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第24話 美少女JKと想いを伝え合うようにキスをする。

「……おかしくないですよ。陽葵はせんぱいが……佐藤先輩がいいんです。だって、陽葵のこと救ってくれたの……せんぱいだから」


「は、はぁ……? す、救ったとか、重いんだけど……? つか、おまえなに言ってんの? 俺がそんな価値ある人間なわけないじゃーん……」


「そんなことないですよ? せんぱいは陽葵にとってと~っても価値あります♪ イヴサンローランのコスメくらいは価値ありますね。気付いてなかったんですか?」


 なんとなくだけど。

 これまでに見たことのない姫谷と話してるって感覚があった。


「そりゃ女の子の声だけに反応するヘンタイですけど。陰キャだし、オタクだし、ぼっちだし、帰宅部だし、いつも目が死んでるし、ぜんぜんいいところないですけど」


「ふつーに、ディスるな」


「でもそれは周りの勝手な印象です。陽葵にとってせんぱいは、強くてかっこよくて憧れで……」


「……」


 いつの話してんだよ、おまえ。


 そんな俺、もうとっくにいねーんだって。

 いい加減気付けよ。


(ただのつまんない人間なんだよ、俺は……)


 ずっと言おうって思ってた。

 俺は姫谷と一緒にいられるような価値のある人間じゃねーんだって。


 だけど、どうしてもそれが言えなかった。


 姫谷が俺のそばから離れてしまうのが怖かったんだ。






 そのとき。


「!」


 頬に姫谷の手が触れる。

 その手は、柔らかくて、温かくて、どこか優しくて……。


「せんぱいが救ってくれたんです。パパがいなくなってずっと泣いてた陽葵を……。だから、今度は陽葵がせんぱいのこと、助けてあげたいんです。せんぱいがまた自信をもって前を向けるまで、陽葵がそばにしっかりついてます」


「……姫谷となんか……俺、釣り合わねーって……」


「ちがいますよ。バスケ部の天王寺先輩でもサッカー部の八神先輩でもダメなんです。ほかのどの男子でもぜったいに嫌です。だって陽葵が好きなのは……ずっと佐藤先輩だから」


「っ……」


 なんで俺、こんなにドキドキしてるんだ。

 こいつの声はもとに戻ってて、ぜんぜんきゅんきゅんしないはずなのに。


「ママから聞きました。せんぱいがこうなっちゃったのって、たぶん陽葵のせいですよね?」


「え?」


「せんぱい。陽葵の風邪を引き受けるために、キス……してくれたんですよね?」


 ちがうっ。

 そんな立派な理由があったわけじゃない。


 そう言おうとしたけど……。


「ごほっ! げぉっ、げほっ……ごっほ……!」


 くそっ! 

 なんでこんなときに咳が……っ。


 あぁ、ヤバい……。

 また意識が朦朧としてきたぞ……。


「だから、いませんぱいがツライのは陽葵の責任です」


 そうじゃない。

 そうじゃないんだ。


 俺は自分の欲望を満たすために、おまえとキスしようとして……。

 でも、そのキスはまだできてなくて……。


「せんぱい、目閉じてください。今度は陽葵がせんぱいの風邪代わりに引き受けますね……んんぅっ……」


「!!」


 抵抗する間もなかった。

 ぷるぷるに潤った柔らかい唇が当たる。


 ほのかに甘い香りがして、とろけてしまいそうで。

 生まれて初めてキスをしてしまった。


 ずっと昔から知ってる後輩の女の子。


 でも、いま俺の目の前にいる彼女はこれまで見たことないくらい大人びて見えて。


 これまでの想いを伝え合うように、俺たちはいつしか舌を交えて、貪るように唇を重ねていた。


「……んぁっ……んむぅっ……ふあぁっ、ぁっ……せんぱぁいと、二度目のキス……しちゃいました。嬉しいです……胸がずっとバクバク言ってます……。これが、キスなんですね……」


 俺はぼーっとした頭でただ姫谷を見つめることしかできなくて。


「だいじょーぶです、安心してください。これでせんぱいの風邪はまた陽葵に移りました。だから、今日はゆっくり休んでほしいです。せんぱいが眠るまでこのまま陽葵が看病してますから」


 朦朧とする意識の中、そんな優しい声が聞こえた気がする。

 そして、俺は思い出していた。 


 あの日。

 都大会でぼろぼろに負けたときも姫谷は俺をこうやって励ましてくれていた。


 その優しく包み込んでくれるような声がたまらなく嬉しくて……。


 そっか。

 俺が声に安心感を抱くようになったきっかけは姫谷だったんだ。


 俺のそばにはこんなにも大切な人がいたんだ……。

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