第9話 美少女JKとデートの約束をする。
翌日。
朝のHRを終えて教科書の準備をしていると。
「せーんぱい、おはよーございマース」
「ぶふぉっ!?」
「どうしたんですか? 急に吹き出したりして」
「お、お、お……おまっ……声っ……」
「はい。おかげさまで一晩眠ったらすっかりよくなりました♪」
「ぶぇーーーっ!?」
「せんぱい?」
「おかげさまとかうっせぇわ! いつもの声に戻ってるじゃねーか!」
「? 声ってなんですか?」
「昨日はあんなきゅんきゅんした声出してただろっが! 舌足らずな脳がとろけるような声で俺を誘惑してっ!」
「誘惑? え……怖い。意味分かんないんですけど」
「だあああぁちげぇんだよぉっ!! そんな声は求めてねーんだって!!」
「はぁ。アレですか。またせんぱいの例の病気ですね。たしかに昨日はちょっと声が出しづらかったですけど」
もおおおぉぉぉっ!!
その声じゃねーって!
俺が姫谷に求めてるのはっ!
「もっと甘くとろけた声出してただろぉ!?」
「そんなこと言われても陽葵わかりませんよぉ~。ぴえん」
「んな作ったような声じゃぜんぜん萌えねぇーんだよ! クッッッソが!!」
俺、昨日帰ってからどうやって姫谷に告るかすげーシュミレーションしてたのにぃ!
はぁ、俺のときめきを返してくれ……。
「よくわからないですけどー。陽葵は昨日せんぱいに来てもらってすごい嬉しかったですよ?」
「そりゃあんなLINE送られてきたら心配にもなるだろ、ふつー」
「あっせんぱい、心配してくれてたんですかー? えへへ、嬉しぃです♪」
そんな声で言われてもまったくきゅんきゅんしねぇーんだが。
どーするよこれ。
っと待てよ?
こいつがもう一回風邪ひけば同じ声になるんじゃね?
俺はとっさにスマホを取り出す。
明日の天気は……おおぅ、雨じゃん!
こいつは使えるぞ。
「なぁ姫谷。昨日見舞いに行ったお礼ってわけじゃないんだけどさ。明日の休みちょっと付き合ってくれない?」
「付き合うですか? 陽葵、いちおー病み上がりなんですけどー」
「返事はハイかYesだから」
「選択肢が行方不明じゃないですかぁ~」
「どうしても付き合ってほしいんだよ」
「なんです? それってデートですか?」
「ま、そんなとこ」
「カースト最底辺の陰キャで、リアルに女子と遊んだことがないせんぱいが誘ってくるなんて明日は地球終わっちゃいますね。その前に生搾りモンブラン食べたいです」
ディスりつつも姫谷は承諾してくれたようだ。
「んじゃ、朝9時に八王子駅前に集合な」
「はーい。せんぱいとのデート楽しみにしておきますね♪」