第三話 自動小銃という名のナニカ
北大西洋条約機構いわゆるNATOに於いて小火器用の弾薬標準化がなされるのだが、その弾薬を巡ってイギリスとアメリカは対立していた。
イギリス陸軍が提案した.280弾は様々な国から支持されたが、しかしアメリカ陸軍は強力な.30口径弾をなんとしてでも採用したかった。
結局7×43mmと7.62x51mmの両方がNATO標準弾に選ばれた。
前者はイギリスとフランスや日本などで主に使用され、後者はアメリカと西ドイツや中華民国などで使用される。
日本も7×43mmNATO弾を使用するアサルトライフルの開発を余儀なくされた。
そうして豊和重工によってHHI A1が開発され、日本軍に採用された。
HHI A1という名前は豊和重工が兵部省に卸した際に書類に記載されていた名称が、そのまま銃の名前になったものである。
HHIが豊和重工の英名略称でA1は開発コードのArisaka1の略であり、よくホーワエーイチと呼ばれる。
実のところHHI A1は自動小銃ではなく、軽機関銃の流れを汲む銃だ。
開発陣は大半が自動小銃開発に携わった者たちで構成されていたが、HHI A1は軽機関銃の技術が使われている。
というのも自動小銃の技術が未熟であり、早期完成の為に慣れていた軽機関銃の技術が使われたのである。
さらには日本軍はアサルトライフルの事を、単発と連発を切り替えられる騎兵軽機関銃と捉えていた節があった。
元々日本の軽機関銃は6.5mmという実質的な中間弾薬を使用し、銃剣着剣装置が標準装備されていたので無理もないだろう。
HHI A1の作動方式は簡単な構造で高強度に作れるロングストロークピストン式である。
日本の北は北海道から南は沖縄まで気候に幅があり、海に囲まれた過酷な環境下でも耐久性と信頼性に優れるのも良かった。
また7mm弾なら反動が少なく命中率が低いというデメリットをある程度は無視できる。
そもそも日本軍は太平洋戦争の経験から弾幕を展開できれば良く、精密射撃は狙撃銃かそれに類する物に任せれば良いと考えていた。
外見の特徴としては強度のあるプラスチックや樹脂を作ることができなかったので、銃床に木材を使っている点がある。
この外見と内部構造から和製AKと呼ばれることもある。
さらにHHI A1と同時に7.62x51mmNATO弾を使用する軽機関銃も日立兵器で開発されていた。
こちらは重機関銃の流れを汲む銃であり、HW N1という名前である。
名前の由来はHHI A1と同じく開発元の英名略称と開発コードの略だ。
これらの銃は有り合わせの技術で作られた間に合せの銃であったが、存外に性能が良かったので日本軍の主力となった。