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かけたので即投稿しました。 誤字脱字勘弁してください。
王宮から抜け出した俺とアレンは露天商の立ち並ぶ大通りへと来ていた。
「王子こんなところにそんな恰好で出向いたら大騒ぎになってしまうのではなくって?」
「エレットがそんなに僕のことを心配してくれるなんて、嬉しい限りだよ」
そういうことではなく一国の王子がこんな下町に出てきて騒ぎにならないかが心配なだけなのだが?
「お、王子!」
往来の全方向からかけられる声、ほら見たことかと走る準備をしていると。
「調子はどうだヤッカル」
「王子のおかげで最近は喧嘩もなく、それに見取り図を作ってくれたおかげで客足が増えましたわ」
「そうか、最初はあまり干渉するものでもないと思っていたのだがな、違法な物品や法外な値段で物品を売りつける輩、それに土地争いなど見るに堪えなかったのでな。つい手を出してしまって、反発を危惧していたが何事もないようでよかった」
「王子のおかげで大分商いがやりやすくなりましたよ、土地争いに絶えなかった露天商たちもローテーションを組むことで治まりましたし、それに伴う案内板の掲示で、店が分からなくなることもない本当に王子には皆感謝しております。ところで王子その後ろにおられる方があの?」
そういうと露天商のヤッカルは、王子の背後に立つ俺に顔を覗かせてきた。
「ヤッカルあまり色目を使うのではない、このお方は俺の姫様・・・になるかもしれない御方なのだから」
「こりゃたまげた、その王子の奥ゆかしさと言い1人の異性に肩入れされるなんて、あの方以来なのでは?」
「あの方?」
王子は少し恨めしそうにヤッカルを睨むと、ヤッカルもそれに気づいて謝りの手を挙げた。
「エレットは気にしなくていいことだよ? 私の心はいつだってエレットの物なのだからね?」
「王子? これから好きになるかもしれない御相手にもしも他に意中の相手がいらっしゃるともなれば王族であれば当たり前なのでしょうけれども、知っておかない手はありませんよね?」
俺から王子に詰め寄り、熱い視線を送ると王子も折れたようで。
「すまないエレット、自慢じゃないのだが、これでも俺は一国の王子にあれば、数多の婚姻のお話をいただいてね、それでも俺の心を射止める女性はいなかったのだある二人の女性を覗いてはね」
「そのお方の詳細を窺っても?」
「なに、この国のエレット同様辺境に住まわれる令嬢でね、あまりにも押しが強いもので一度折れてやったまでのこと、あまり無邪気すぎるため、こちらから直接お断りしたのだよ」
「いやーあの子は凄かったですよね王子。ここに来た時も珍しい物品を見つけてはあれはなんだ、これはなんだとそりゃもうドラゴンが飛来したかのように」
「ああ、まだあの頃は俺も歳が5つだったか、好奇心と言うものは怖いものだね本当に」
未だアレンも10歳なのだがその5歳の間に様々な経験をなされたことだろう、しかしいいことを聞いたこの王子はどうやら押しに弱いらしい、ならば今日から少しづつ天真爛漫な女性を演じて私と言う存在を異常分子に仕立て上げれば・・・
「ヤッカルすまないがそろそろお暇するよ、見張りの物が来るかもしれないからね」
すると王子は声を大にして。
「皆の者何かあれば王宮に私宛ですぐ届けるように! 私の耳に入らないこともあろう、その場合にはまたここに来るのでその時直接。これからここに王宮の家来共がくるであろうから皆悪さをするでないぞ! 私はこれからデートがある、邪魔をされたくないので川沿いを歩きに行ったと伝えてくれ!」
そう高らかに宣言した王子は川とは反対方面へ向けて俺の手を引いた。
「すまないねエレット、もう少し付き合ってくれ」
「いいですわ、いい情報も手に入りましたし」
歩いて付いた先には教会、いや孤児院だった。その敷地内からは多くの威勢のいい掛け声とともに木剣を打ち鳴らす音があたりにこだましていた。
「あ、王子だ!」
ここでもまた孤児院の子供達が王子を見つけるたびに声を上げた。
「タナにマシュにサラ、ヤグにダノ! 稽古に励んでいるな!」
「「「「「はい!」」」」」
子供たちの大きな声に気圧されるかと思うくらい元気な頼もしい声が俺の耳を占領した。
「皆! 紹介しよう! このかたこそがかの有名なエレット・ルドガー様であらせらせられるぞ!」
「「「「「おおー!」」」」」
再び上がる歓声に今度ばかりは気後れしてしまう俺だった。
王子は子供たちと戯れながら。
