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第二話

 話を聞くために田村家を訪れた。

 居間に通されて、座布団を勧められる。湯飲みで出されたお茶をいただきながら、話を進める。

「と、言うわけで、アンパンマンに該当する人が次に襲われる可能性が高いです。心当たりはありませんか?」

 婿と孫を心配して、栄子さんの両親も訪ねて来ていたので、まとめて話を聞くことにする。

「アンパンマン、ですか……。僕かもしれないですね。高校時代にあだ名がアンパンマンだったんですよ。顔が丸いもので。僕たち夫婦を狙っているのかもしれない」

 よし、動画の意図が読めたか? と思ったが、そうは問屋がおろさなかった。

「あら、私だってアンパンマンよ」

 と言い出したのは栄子さんの母である美代子さんだ。

「私、毎週町内パトロールしてるから、ご近所の方にアンパンマンみたいですね、って言われるの」

「それだったら俺だってアンパンマンだ」

 と言い出したのは、栄子さんの父の浩さんだ。勘弁してほしい。何人いるんだ。

「人に食事を奢るのが好きだからな」

「あなた、それはちょっと無理矢理すぎません?」

「お前だって結構無理矢理だろ」

 どうしましょう、先輩。と小声で田島が助けを求めてくる。そんなの私にだってわからない。

 こんなにたくさん該当者が出てくるなんて想定外だ。いいや、アンパンマンが持つ記号は多岐にわたる。誰にでも当てはまるキャラクターだと言えるだろう。

「祐一くんはどう思う? アンパンマン、誰だかわかるかな?」

「わかりません」

 僕もアンパンマンだと言われたらどうしようかと思ったけれど、はっきりした口調で、祐一くんは答えた。

「でも、そうだなあ。やっぱりアンパンマンは正義のヒーローですから、悪い奴をやっつける人のことなんじゃないですか?」

「あはは、それじゃあ僕たち警察がターゲットかもしれませんね」

 田島がふざけたことを言って笑うものだから、思わずため息が漏れる。

「さすがにそれはないだろ」

 ない、と思う反面、絶対に違うという確証はない。あの動画を作った人物以外に、答えはわからないのだから。

 その後、動画が投稿されたライングループに所属している人たちにも話を聞いたけれど、みんながみんな「私がアンパンマンかも」「きっとうちの子がアンパンマン」と、いう調子で、総勢三十人強のアンパンマンが現れた。

 アンパンマン候補全員に警備をつけられるほど人員が余っているわけもなく、私たちは途方にくれた。

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