第3話 たとえ美少女JKの巨乳が当たっていても。
「おつかれさまでしたー」
俺たちはそろってバイト先のコンビニを出る。
「今日も一日がんばりましたね、せんぱい♪」
「つかさ。おまえなんでバイトなんかやってんの?」
「はい?」
「フォロワー10万人もいるんなら、YouTuberでもなんでもやってバイト代くらい稼げんだろ?」
「もぉーせんぱい、ぜんぜん分かってないですね」
「なんだよ」
「せんぱいとこうやってずーっと一緒にいたいからに決まってるじゃないですか」
「なに? おまえ俺に惚れてんの? あぁむりむり。俺、付き合う相手ルックスで決めない主義だから」
「でた、せんぱいの病気。というかですね。せんぱいこれまで彼女いたことないんじゃないですか?」
「ぎくっ!?」
こいつはいつも痛いところを突いてきやがる。
たしかに俺はこれまで彼女を作ったことがない。
16年間ずっと独り身だ。
「こんなちょーかわいい美少女JKがそばにいるのにせんぱい贅沢です。分からせてあげますね?」
「!?」
そう言って姫谷が腕を勝手に絡めてくる。
ぷにぃ。
お、おっぱい当たってるんですけどっ……!?
つか柔らけえぇ~~。
なにこの横乳のボリュームっ!!
「ほら。そうやってぜんぜん健全な反応しないからガッコでも陰キャなままなんですよー」
「べ、べつに……。俺は好きで陰キャやってんの。てかそろそろ帰れよっ。おまえあっちだろ……」
「え、送ってくれないんですかー? 陽葵がおじさんに襲われて処女喪失したらどう責任取ってくれるんですか?」
「は? おま……そのビッチななりで処女だったのっ!?」
「もちろんそーですよ。いまどきJKはパパ活でお金もらってもヤらないんですよ? 10万もらってもむりです」
まじか。
てっきり中学時代に陽キャのイケメンと事済ませてるのかと思ってたわ。
「でも、せんぱいとなら……ちょっとは考えてもいいかなーって思ってるっていうか」
「ん、何か言ったか?」
「はぁ……。そぉですか。なるほどですね。また難聴のフリするわけですか」
こいつがこういう話ぶっこんでくるときは華麗にスルー決めている。
だいたい、こいつは俺の反応を見て楽しんでいるだけだ。
からかってくる相手にまじめに付き合うだけ体力の無駄だし。
「おまえさー、俺がそゆうの興味ないことわかって言ってるじゃん?」
「んへへ。バレました? せんぱい童貞のくせに妙に達観してますからね」
「童貞とか言うなし」
ここでようやく姫谷が離れる。
うん、まったく惜しくもなんともないぞ?
俺の精神はいま凪の状態だ。
「それじゃここで失礼しまーす」
「なに? まじで送らなくていいの?」
「だってせんぱい知ってるじゃないですかー。本当におじさんが襲ってきたらコレで撃退しちゃいますよ」
そう言って姫谷はスクールバッグの中から伸縮タイプの警棒を取り出す。
そう、こいつは剣術にある程度の知識があるのだ。
「うっす。んじゃおつかれ」
「あっ、待ってください。せんぱい、今日もハート待ってますからね♪」
うげぇ……。
またあのめんどーな作業があるのかよ。
一気にダルくなってきた。
手を振って夜の街に消える姫谷を見送ってからスマホに目を落とす。
「やべっ、もう21時じゃん! るしらちゃんの配信っ!」