「この子たちは先の戦争孤児や貧民街に捨てられた子供達でね、エレットもご存じの通りこの国は人の出入りが多い分、子供を捨てていくような子供以下の輩も盛んでね、一時期貧民街化していたし、それゆえ露天なども狙われていたこともあったんだ。その解決策としてある子供は農業にそしてまたある者は剣術をこれもまたローテーションを組み仕事に従事させる将来を導きだすための措置を取っているんだ、この子たちは農業に就くか、この国の兵ではなく自警団としての教育を基本としている、いくら孤児だからと言ってもお国のために戦争には狩りだしたくなかったのでね、アレン直轄部隊に組み込んで今様々な活動を試行錯誤している真っ最中なんだ、この国がよりよくなるように」
今までの俺を面白半分で口説いていた王子の目つきとは違って今の王子の顔には決意じみたものが感じられた。
「王子! ひと手合わせ願えないでしょうか?」
「いいぞ、しかし今はエレット様の手前いつものように手は抜かないから覚悟しろよタナ」
「はい!」
王子に手合わせしてもらえることがこの世の栄光でもあるかのようにタナは瞳に陽光を凝縮させ王子と相対していた。
「どこからでもきなさいタナ」
タナが素早く、足音をあまり立てずに王子に駆け込み一撃を入れる、素早さを殺し剣を入れる瞬間にタナは大きく振りかぶって剣に重心を預け、重い一撃を入れたのが王子の剣の動きでわかった。
「教えたことをしっかり守っているな」
タナはそのまま乱打を続ける。
「そう一撃一撃に重心を傾けて!」
王子はそれを難なくいなす。
「タナ! 軽くなってきてるぞ!」
「はい!」
タナが歯を食いしばるのが見て取れる。
「もうお終わりかタナ!」
「まだまだ!」
なおも続く乱打に王子は笑顔をにじませて。
「強くなったがただ打ち込めばいいというものではない!」
王子はタナに足蹴りをかますも、それを予測していたかのようにタナは後方に飛んだ。
刹那、王子はタナとの距離を詰めそのまま首元に木剣を据えた。
「「「「はえー」」」」
皆一堂に感嘆の声を漏らした。
「蹴りへの対処をもっと考えなければいけないな」
「はい!」
タナの目は曇りを知らずさらに光り輝いていた
「それでは司祭様が顔を出す前に俺はこの辺でずらかるとしよう、皆またな」
「「「「「えー!」」」」」
僕も私もと言うように剣の手合わせを願い出てきていたのだが王子はそそくさと退散してしまった。
街中の人通りの少ない場所を通りながら。
「随分と慕われておりますのね王子は」
「まぁね。あの子たちには時折顔を見せては色々な話を聞かせたり、露天で買ったものを挙げたりしているんだ、まぁ手懐けているっていうべきかな、ただ生まれた場所が違うだけで惨めな思いをするのは間違っている、自分の立場に軽んじて現を抜かすようではいつか刺し殺される、そうならぬよう他の皆にも気を遣うのだ貴族にはお父様が対応していればよいのであって、俺は民に目を向けようと思ってね」
「王子の崇高な考えは私には分かりませんがそれでも今やってることが間違いではないただそれだけは断言できますわ」
「僕はそうは思わないんだエレット」
「え?」
「民に近寄りすぎて目先の重要なことを疎かにしていることに今気づいたんだ!」
「ど、どういうことですの?」
アレンは俺の顔をマジマジと見ながら。
「折角王宮からエレットを連れ出してきたのに退屈させるばかりで何もかまってやれやしなかったこれは今一番僕がなさなければいけないことだと思わないか?」
「わ、私にそうおっしゃられましても」
「そうだね今日はもうじき兵たちに見つかってしまうだろういつか今日この日の埋め合わせをまた後日させてもらえないだろうか?」
「ま、まぁ私は構いませんけど」
「そうだねまたいつか近い内に」
王子がさっきから俺ににじり寄ってきているのが分かる、これはあれだ・・・
顔面が! 王子の顔面が近い! いや! いや!
「きゃーーー! 泥棒よ捕まえて!」
俺の心の声が発露してしまったのかとも思ったがどうやら発信源は俺たちより先にあるらしく、男女のカップルが窃盗に会い、男が逃げた犯人を追ってこちらに向かってきていた。
先ほど見せた瞬発力をここでもいかんなく発揮した王子の顔はどこか恐怖を覚えさせた。
「くそ! お前! 折角いいところだったのに邪魔しやがって!」
王子は一発窃盗犯の顔を殴ると四次元ポケットから荒縄を取り出し窃盗犯をぐるぐる巻きにしてしまった。
「大丈夫ですかお二方お怪我はありませんか?」
「は、はいありがとうございました」
女性は王子に感謝しながらバックを受け取りそのまま行ってしまった。
その女性の身に着けているものは気品あふれる装いで、身に着けていたバックも装飾が華やかだった。
すると路地の隅から「王子! やっと見つけましたぞ!」「皆の者ここだー! やっと見つけたぞ!」
こうして王子は窃盗犯同様の扱いの元城へと連行されていったのであった。
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