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あのパーティーの日から幾日が立っただろうか? それからと言うものアレンは我がルドガー家へとよく遊びに来るようになった俺はこの光景を知っている、まずいとにかくまずいそれだけは確信していた、この展開どこかで見たぞと・・・
かといってこのルドガー家には特にすることもなく、私とアレン王子は暇になると私は美顔ローラーを、アレンは木剣を、お父様は実剣を持ち3人でただひたすらに素振りをするというなんともおかしな光景が続いていた。
最初はアレンのメイド、レアリーも怪訝な表情で見ていたが、アレンが何も言わないのでよしとしたようだった。
「エレット、今度は僕のうちに遊びに来ないかい?」
「お断りしますわ」
「そう意地を張らずにさ、ね?」
どうやらこいつは白い歯を見せれば俺が篭絡するとでも思っているらしい、それは大きな間違いだ、お願いですのでその白い歯をおしまいになられていただけないでしょうか?
「いいですけど、私、一般的に言われる遊びとやらをなにも知らずにこの家で過ごしてきたのです、アレン王子が退屈なさるかもしれませんわよ?」
「大丈夫さ、君に退屈なんてさせないさ」
「そうですか」
ここがポイントだ、あえてつまらなさそうに振舞うことで、相手が自分に興味がないことを思わせる、そうすればアレンも諦めてくれるだろう!
「でっかい!!!!」
だめだ流石にこれは反則だ、なんだこのモフモフした丸い生き物は! 犬とは違うが毛がふさふさで押せば押し返してくる! そしてなにより図体が2mはあるのではないかというほど大きい! これは新感覚だ、こいつとなら一生遊んで暮らせる! スローライフ時にはぜひともこいつを連れて行こう。
「こいつはホワイトゴムと言ってね寒冷地に特にエッサムのあたりに生息する生き物なんだ、この間陛下が出向いたのだが懐かれてしまって連れて帰ってきたんだとか」
「私この子と遊びたいです!」
「僕もそうしようと思ってたんだ!」
年甲斐か・・・そんなもんも忘れて俺はこのモフゴムと戯れたこいつの質感は現世にはない反動を返してきてくれる、こっちの世界もあながち悪くはないのかもしれない。
「温かいですね」
「ああ」
俺たちはホワイトゴムを王宮の近くにまで連れてきて、二階から飛び乗り、日向ぼっこの真っ最中だった、全てを忘れられるそんな気さえした、あぁなんだか・・・眠く・・・ん?・・・先ほどから熱い視線ががが。
「私の顔に何かついていますか?」
「きれいな宝石が」
「なんですかそれは私を売っても何の価値にもなりませんよ?」
「価値か、そうだな今こうして2人でいられることその価値は僕にとって何物にも得難いものになるんだが、君はまだ気づいていないようだ」
こいつは臭い言葉を平気で吐きやがる、だがしかしもじもじされるよりはましだ前世の俺みたいにな。
「一生知らなくていいですそんなもの私は」
「一生は無理かな、いずれ君も知ることになると思うよ? この時間の大切さを」
うぅ・・・医者だ! 医者を呼べ! 駄目だこの王子といるとどうにも調子が狂う、まぁ今更と言われれば今更なのだが、この王子最近割とマジで俺を落としにかかってきやがる、そりゃもう土俵上かのようにだ。
「そうだ!」
王子はホワイトゴムの上に突然立ち上がり辺りを見回した。
「今から街へ遊びに行きませんか? エレット」
「いいですけど?」
一国の王子にしては気さくな提案だなとこの時は思った、付き人の手配をして、安全対策も少しは考えて行かなければならないだろうし、そうか今日は元々私と街へ行く予定だったのかなどと考えていた矢先。
「ささ、御手を拝借」
徐に取られた左手が心を踊らせたかと思ったら。
「いいですか? この子から滑り降りたら、南門までダッシュです! そこにオジジがいらっしゃるので、そこまで行ければ難なく城を抜け出せるでしょう」
「ぬ、抜け出す? お付きのものは!?」
「二人のデートに水を刺されたくありませんのでそんなものは入りませんよ、それでは行きましょうか!」
二人は滑り台の様にホワイトゴムから滑り降り、まるで宮廷へのスパイの様に物陰に隠れながら南門まで急いだ。
「おやおや王子、私の目が確かなら今回はお一人では無く、どうやら女神様をお連れの様だ」
「ああ、オジジ紹介するよ、矢を射抜いても射抜いても的が定まらない、こんな難しい的は僕の人生の中で1番になるだろうこの方こそエレット・ルドガー様御本人だ」
「おお、おお、このお方が! お初にお目にかかります、私この王宮の南門の門番をしております、ガル・アインと申します、王子からはオジジの愛称で呼ばれておりますわ」
そういうと言うまでもなく老齢で白髪、髭を大きく携え、三本足の老人はエレットを興味深そうに矯めつ眇めつしていたその時だった、王宮内で声が上がったのは。
「王子がまた逃げ出したぞー! 今回は令嬢エレット様もご一緒のはず! そう遠くへは逃げられまい! 皆のもの探せ!」
「おやおや今回は見つかるのが随分早いご様子で、ささ後は私に任せなさい、お二人に女神様の加護あらんことを」
オジジは杖で門外を指し、俺たちを出した後、手を組んで天を見上げ、大仰にお祈りしていた、まさか女神ってあいつのことじゃないよな!?
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