第21話 俺は後輩の美少女JKとの出会いを回想する。
「……ぜぇ、ぜぇ……ぜぇ……げほっ、ごほっ……」
……い、息が苦しい……。
朝よりも熱がだいぶ上がってるぞ、これ……。
完全に風邪だ。
ずっと頭はぐるんぐるん回ってるし、つらい……。
「……こんなことに、なるんだったら……カップ麺、買いだめておくべき、だったなぁ……げほっ……」
毎日コンビニでその日の食事は買ってたから家に食える物がぜんぜん置いてない。
つか、いまなにか胃の中に物入れたらぜったい吐く決定だけど。
「ごほっ……ぐごっ、ごぉ……う、うぉぉぉえぇぇ……きもちわるぃ……」
もうダメだ……。
父さんと母さんに帰って来てもらおう……。
新幹線使えば今日中には戻って来られるはずだし……。
「スマホぉ……どこやった、け……」
朝にバイト先に電話してそのままだったからな……。
あ、あった……。
「……? 通知が……来てる?」
LINEのアイコンには数件の通知マーク。
俺にメッセージ送ってくるやつなんてひとりしかない、姫谷だ。
「……」
でもどうしてだろう、それを見る気にはなれず。
あいつのことだ。
今日はもう元気になって学校へ行ったんだろう。
んで、昼休みに俺が教室にいないことに気付いた。
それでメッセージを送ってきたにちがいない。
昔からそうだ。
姫谷は俺のことをずっと気にしていて……。
☆★☆
充勇二。
そんな名前を付けられて、幼い頃からさんざんバカにされ続けてきた俺は、そいつらを見返す目的で剣道を習い始めた。
そのハングリー精神がよかったんだろう。
俺は道場で一番強くなった。
結局、結果がすべてなんだ。
俺が剣道を習い始めたってことがわかると、周りのやつらは俺のことをバカにしなくなっていった。
姫谷とはそこで出会った。
でも門下生はけっこうな数いたし、正直最初会ったときの印象は忘れてしまってる。
そのときの俺は強くなることに夢中だったから。
ただ、あいつがよくひとりでいたことは覚えてる。
なんか気になったっていうか。
だから、あいつを稽古に連れ出すことはよくあった。
剣道ってのは個人競技かつ勝ち負けがはっきりしている武道だ。
俺は地区の大会で何度も優勝したし、師範にもセンスがあるって言われた。
ぶっちゃけ調子に乗ってた。
そうやって勝ち続けている間は自分にすごく自信が持てたけど、都大会で一度ぼろぼろに負けてから、俺は剣道が怖くなってしまった。
世の中には自分よりも強い子供がたくさんいて、実は俺って大したことないやつなんだって気付いてしまった。
小学生のうちに万能感を潰されてしまったんだ。
剣道から逃げて、自分に自信を失った俺はその後はオタクの道まっしぐら。
中学時代は家に引きこもってアニメばかりを見てた。
そこで声優にはまってしまった。
甘い声で俺のことを優しく包み込んでくれて。
推しの声を聞いてると安心することができた。
それからは声オタの沼にどっぷりはまって、最近はVTuberにはまって。
気付けばクラスでは完全に浮いてしまってた。
カースト最底辺の陰キャの完成だ。
そんな中でも俺をずっと気にかけてくれてたのが姫谷だった。
ぶっちゃけ、ずっとうっとうしかった。
なんで俺に絡んでくるんだよ。
おまえとはただちょっとの間、道場が一緒だったってだけで、俺はもう先輩でもなんでもねーのに。
そう思ってたけど。
でも、なんかあいつと一緒にいると居心地がよくて、俺のことぜったいに見捨てなくて、そんな姫谷と一緒にいるのがいつの間にか当たり前になってて。
唯一俺が信じられる相手だったのに……。
俺、あいつにひどいことしちゃった。




