表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第五列 ――最強スパイと没落騎士令嬢の共同戦線――  作者: 平下駄
第3章 マイオレ基地
67/73

プレゼント

「色々と勉強になりましたね」

 美術館からの帰り道。セシリアは満足気な顔を浮かべていた。

「それはそうだけど、休日としてはあまり出来は良くないな」

 結局この日は、美術館巡りにほとんどの時間を割いてしまった。ウツロは少し残念そうな顔をする。


「他の場所はまた今度、それでいいじゃないですか。楽しいことは先延ばしにしても苦にはなりませんよ」

 セシリアは鼻唄混じりで上機嫌だった。

「そういや、水着の出番って結局あるのか?」

 マイオレに来る前の唯一の買い物。使わずに終わったらもったいないとでも思ったのだろうか。


「エライザさんに聞きましたけど、ちょっと時期が早いとのことです。七月になれば、泳げるビーチもあるって」

 ならば、あの買い物は結局無駄になってしまったのか。ウツロは人知れず心の中でぼやく。


「夏休みになったら遊びに来ましょうね。みんなも連れて」

 これもまた、楽しみの先延ばしなのだろう。ウツロは無意識に目を閉じて頷いていた。辺りも少しずつ暗くなりかけ、街もどんどん活気付いてくる。ウツロはふと露天の店に目がいく。そこで扱っているアクセサリーが不思議に思ったからだ。青と白が混じり合ったような、どこか神秘的な雰囲気を感じさせる美しい色合い。気付けばそこで足を止めていた。


「ウツロ、どうしたんですか?」

「綺麗だと思ってな」

 きょとんとした顔から、セシリアは状況を理解するのに三秒かかった。

「ああ、アクセサリーの方ですね。これは、"花房"ですか?」

 店員はセシリアの言葉に頷く。


「お嬢ちゃん、博識だね。暗闇の中で青く輝く珍しい宝石。兄ちゃん、気に入ったのなら買ってきなよ。二つセットで安くしておくから」

 普段はこの手の売り文句は意にも介さないウツロだったが、今日ばかりは魅力的に聞こえた。迷わず購入して、早速片方をセシリアに渡した。


「いいんですか、もらっても?」

「気に入ってもらえるのなら」

 セシリアは指にはめ、月光に照らしてうれしそうに微笑んでいる。その様子を見て、ウツロはこの宝石に惹かれた意味を理解した。


『そうか、こいつは俺の瞳にそっくりだ』

 サンセベリアでは誰にも見せることはない本来の青い瞳。ウツロは自然と自分に似たものを選んでいたのだ。


「それが、はじめてのプレゼントかな」

「前に魔道具の指輪を貰いましたよ?」

「あれはあくまで俺も貰い物だからな。こうして実際に買ったそっちの方が、値打ちあるだろ?」

 実際、娼婦から貰ったなどと言ったらとんでもないことになる。成り行きとはいえ、恐ろしいことをしてしまったと、ウツロは今でも後悔していた。


『便利なものではあるんだけどな』

 ウツロの言葉を聞いて、セシリアは中指にはめていた指輪を付け替える。

「なら、今日からはこっちにしますね。ウツロの正真正銘のプレゼントですから!」

 これでウツロの不安も、ようやく解決される。安堵の笑みを浮かべて、同じように自分も青い指輪をはめる。


「こっちの魔道具もちゃんと大事にしますからね」

 道具に罪はないので、そうしてもらえると助かります。本音をしまったまま、ウツロは頷いた。

「じゃあ、遅くならないうちに帰りましょうか」

 二人はマイオレへの帰路に着く。しかし、その途中でウツロは妙なものを目にする。ほんの一瞬だったが、視界の端で捉えた光景。夜が深くなっていく森の中を駆ける知り合い二人。


「今、ヨーコとルカウが通っていったな」

「え? どこですか?」

 ウツロは指を向けようとしたが、すでに二人の影すらない。


「でも、不思議ですね。基地とはかなり距離がありますよ」

 セシリアの言う通り、散歩などで来る場所ではない。

『何か基地であったのか?』

 ウツロの中に、疑問が生まれた瞬間だった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


ブックマーク、評価いただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