さて、まずはどうやって接触するか考えるとしよう」




