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第五列 ――最強スパイと没落騎士令嬢の共同戦線――  作者: 平下駄
第2章 帝都娼婦連続殺人事件
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故郷にて

【注意】この章には、R15指定に準ずる描写が登場します。ご覧になる際には、お気をつけください。

 リトガルト王国にて。すでに日が沈み、夜を迎えていた。この日は、ちょうどウツロたちの現場実習の初日である。


「それにしても、あいつがスパイで大丈夫なんですか? 自分を曲げて、人に媚びへつらうなんて死んでも断るタイプですよ」

 暗い夜道を歩く軍人二人。初めての定期報告を受け、ボンビジナ司令とウツロの同僚であるホウショウ少尉は、彼を懐かしむように話に花を咲かせていた。


「上層部からの条件は、正体がバレても絶対に生還できる人間。これを満たしているのは言うまでもないだろ?」

 ホウショウは、顔をしかめる。しかし反論はない。


「それにな、私はスパイに最も重要な素質は、国を裏切らないことだと思う。やつには、ただならぬ愛国心がある。それ故に自分を曲げることすら許さない程のものだ。大丈夫、上手くやるさ」

 背中を叩かれて、ホウショウはようやく顔の緊張を解く。


「大国のノウハウにないスパイでしょうしね。あいつなら、何かとんでもないことでも楽々とやり遂げてきそうな雰囲気もありますしね」

「そういうこと」

 目的地の目の前に来ると、ホウショウは立ち止まり、右手で敬礼をする。


「では、司令。三時間後にお迎えにあがりますので」

 足早に立ち去る部下の後ろ姿を見送って、ボンビジナは、とある民家の扉をノックする。


「エイザンか、入りなさい」

 出迎えたのは、カズライ・キロトリデ。相変わらず無表情で厳格な雰囲気を纏っている。


「相変わらずだな、カズ。いや、ちょっと老けたか」

「それはお互い様だろう」

 旧友同士は、互いに向き合って席につく。


「青の一族としての復帰の件、いけそうか?」

「問題ない。ゼンに役目を譲った後も、一度も鍛錬を欠かしたことはない」

「そうか。まあ、基本的には軍で対応して、無理そうならお前に声をかけるという形で調整しているから、そうすぐに声がかかることはない」

 ボンビジナは一つ手を叩いて、懐から分厚く重ねられた資料を取り出す。


「この件はおしまい。次はお前の息子についてだ。これが、今朝私のところに届いた報告書。お前のところのツバメ、あれは何とかならないのか? 早いのは助かるが、私の元に届けるために、窓ガラスをぶち破って部屋に入ってきたぞ」

 後始末が大変、とボンビジナは嘆いている。


「あれらは、代々着地が苦手だからな。大目に見てやってくれ」

 ボンビジナが差し出した報告書に、カズライは指一本触れない。


「届け方もだが、内容も中々面白かったぞ。潜入初日で正体がバレそうになったとか、ギャンブルで十二億稼いだとか。やっぱり、あいつを選んでよかったよ」

 笑みを浮かべるボンビジナに対して、カズライはさらに眼力を強くする。


「本当に、それで上手く任務を遂行出来ているのか?」

「読めば分かるさ。はっきり言って、完璧に近いぞ。貴族とのパイプづくりに、自身の力のアピール。何なら、帝国の宝物庫に保管されている聖剣について、形やその権能まで詳細に記したレポートもあった。やつは上手く潜入任務をこなしている」

 ボンビジナにここまで言われて、カズライはようやく報告書を手に取る。


「チセとアヤメも、そんな扉の後ろでコソコソしてなくても構わん。機密情報ゆえに他言厳禁だが、この場での閲覧は、このエイザン・ボンビジナが許可する」

 ボンビジナの発言によって、二人は傾れ込むように部屋に入ってきて、カズライの横に座る。


「ゼンは本当に無事なんですか?」

「お兄ちゃん、こっちにいる時よりもお金持ちじゃん!」

「ほう、向こうでも槍を持てるようになったのか」


 この場にゼンはいない。しかし、この瞬間キロトリデ一家四人が集合したように、ボンビジナの目には写った。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


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